異世界転生しようとした俺が、ブラックすぎる女神の元で転生「させる」側になる話
目が覚めると、明るくも暗くもない無機質な空間が広がっていた。
辺りを見回しても、白い床がどこまでも続いているだけ。文字通り何もない場所だった。
俺はとりあえず状況を把握するために、記憶を反芻する。
ええと確か、どこにでもいるごぐ平凡な高校生の俺、神崎拓也は、いつも通り自転車に乗って学校に向かってたんだ。
その途中で石につまずいて、それで車道に転がった。
……最後に感じたのは、鈍い痛みとの誰かの悲鳴だったな。
ということは……
とそのとき、背後に感じた何者かの気配が思考を遮った。
反射的に振り返るとそこには――
「こんにちは。カンザキタクヤさん」
なんとも美しい、少女がいた。
神秘的な羽衣に身を包んだ彼女は、慈悲深い優しそうな微笑みをこちらに向けている。――それも、故人を悼む表情で。
俺は今の状況を確認すべく、口を開く。
「……死んだんですね。俺」
すると彼女は目を閉じて悲しげにうなずいた。一緒に長い銀髪が揺れる。
やっぱり、そうだったのか。
俺は目元を拭ってこみ上げる感情を整理すると、少女の方に向き直った。
「えっと……あなたは?」
「私はラナ。死者を導く女神です。そしてここは死者の魂が集う世界――」
女神、か。小説や漫画で良く見るヤツだが、本当にいたんだな。
ラナは指をパチンと鳴らした。かと思うと、目の前に二つ椅子が現れる。
促されて俺が腰を下ろすと、ラナは真剣な顔つきになって口を開いた。
「さて……タクヤさんには今から、転生先を選んでもらいます」
「転生先?」
「次にあなたの魂を宿す器、生き物のことです。輪廻転生というやつですね」
なるほど。来世を自分で決められるのか。
「何でも良いんですか?出来ることなら次も人間として生きたいですが」
「いえ、残念ですがそれは出来ないんです。ちょっと説明しますね」
ラナは背後からフォルダのようなものを取り出すと、俺に手渡した。
中のページには……何やら文字がびっしりと並んでいるな。
「これは一体?」
「魂の記録です。生前のあなたの行いが全て、そこに記されています」
俺は適当なページを開き、ざっと目を通してみる。
そこには確かに説明通り、俺の過去の行動がずらりと書き連ねられていた。それも、今でもはっきり思い出せるような印象的な出来事から、全く記憶に無い些細なことまで、全てだ。
こりゃすごいな。
……?
ふとあることが気になって、視線をページの右側で止める。
箇条書きに並んだ行動のそれぞれ右端に、数字が書かれてあったのだ。
「それは善悪ポイントです」
俺の疑問を汲み取ったらしいラナが答えた。
「それぞれ行いは、その善悪を数字で評価されるようになっているんです。例えばその一番上の『道端の財布を交番に届けた』は、プラス十ポイント。その次の『友達のシャーペンを借りパクした』はマイナス八ポイント、といった風に。……ちなみにそのページの『好きな女の子の鍵盤ハーモニカのチューブを自分のと交換した』は気持ち悪いのでマイナス五十ポイントです」
「……最後の言う必要ありました?墓まで持っていく予定の黒歴史なのでやめてください」
「既に達成してますから安心するといいですよ」
おっとそうでしたね。
「話が逸れましたが――そのポイントの合計によって、転生できる生き物が変わってくるんです。ポイントが高ければ高いほど、高次の生き物を選べるようになります」
「ほうほう。で、俺のポイントはどうなんです?」
「八七〇ポイントですね」
「……それは高いんですか?」
「低いですね。ボランティアや人助けに興味を示さず頭カラッポのまま惰性で生きてきたんですから、当然と言えば当然でしょう」
「……ごほん。それで結局、俺は何に転生できるんです?」
俺はしれっと抉られた心の傷を埋めつつ、話を戻す。
するとラナは俺の手からフォルダを抜き取り、最後のページを開けてみせた。
そこには何やら生き物の名前と画像が。
「ここに載ってあるのが来世のあなたの候補です」
ふーん、なるほどなあ……
と俺はその一覧を流し見て、思わず絶句した。
そこにあったのは、セミやバッタなどの昆虫に、アマエビのような小さな魚介。果てはゾウリムシなんかの微生物だった。
何これショボい、俺の人生ってゾウリムシレベルだったの?
