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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最期のナイフ

作者: 神崎 漓莉

こんばんは、神崎です!

今日は、私の所属しているサークルで出されたお題【死】をテーマに、短編を書いてみました!

いつもより、ほんのちょっぴりダークめかも知れません、よろしくお願いいたします♪

「ねぇ恵麻えま、あたしたちって何の為に生きてるのかな?」


 休み時間、ちょっと眠たいお昼前の時間をひとり微睡(まどろ)んでいると、後ろの席からそんな声が聞こえた。無防備にしていた背中につい、と指を()わせながら訊かれたから、思わず「ひゃっ!?」って声が漏れてしまう。

 にしし、といたずらっぽく笑っているのは、クラスメイトの大槻(おおつき) (あおい)

 クラス替えで席が前後になってからなんとなく馬が合って、一緒に帰ったり休みの日に出かけたりしている、仲のいいクラスメイト。特にイタい部分とかそういうのはないと思ってるけど、周りからはあんまりそういう風に見られてないみたい……?

 その理由のひとつはやっぱり、こういう発言なのかなぁ……今みたいな『何の為に生きてるのかな?』みたいなこと。確かに、あんまり言う人いないよね――だって、かなり浮いちゃうし。


 でも、わたしまで『そんなの言わない方がいいよ』なんて言うと、たぶん葵の味方はいなくなってしまうんじゃないかって思うと、なかなかそういうことも言えない。だから、今までそういうことを言われたらなんとなく濁した答えを返すようにしていた。曖昧だと思われているかも知れないけど、それでも敵になるわけじゃないから。


「うーん、そんな難しいこと考えてないからわかんないけど……葵は何の為に生きてるの?」

「んー、それがわかんなくてさ……。だって、なんかみんな、押し出されるみたいに次の場所に行って、そこからまた追い立てられて、追いやられて……そうやって死んでいくだけじゃない? なんか、それってさ、終わりが見えてる茶番劇みたいじゃない?」


 そう話していたらまたチャイムが鳴って、そこで話はおしまい。わたしたちはまた、いつも通りの日常に戻っていった。その後は、もう「何の為に生きてる?」なんていう話にもならず、いつも通り一緒に帰って、いつも通りの道で分かれて。

 その帰り道、背中を思い切り刺された。


 ……え、なに。

 どうしたの。

 熱い、背中、痛い、熱い、痛い、熱い。

 怖い、やだ、痛い、やだ、死にたくない。


『何の為に生きてるのかな?』


 そんなの、わかんないよ。

 こんな、いきなり、なんで?

 生きてる意味も、死んじゃう理由も、わかんないよ……、まだ、したいことも、いっぱいあったのに、なんで……?


「いつも本音を言ってくれないとこ、ほんとに嫌だった。恵麻なら、いつか言ってくれると思ってたのに。おかしいと思うことを嗤って遠目から見るんじゃなくて、おかしいって言ってくれる人だと思ってたのに」


 言われて、記憶が蘇る。

 葵が帰った後、クラスの友達と話してたこと。

 笑い声。

 奇妙なくらい盛り上がった空気。

 なんだ……、そうだったんだ。

 ばれちゃってたんだね。

 どんどん冷たくなっていく背中越しに聞こえてくる涙声。


 ふふ、ふふふふ。


 その声を聞いているうちに、わたしは葵が訊いてきた答えが、ちょっとだけわかったような気がした。あれ、でも、もう口、動かないや。

 ばいばい、葵。

 大切で、可哀想なわたしの友達。


 大好きで、たぶん、それと同じくらい――――。

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