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イケメン騎士とイケメン神父に取り合われちゃう☆3

「あーん、どれにしようかしらっ」


 舞踏会前日、私は自室でドレスを選んでいた。クローゼットから取り出したドレスを、次々 に胸元へと当てる。 桃色のドレスは可愛らしくて素敵。緑のドレスは爽やかで清楚。ミゲル様はどちらが好み なのかしら? 鼻歌を歌いながらドレスを身につけていたら、メイドがやってきた。


「お嬢さま、お客様がいらしております」

「誰かしら」

「ミゲル・ランディさまでございます」

「ミゲルさまがっ!?」 私はドレスを持ったまま急いで階下に向かった。玄関に黒髪のイケメンが立っているのが 見える。陽の光を受け、眼鏡がきらっと光った。私は階段の途中で足を止め、うっとりミ ゲル様に見惚れる。はぁん、今日も素敵。ミゲル様は私に気づいて視線を上げ、眉をひそめる。


「ミゲル様──ッ!」

 階段を駆け下り、抱きつこうとしたら、容易に押しのけられた。

「あん」

「相変わらずだな、リリア」

「ふふ、ミゲルさまこそ相変わらず SUTEKI★」

「......」

 彼は胡乱な目でこちらを見た。その視線が私の手元に落ちる。

「それは......舞踏会用のドレスか」

「はい♡どうですか?」 私は桃色のドレスを持ったまま、彼の前で回転してみせた。上目遣いで見たら、彼は淡々 と感想を述べる。


「ああ、おまえは色が白いから似合うだろうな」

「ゃん、嬉しい!」

 私は指を組み合わせ、ミゲル様を見つめる。


「襲いたくなりますか?」

「ならない」

「ふふっ、素直じゃないんだから」 身をくねらせていたその時、帽子をかぶった妹がかろやかに駆けてきた。妹はミゲル様を 目にし、びっくりしたように立ち止まる。その丸い瞳が、ミゲル様に釘付けになった。

「お姉さま、その方はだぁれ?」

「ああ、この方はね、騎士団長のミゲル・ランディ様よ」

「ミゲル、さま?」

 妹はほうっ、とミゲル様に見惚れる。


「すごい、おうじさまみたいね!」

「ふふ、でしょう」

 私は自慢げに言った。ミゲル様は不機嫌につぶやく。

「私は王子ではなく騎士だ」

「やだ、言葉の綾ですわよ、ミゲル様ったら」

 ミゲル様の脇腹をつんつん突くと、彼は嫌そうに身をよじる。

「触るな。発作が起きたらどうする」

「心配性ね、ミゲル様ったら。お茶を用意いたしますから、こちらにいらして」


 私はミゲルさまの腕を引いて、自室へと連れていく。彼は嫌々ながら足を進めた。思えば 男性を自室に入れるなんて初めてだわ。しかも、その相手がミゲルさまだなんてドキドキ しちゃう★ラブイベントが発生したらどうしよう★ 私はメイドを呼んでお茶を淹れてもらったが、ミゲル様はカップに手を付けようとしない。 あら? お口に合わなかったかしら。そう思っていたら、ミゲル様が私にカップを差し出した。


「飲んでみてくれ」


 やだ......ミゲルさまってば私を疑ってるの!? 何か変な薬を盛るって思われてるのかし ら? 失礼しちゃう。薬なんかなくたって、この愛されボディーで虜にできちゃうのに。 でも、眼鏡の向こうから疑惑の眼差しを向けるミゲル様もステキ★私は紅茶を一口飲んだ。


「なんともありませんわ」


澄ました顔でカップを差し出すと、ミゲルさまは恐る恐るカップを受け取り、口をつけた。 何事も起こらなかったのでホッとしたのか、かすかに眼鏡の向こうの瞳が緩む。ホッとす るミゲルさまもいいわ~。萌え~。

 視線が合うと、彼は咳払いをした。


「今日は舞踏会について話をしにきた」

 彼は指を組んで、私にこう申し付ける。

「舞踏会には 100 名の女が招かれている。皇帝と話せるのは一人五分。けして単独で行動 してはならない。わかったな」

 矢継ぎ早に申しつけられ、私は首を傾げた。

「単独行動がだめ......? なぜですか?」

  「自分の体質を忘れたのか、リリア・リヴァル」

 ミゲル様が私を見据えた。いやん、獲物を狙うような鋭い瞳が素敵★私は身体をくねらせ ながら彼を見つめた。


「ふふっ。私、多分ミゲルさまにしか飛びつきたくなりませんわ」 これは多分、K.O.I。恋だわ★

「戯言だ。おそらく──私と頻繁に接触するせいで、発作が起こりやすいんだろう。おま えの体質は改善していない。少なくとも私の目には」

 ミゲル様ったら厳しいんだからぁ。 「そこで騎士団の若者を集めて、おまえの耐性を確認する」

「たいせい?」

 キョトンとする私に、彼が頷く。

  「おまえを縛らず座らせておく。騎士団の連中にはおまえに親しくするよう言ってあるか ら、発作が起きないよう頑張るんだ」

「わかりました」


 ミゲルさまが私を縛らないなんて、ちょっと物足りないな。でもいいわ。騎士団ってどん なイケメンがいるのか気になるし★

「呼んでくるからちょっと待っていろ」


 ミゲル様はそう言って部屋を出ていく。私はドキドキしながら騎士団を待った。紅茶を飲 んで気持ちを落ち着けなきゃ。そう思ってカップを傾けてきたら、騎士団がぞろぞろ部屋 に入ってきた。