「こ、この他には――」
「ありません。これで全部です。この中で言うと……おすすめはトンボでしょうかね。最近死者の間でそこそこ流行ってるんですよ、爽快感があるとかなんとかで」
えっ、トンボ……?秋頃によく見かけるアレ?
俺、羽バタバタ言わせながらホバリングしたり、指でぐるぐるされて捕まっちゃったりしちゃうの……?
俺は露骨にイヤ気持ちを顔ににじませた。
すると。
「そうですよね、やっぱりイヤですよね。分かります、その気持ち!」
ラナはなぜか嬉しそうな表情をするや否やガタッと立ち上がり、こちらに顔を寄せてきた。
俺はその圧に負け、思わず仰け反る。
「というわけで、ちょっとサービスしようと思うんです」
仰け反る俺を倒す勢いで、ラナは顔面に一枚の紙を突きつけてきた。
俺は渡されたそれを顔から遠ざけ、文字にピントを合わせる。
えーとなになに?天使……?
「そう、天使です!本来はもっと善行ポイントが必要なのですが、今回は特例として認めましょう。なってみたくありません?」
ラナは腕を広げて大仰に言った。
「いきなり何ですか。というか天使って架空の生き物ですよね?」
「ええ、いません。――少なくともあなたの生きた地球には、ね」
ラナは含みを持たせて説明した。
言い回しから考えるに……この世には地球とは異なる世界が存在していて、そこには天使も存在する。んで、俺はその世界へ転生することになるのか?
異世界って聞くとちょっと惹かれるな。けど――
「ちょっと頭が追い付かないんですけど……そもそもどうして俺にそんなサービスを――」
「まあまあ、そんなことはどうでも良いじゃないですか。ほら早く決めましょう!今なら記憶引継ぎのオマケ付きですよ。虫になるのと天使になるの、どっちがマシですか」
ラナは一層ニコニコしながら、十、九、とカウントダウンを始める始末。
この女神がここまで天使を推す理由がまるで分からない。すごい怪しい。怪しいんだが……
確かにアマエビとかトンボと比較すると、どうしても魅力的に見える。
天使っていえば多分、人に羽生やしてリング乗せたみたいな感じだろう。人間と大差は無い。
となれば、もう一度人間として生きたいという望みはほぼ叶えられるんじゃないだろうか。
しかも記憶引継ぎのオマケ付きときた。
これって何気にすごい好条件じゃなかろうか?現代知識でチートできそうだし。
「四、三……ほら、早く決めないとサービス終わっちゃいますよ!二、一……」
そうこう考えるにも女神のカウントは進んでいく。
ああっなにくそ!もうなるようになれ!
「っ、分かりました! なる! なります、天使!!」
俺が半分やけくそで叫ぶと、ラナは「了解しました」とにっこりと笑って、呪文のようなものを唱えた。
同時に、俺の周りを無数の光の粒が取り巻いた。
なんだかふんわりと浮いたような感覚になって、体も心も浄化されていくようだ。
この体ともお別れなんだな。直感的にそう感じた。
俺は口を開いて、
「ありがとうございます女神様。俺、来世では立派に生きてみせますから……どうかここから見守っていてください……」
理由はよく分からないが、とにかく俺を救ってくれたんだ。感謝してもしきれないなあ。
――なんて完全に安心しきっていると。
「ええ、もちろんですとも。私は当分あなたの近くにいるつもりですから」
ラナのセリフで、俺の頭はやっと冷静さを取り戻し始めた。
ん……? 近くにいるつもり? 俺今から異世界転生するんだけど?
なんで女神様が一緒にいることになってんの?
……俺、なんか乗せられてない?
