友達は〇〇だけ。
生まれたときから独りぼっちだった。
親も、兄妹も、友達も、恋人も、仲間もなく、ずっと独りで。苦しくて、きつくて、悲しくて、寂しくて、誰とも一緒にいたことがなくて。
なにかをしたこともないのに、嫌われて、疎まれて、はぶかれて、無視されて、なにをしても、どうやっても。
頑張って、頑張って、頑張って、努力して、努力して、努力して。
頭が悪かったからなのかも知れなかったから、勉強を誰よりも頑張って、努力して、誰よりも点数を取って。
皆と遊べないのは体力や運動神経が悪かったからと思って、何日も何日も、いろんなスポーツが出来るよう鍛えて、練習して、誰よりも上手くなって。
話題に困らないよう、情報を早く取り入れて、流行の先端だろうがなんだろうが、とにかく集めて集めて頭に入れて。
見た目が駄目なのだろうと、お金はあまりなかったから、余りの布や使い切った服を縫い合わせて、どうにかコーディネート出来るようにして。髪、手先、足、細部まで清潔に、しっかりと。
足りないものを補って、無いものを増やして、苦しくても辛くても、血反吐を吐こうがどうでもよかった。
何日かかろうが、何年かかろうが、出来るように、皆に合わせられるように。
でも、やっぱり誰もいなくって。
どこまでいっても無駄なんだと、駄目なんだと。自覚しきった頃にはもう、体も、心も、ボロボロだった。
それでも諦めきれなくて。とっくのとうに、数年以上も前に、終わっていたかもしれないけれど。
足掻いて、足掻いて、足掻いてーー体は、自然と『⬛️』へと向かっていた。
どこでも良かった。高所でも、樹海でも、家でも、どこだって。ただただ、もう『⬛️』いきたかった。
でも何度やっても何度やっても、駄目だった。何かに邪魔されるように、上手くいかなかった。
生きるしかない、生きたくもない本当の生き地獄。
お金はあった。たくさんあった。何でも買えた、どこでも行けた。なにをしても上手くいったから、能力だけは上達していたから。誰かといれなくても、話せなくても、お金だけは貰え、増えていった。
ーーいらない。
家は大きくても、小さくても。物は多くても、少なくても。生活に充実しても、いなくても。毎日に疲れていても、いなくても。貧しくても、富んでいても。何でも。
誰かと、一緒に。
複数人なんて贅沢は言わない。夫婦、恋人、そこまで大きく願わない。
一人でいい。自分と、話してくれる人が、いてほしかった。
きっと呪われている。
流石に途中で気付く。自分が異端中の異端、例外中の例外。紛い物、外れ、どんな方法を使おうが無駄。流れ消えるんじゃなくて、そこにあるだけ、なくても困らない一部分にされる。そんな呪い。
諦めると色々と楽だった。
出来ないことはなかった、足りないものはなかった、欲しいものは手元にあった、誰もが羨むような物は必ずあった。増えるたび、埋まるたび、心から何かが抜けていく感覚がした。
普通の一軒家。
不思議と周りの家よりも安く、一桁以上低かったのにも関わらず、買い手は絶対につかなかった。周りはどんどん変わっていくのに、そこだけは変わらない。周りに置いていかれている。
妙な親近感、何故だか沸いた使命感が動き、その日から数日後住むことになる。
大量の荷物はその家に放置。財布と通帳、他貴重類を持ち、その家へと向かった。
ーーここが、ここからが、僕の人生を変化させる一歩へとつながるのだった。
家=人肌
彼の脳内はこんな感じでごわす。