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青春ウィッチは高校生。  作者: 島田 恭丞
1/1

始まりは色々と忙しい

「起きて...朝よ」



梅雨も明けて夏の暑さが本格的に厳しくなる時期。帆高皐月は熟睡していた。

どこか懐かしい響き...。夢だろうか。

「ねぇ、起きてってば」

腰辺りがズシッと重くなった。

心做しか身体も揺さぶられてるような気もするが。

「お兄ちゃん!」

「っ!?」

突然大っきい声出すなよ...母さん...。

「もうちょっとだけ、母さん...」

「何言ってるの?」

うるさいから仕方なく目を開ける。ボヤけた視界にまず入ってきたのは...妹の顔だった。どうやら我が妹である帆高紅葉は俺を起こすために馬乗りになってずっと声をかけてきていたらしい。

「なんだよ、紅葉か」

「なんだよって何よ」

紅葉は今年で14歳である。俺が高校1年で16歳なのでほぼ双子のようなものである。実は義理である。10年前に兄妹になった。

あぁそうだ。母さんが呼んでくれるわけがない。俺の実の母親、帆高千世は4年前に病死しているのだ。父親はどうなのかと言うと、こちらは紅葉の実父で名前は君男。母とは再婚した頃から仲が悪く何故結婚したんだと言いたいくらいだったが、それでも母が父を見る目は非難や軽蔑の目ではなかった。親父は母さんが死んだ事をきっかけに俺たち子供を置いて、この家を出ていった。

「お兄ちゃん?」

「んぁ?」

まだ半覚醒状態なので変な声が出てしまった。

「お腹空いた」

「...」

自分で作れよ...。

「お前もう自分で作れるだろう」

「この前やったら卵かけご飯が黒焦げになった」

「卵かけご飯で黒焦げになりそうなシーンないだろ」

「だから作って」

こうなったらもう紅葉は引いてくれない。分かってる。

「はぁ、分かったよ」

「やったー」






とりあえず朝食を済ませた俺はある事に気付く。

「今日って何曜日?」

「7月1日金曜日」

「何時何分?」

「7時56分24秒」

「学校だ...。学校忘れてた」

登校時間は8時30分まで。あと30分程しかない。高校までは約20分。

「お兄ちゃん、顔青ざめてるよ」

「なんでお前はそんな余裕なんだ」

「開校記念日」

あぁ、くそ...。ここでブツブツ言っても仕方ない。

「ダッシュだな」

「ダッシュだね」






「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

制服に着替えた俺は妹に見送られながら勢いよく玄関のドアを開ける。

俺の家は一戸建てで目の前にはT字路があり細い道がある。そこを猛ダッシュで走り抜け、急な階段坂があるので、そこも猛ダッシュで駆け下り少し行った所に京王線の仙川と千歳烏山の間にある小さな駅。上千歳駅である。

初めてこの時間に出たからあまり知らなかったが意外と人はいた。正直凄くほっとした。しかしよくよく見てみるといつも遅刻ギリギリできている奴や遅刻しちゃってる奴ばかりだ。

ちょうど電車が来たところだったので駆け込む。

「やっべぇな」

「...あ、皐月おはよう」

区間急行の電車の扉が閉まったところで後ろから声をかけられた。。振り返るとそこに立っていたのは...

「げっ」

「げってなんだよ」

俺の数少ない親友。そして幼馴染みの、久保彼方だった。もちろん遅刻なんてものとは縁がなくいつも教室で「遅いぞ」と俺を迎えてくる側の人間なので、何故ここにいるんだと反射的に声に出てしまったのだ。

「なんで今いるんだよ?」

「寝坊」

「イケメンでも遅刻はするんだな」

「猿も木から落ちるってな」

「うるせぇイケメン」

「ひでー」

そうだ、この男、学校屈指のイケメンなのである。高校一年生にしてサッカー部のエースの座を獲得し、しかも全学年の女子約7割を虜にするという伝説がもう既にあるくらいである。それでも保育園に入る前からの仲なので大切にしないとなぁとは思っている。実際、良い奴なのだ。

「っていうか、遅刻なんかごめんだからな」

「はっ?」

「走るぞ」

「はぁ?」

1つ駅を止まったあとその次に止まるのが上祖師谷駅である。俺たちが通う都立木ノ下高校は駅から徒歩10分くらいだが走ったら5分なのだ。扉が開くや否や彼方が猛ダッシュで改札口に駆けていくので俺も慌ててその後を追う。しかし運動部だけあって足は速い。

「速ぇよ、殺す気か」

「死なないでくれ」

「このままだと俺は天に召されるぞ」

「いいから走れ」

なんとなく流された気がしたがここは走らないとホントに遅刻だ。今は、8時23分。...あと7分。しかし8時30分には教室にいないといけないので、8時26分くらいには校門を通らないといけない。

「めんどくせぇ」

そんなこと行ってももう走り始めてる。もう足がつりそうだ。やっと校門が見えたと思ったらいきなりペースをアップさせたのだ。いままでの速度に合わせるのが精一杯だったのに!運動部め...。





「おっせーぞ、彼方ー」

クラスの男子が彼方を迎えた。一方俺はというと彼方が注目を浴びているのをいい事に1番左の1番後ろの席に座る。

「どうしたの?こんな遅くなって。ギリギリじゃん」

俺の1つ前の席から話しかけてきたのは、俺のもう1人の幼馴染み。宮原雫である。学年でもダントツでモテる、そう、可愛いのだ。実は密かに好意を抱いている相手である。

「寝坊したんだよ」

「珍しいじゃん」

「人肌脱いでみた」

「方向性間違ってない?」

そんな他愛もない話をしながら朝のHRは終わった。

「あ、そだ。皐月」

「んー?」

「えーとね」

「うん」

「ほ、放課後さ」

「うん」

「放課後話あるから屋上来てくれる?」

「うん...て、えっ?」

少し顔を赤らめて言う雫の顔はとても可愛らしかった。

「2回も言わせないで」

「わ、わかった」

え、ちょっと急展開すぎないか?なんかいきなり緊張してきた...。

朝の初っ端にそんな事を言われたので、その日の授業は全く集中出来なかったのである。





「来たか、少年」

「は、話ってなんだよ」

ホントに何の話なんだ...。さっき誘うときの言い方もなんか照れくさそうにしてたし、なんだって屋上に呼び出すなんて...告白以外なにがあるんだ!!

「1回しか言わないからね」

「はい?」

なんか雰囲気違くね?もっとこうムードみたいなのを期待してたんだけどな。

「1回しか言わないからね」

「は、はい」

反応に困るな。

「...」

「...」

「魔法使いになってくれるかな」

「...は?」

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