天使になることを勧めてきた理由はごまかされたし、早く決めるようえらく急かしてきたし。「サービス」だとか「今だけ」だとか、まるで悪質販売業者の口癖じゃん。やっぱ変だよな?
というわけで俺は一旦考える時間を貰うため、声を上げようとした。が、一足遅かったらしい。
俺の背中からは白いふさふさの翼が生え、頭には金の輪っかが浮いていた。
おいおい待った待った!
もっと手遅れになる前に――つまり異世界に転生させられる前に、俺は急いで中断を要求しようとする。
クーリングオフじゃい!
「女神様、やっぱり一旦戻してもらって良いですか?少し考えてから――――えっ……?」
ラナの方を改めて向くと、言葉を失った。
ラナは横向きに寝転がって肘枕の姿勢になり、だるそうな目つきでこちらを見ていたのだ。どこからか取り出したポテチを噛りながら。
その姿はまるで休日の中年男性のようで、さっきまでの美しい立ち振る舞いの影は一切消え去っていた。
「戻す? そんなの無理よ。だってもう転生は全部済んじゃったんだから」
言葉遣いまで汚くなってやがる。マジで誰だよお前。さっきまでの麗しい女神様はどこに消えたの。
……いや、今はそんなことはどうだっていい。
それよりもなんか重大なことが聞こえた気がするんだが。
「全部済んじゃった、ってどういうことですか? 俺まだ異世界に行けてないんですけど」
「……勘違いしてるみたいだから教えてあげるけど、別に私は異世界に転生させるだなんて一言も言ってないわよ?あんたが勝手に解釈して異世界に行けると期待してただけ」
俺が「……は?」とまぬけな声で聞き返すと、ラナは下を指差して――
「あんたがこれから生きる世界は、ここよ。天使らしく私の代わりに働いて、死者を導いてちょうだいね。じゃあ私は寝るから……おやすみなさい」
「はあっ!? 意味が分から――おい待て寝るな女神!! ちゃんと説明しやがれええええ!!!!」
……俺は生まれ変わって二十秒足らずで、この人せ――いや、天使生がろくなものにならないであろうことに気付かされてしまったのだった。
「ちょっと女神さんよ、一から説明してくれますかね」
俺は早速寝落ちしかけている女神を揺さぶる。
「んん……何ようるさいわね、後にしなさいよ……」
「こんな重大なこと後回しにされてたまるか。代わりに働くってどういう意味だよ」
「そのままの意味よ。神の眷属である天使として、死者を導く女神としての仕事を代わりにやってほしいの」
「はあ?神なんだったら自分でやれよ」
「だってだって面倒なんだもん。私だってラクしたいに決まってるじゃない」
……何なんだこの怠惰な女神は。もしかしなくても
こっちが本性なんだろうか。
俺は困惑しながら、質問を変える。
「……じゃあなんで俺なんだよ。もっと適任のヤツなんていっぱいいるだろ」
「別に大した理由じゃないわ。たまたまあんたの善行ポイントが、説得するのにちょうど良い低さだったからよ。あんたみたいな脳ミソの八割が食欲と性欲で満たされてる人間を選り好むワケないじゃない」
「一言余計。じゃあ何だ、俺はお前をサボらせるためだけに天使にさせられたの?」
俺が聞くと、ラナは何の罪悪感も感じていないような顔でうなずいた。
ちくしょう、騙された! 異世界でエンジョイできると期待してたのに!
これからこのよく分からない場所でよく分からない女神にこき使われなきゃいけないのか?このナマケモノみたいなヤツに?