 キター! みんな背が高くって素敵だわ。 真っ先に私に近寄ってきたのは、副団長のハミスだ。原作ではミゲル様の親友で、私の相 談相手でもある。甘い顔立ちで女慣れしてるから、蜂蜜みたいに甘やかしてくれるの。ミ ゲル様は私とハミス様の関係に嫉妬したりしてしまうわけ。そんな美味しいキャラの彼は、 ソファの肘置きに手をついて、私の髪を撫でつつ囁いた。


「団長ってば隅におけないな。こんな可愛い子を独り占めするなんて」

「ぁん、やだわ」


頬を染めてもじもじしたら、騎士たちが可愛い可愛いと褒めそやしてくる。素晴らしいわ。

 イケメンに囲まれてちやほやされる。これこそ私の夢。いや、全女子の夢よ! 騎士の一 人がミゲルに話しかける。

「普通に可愛らしい女の子じゃないですか」

「どこがだ......」


 ミゲル様はうんざりと答えている。でもミゲル様に縛ってもらわないと、なんだか物足り ないわ。私はそわそわしながら彼を見つめた。ミゲル様は眉を寄せ、サッと私から目を逸 らす。私はハッとした。まさかミゲルさまったら......自分で連れてきておいて、他の騎士 に嫉妬してらっしゃるの!?


私の脳内が妄想に満たされていく。 どさりと音を立てて、私の身体がベッドに投げ出される。ドレスは乱れ、手足は縄で縛り 付けられている。ミゲル様は私を冷たい目で見下ろし、こちらににじり寄ってくるのだ。 私の手を掴んで、ベッドに押し付ける。


「あん、ミゲルさま......」

「他の男を見るのは許さない。おまえは私のものだ......」

「ぁん、ミゲルさま、あっ、だめえっ」


 ミゲル様はベッドの上で激しく私を愛するのよ! 私は恍惚の表情を浮かべて叫んだ。

「ああっ、最高!」

「ど、どうかしたんでしょうか」

 騎士の一人が、絶頂顔の私を見て怯えた顔をする。ミゲル様は冷たく返した。

  「さあ。いつもの発作だろう」


 どんなに周りにイケメンがいても、ミゲル様のことを考えてしまう。これが K.O.I★だわ。も うこの気持ちはノンストップなの。私は立ち上がり、ふらふらとミゲル様に近づいた。

「ミゲル様、ハアハア、私を縛ってください」

「寄るな」

 ミゲル様が私を押しのける。私はさらに彼ににじり寄った。

「縛って愛して──!」

「寄るなと言ってるだろうが!」

 ミゲル様は私の首に手刀を振り下ろした。


 ★


 昏倒したリリアを見下ろし、ミゲルは冷や汗を拭っていた。なんなんだ、縛って愛してく れって。ともかく、本当に貞操の危機を感じた......。顔を引きつらせているミゲルに、騎 士の一人が話しかけてくる。

「団長、殴ることはないのでは」

「ああ、とどめを刺したほうが良かったな......」

「いえ、それ余計にまずいですよ」


 ミゲルはリリアを抱き上げ、ソファに寝かせた。むずがるように吐息を漏らすリリアに、 騎士たちが見惚れる。 銀糸のような髪、バラの蕾にも似た唇。気を失っていると、本当に白薔薇のような美しさ だ。気絶しているはずだが、しっかりミゲルの服を掴んでいる。

「まったく......」

  ミゲルはため息を漏らし、リリアの手を引き剥がそうとした。しかし、「あん」だの「やん」 だの、妙な声を出し始めたので断念する。ハミスがソファの背に肘を置いて言う。


「団長にしか興味がないって感じですねえ、リリアちゃん」

「違う。この女は縛り付けると興奮する変態なんだ」 「それなら縛らなきゃいいんじゃないの?」

  「それはそれで飛びかかってくる」

「ああ......なるほど」

 他の騎士たちが神妙な顔で頷く。


「見た目は文句ないんだけどな」

ミゲルはそう言って、乱れたリリアの髪を撫でつけた。リリアは吐息を漏らし、ミゲルの 指を大事そうに握りしめる。その仕草に、不覚にもほんの少しだけ──どきりとした。ハ ミスがミゲルを伺う。

「なあ、ミゲル。本当に彼女を生誕祭に連れて行く気か?」

「何か問題が?」

  「わかってるんだろ。この子、おまえが好きなんだよ。もし皇帝陛下の目にとまったら─ ─」

「......まさか」


 ありえない。こんな女が皇妃に選ばれるわけがない。

「例え選ばれても、俺の任務が成功したというだけのことだ」

握りしめられた指に熱を感じながら、ミゲルはつぶやいた。


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