「そんなのまっぴらゴメンだ……!」
俺は逃げることにした。
――がしかし、俺は早速立ち止まってしまう。
視界に広がるのは、ただただ何も無い無彩色の空間。
その白い床に終わりは見えず、勿論出口なども見当たらなかった。
「っ……何なんだよここ!」
「まあまあ落ち着きなさい。騙された方が悪いのよ。諦めなさいな」
詐欺師《ラナ》は、ポテチをつまんで油の付いた手で腹を掻きながら言った。
俺はそんな詐欺師の姿にイラッと来たので、置いてあったポテチを袋の上から踏み砕いた。
「わあああああああああっ!! 何すんのよこのバカ天使! これじゃあポテトチップスからチップス感が無くなるじゃない! ただのポテトなんか誰が食べるって言うのよ!」
「んなもん知るか! 何だよチップス感って。それよりも異世界に行けると思ってた俺の期待感を返せよヒモ女神!」
「ああ!? 誰がヒモ女神よ! ああもう頭に来たわ! ――神の名において命じます、今すぐひれ伏しなさい!」
ラナが起き上がってそう唱えた途端、俺の体はぴくりとも動かなくなった。
そして上から押さえつけられているような感覚に陥り、土下座の姿勢にさせられていく。
「何だこれっ、体が勝手に……!」
「天使は神の眷属だから、神の命令には必ず従うように作られてるの。私に逆らえると思ったら大間違いなのよ」
ラナはふふんと鼻を鳴らして言った。
くそっ、俺をわざわざ天使に転生させたのはそういう理由だったのか……!
動けない俺を見下ろしたラナは勝ち誇った顔で、
「ほら、謝りなさい! 私とポテチに謝りなさい! 」
「ヤだね! ポテチはともかくお前なんかに謝ったら何か大切なものを失っちまう気がする!」
「なんで私はダメでポテチは良いのよ! 天罰下すわよ?」
「ああやってみろ! 神として終わってるくらいタチの悪いお前の天罰なんか、どうせ大したもんじゃないだろうしな」
「ホントムカつくわねあんた! 良いわ、やってやろうじゃない! この神の鉄拳で、私を永遠に崇め奉りたいと思うようになるまでメッタメタのギッタギタにしてあげ――あっ」
それまで激昂していたラナは突然横を向いて何かに気づき、言葉を途切れさせた。
俺もそちらの方に目線を向けるとそこには、俺たちを哀れみの目で眺める死に装束姿の老人の男が。
……ああなるほど、魂が集う場所であるここに、また新たな死者が送られてきたわけか。
ラナは数秒フリーズした後、それはそれは美しくも胡散臭い女神スマイルを顔面に押し出しながら言った。
「……とりあえず今見たことは忘れてくださいね?」
ラナは行儀良く椅子に座って老人と向き合い、ここが何なのかとか、死んでしまった経緯とかについて説明している。
多分、さっきみたいな女神としてふさわしくない振る舞いを人に見せるとダメなんだろう。是非俺にもずっと見せないで欲しかったもんだが。
んで俺は、そのやり取りを後ろからじっと見学していた。
なぜ俺が素直にそんな風にしているのかというと。
老人が現れた後、ラナは慌てて俺を土下座から解放し、こう耳元で囁いてきた。
「……ちょうど良いわ、新人研修よ。私が今から転生交渉の手本を見せてあげるから、ちゃんと仕事覚えなさいよ」
言い終わる前に断ってやりたかったが、さっきみたいに怒って命令されるとどうにもできないので、嫌々ながらに付き合っている。
仕方ない、二人の会話に耳を傾けてみるとしよう。
「――ところで女神様、ワシのその善行ポイントとやらは如何ほどなのでしょうか」
「っと、今確認しますね。……あらスゴい、五千ポイントを超えていますね。何とかザキさんとは大違いです」
何とかザキさんから更なる怒りを買ったことを知らないラナは、そのまま言葉を続ける。
「ではその資料の最後のページにある転生先一覧をご覧ください。あなたのポイントだと、大体何でも選べますね。もう一度人間に生まれ変わるのも良し、白鳥になって優雅に水面を泳いで生きるも良し、サバンナのチーターになって獲物を狩りまくるのも良しです」
「はあ、それは良いですなあ。しかし人間として生きるのは十分ですし、他のものも少し……」
老人はうーんと首を傾げた。どうやらどれもいまいちしっくり来ず、迷っているらしい。
まあ、無理もない。
何といっても決めるのは自分の来世だ。そんな重大な事をパッと選べるはずも無いだろうし。
と、ラナが口を開く。
「では何か希望はありますか? 平和に暮らしたいだとか、深海に住みたいだとか」
「そうですなあ……何か新鮮味が欲しいですな。この人生、やりたいことは全てやってきたつもりですから。何と言ったら良いのでしょうか、人間とは根底から違う生き物に生まれ変わりたいのです」
老人の話を聞くと、ラナはぴんと人差し指を立てて、
「では異世界の動物に転生するのはいかがでしょう?」
「ふむ、異世界ですとな」
「そうです。あなたが生きた地球ではない世界の生き物になるなら、さぞ毎日が新鮮になることでしょう」
少し興味が湧いたらしく、姿勢が少し前屈みになった老人。
ラナがここでもう一押しするように提案する。
「ドラゴンなどどうでしょう? 異世界における食物連鎖の頂点に君臨する種族。圧倒的な筋力と膨大な魔力を持ち、強力なブレスを吐くこともできます」
「ほほお、龍と来ましたか。それは大変魅力的ですなあ!」
老人はうんうんとうなずくと、
「――決めました女神様。ワシは龍に生まれ変わることにします」
するとラナは慈悲深げに口角を上げて、呪文のようなものを唱える。
老人の体が光に包まれて宙に浮いた。
「あなたの来世が幸福で満たされることを祈っています。では……いってらっしゃいませ」
多分欠片も思ってもいないであろう祈りを言い終えると、老人の姿が一瞬強く輝き、空へと消えた。
俺もああやって異世界に行きたかったなあ、なんてぼんやり眺めていると、ラナが俺の方を振り返って。
「分かった?今みたいにして適当にやってあげれば良いのよ。最後に祈りの定型文でも捧げておけば相手は勝手に満足してくれるわ。シンプルなお仕事でしょ?」
「わりとマジで女神としてどうなのそれ」
……しかしまあ言い方はともかくとして、簡単そうではあるな。言ってみればただの接客業だ。
俺は本来虫とか甲殻類とかの自我すらない生き物にならなきゃいけなかったわけで。
天使に転生した代価がこの仕事をやるだけというのは、思ったより全然良い条件に思える。
仕方ない。騙されたことは水に流して、しばらくこの仕事を引き受けてやることにしよ――
「そうそう言い忘れてたけど、休日なんてあると思わないことね。毎日毎分毎秒世界のどこかで誰かが死んで、ここに送られてくるわけだからね? 気を抜くと待機室に千人溜まってたーなんてことになるわ。気をつけてちょうだいね」
「えっ?」
「ついでに言っておくと、天使っていうのは人間の上位互換みたいなものなの。何も食べなくても生きられるように作られてるし、睡眠も取らないで良いようになってるの。だから、当然休憩時間なんてのも必要無いわよね」
「ちょっ――」
「あと天使には老いも無いわ。普通の生き物と違って成熟した姿で生まれるから、成長という概念そもそもが無いってワケ。老いが無いってことはつまり死ぬまで元気でいられるってことよね? 天使の寿命は三百年だから、ちゃんと最期を迎えるまで一度たりとも休まずにお仕事を全うしてちょうだい」
「…………」
「あっ付け加えると、睡眠が必要ないってことは起きてる時間が長いってことだから、それだけ自分の生きてる時間が長く感じられることになるわね。一生の三分の一を睡眠に費やす元人間のあんたの感覚で考えると、百年追加して……実質四百年生きることになるかしら。ちょっと長く思うかもしれないけれど、頑張れば皆勤できると思――」
「やってられっかああああああああああ!!!!!!」
あまりに劣悪な労働環境に憤慨した俺は、待遇改善を求めて労働争議を敢行。
ポテチを取ろうと袋の中をガサゴソやっていたラナの右手を踏み砕いた。
その後間髪入れないストライキによって、ついに女神に勝利。
結局仕事は二人で分担することになった。
見事、ブラック企業をホワイト企業に転生させたワケである。俺、転生案内向いてるかもね。
よろしければ評価お願いします!