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少年は刀一本でPKになる  作者: 鳩乃蕃茄
妹の属性には気をつけよう
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49 舞踏、激闘

「あーそろそろいいか?」


街を出て東の森を歩き始め結構経つがもういいだろう。

新エリアの拠点方向だというのに誰一人として出会わないのは、例え荒れるβ鯖であろうと不自然が過ぎる。

5秒…10秒…15秒…


「あれ人払いはやりすぎましたかね」「バレるのも想定内だ」「騎士道精神故の奇襲を…最高だな」


草陰から、木の裏から、枝からと観念したかのように仮面を付けたPK達が現れる。囲まれたか。


「まるでお姫様だなぁこりゃ」


後方の1人がまず接近。獲物は手斧か。


風切り音が聞こえ、当たる寸前にバックステップを駆使して回避し、もう1人の追撃も土まみれになりながら転がり躱す。

陣形が崩れできた隙間を縫うように走り出す!!


狭い森で獲物無しではさすがに厳しい。


「ん゛っ!?危ねぇ!」


直後頭の位置には矢が3本ほど刺さっていた。

【危機察知】でスライディングしなければ危なかっただろう。弓は弱体化したとはいえやっぱり結構削られるのだ。


が、一撃目を躱せたのなら上々。続く弓矢やらの追撃を文字通り飛んで跳ねて逃げつつ、マップをチラ見する。

囲いから抜けた方向は真逆だったが、どうにか森を抜けられそうだ。


インベントリを開き準備を整え……




「地味に速いが追いついたぞ。お命頂戴寄越しやがれ致す!【クイックブロウ】!!」


「【()()()()()】」


森を抜けた瞬間、体を捻って後ろを向きつつインベントリから、勢いそのまま直剣を振り抜く。


クリーンヒットォ!

見事に何も考えず飛び出してきたバカの土手っ腹を青白く光った直剣がぶっ叩く。


インベントリ直出し不意打ち殺法。クランの前衛直伝の曰く、初見殺し率100%の優秀なテクニックだ。


「お前…なんで直剣のASが…」


「俺は今回最初からジョブは剣士だからな!オラッ」


ついでとばかりに【アサルトキック】で地獄にお帰り頂く。

まあ…直剣レベルには振ってないので威力は武器自体の数値とSTRとAS倍率分しか出ないのだが、それでもギリ4割は削れただろう。


やっぱアサシンビルドは脆いなぁ!?


《直剣レベルが上昇しました。幾つかのアクションスキルを会得しました》

《実績:人殺し! を獲得しました》


レベルも上がってなんか実績も手に入れた。




さて続いて追い着いた敵の数は6。恐らくフルパ1つにペアかそれとも見えないところに2人か。


「へへっ不意打ちにゃビビったが1度きりの技。年貢の納め時だなぁ…!」


「こっちでも年貢ってあんの?」


「んまあ貴族制なら多、分…?いやそういうのはいいんだ。いいから死ね!」


改めて握り直した直剣の長さ太さ共にだいたい竹刀ぐらい。少し重いがどうにかなるだろ。


「【スラッシュ】」


同時攻撃なんてことをさせる前に、突っ込み青白く光った剣を今まさに飛び出そうとしたひとりに叩きつける。

止まらず短い硬直を利用し、柄で殴り、トドメとばかりに左胸に剣を生やして次いでに蹴って殺す。


「ちくしょっ、速い…!」


「単発教も悪かないな」


もはや別ゲーと化したβ鯖には対人戦専用wikiがある。そして一部から信奉される宗教がひとつ。

曰く───心臓とか頭抜かれたら死ぬ対人戦においては硬直が長い連撃技より単発で硬直の短いASの方が優秀では無いか、と。


「情報と違ぇじゃねぇか!【スパイラルエッジ】!!」


『3連続の長剣系汎用技【スパイラルエッジ】。そのパターンは基本3つだが、どれも初動が異なるだけだから初手の運ゲーさえどうにかすれば勝てるよ』とは高田馬場の談


「本当に見極めればあとは簡単なんだよな」


剣だろうと刀だろうと変わりはしない。


淡々と受け流しコンボを使う隙すら与えずASを使い攻める。


「【ツインスラッシュ】」


うーん最高のタイミング。


「くっそお前それどこで…」


()()()()


答えながらついでの投げナイフをゼロ距離で叩きつけポリゴンに変えた。

お前らも高レベルだ。倒せばかなりの経験値が入るに決まってるだろ。


「ふう。これで2人。余裕だな?雑魚相手は」


これで焦るか撤退かをしてくれると楽なんだが…。


「落ち着けお前ら。相手はひとりで不慣れな武器。あの自信はブラフだ。タチノ、弓を構えとけ合図で連携して殺すぞ」


「まだやるのか」


「当たり前だろ。弱った猫を殺さないネズミはいない」


「窮鼠はチーズでも噛んでろよ」


「ハッ言ってらぁ!」





━━━━━━━━━



「これが今警戒のクランだ」


「おう。助かる」


「なあ高田馬場。この…なんて読むんだこれ」


「んーコレ?俺も読めないな…。ふむふむ新進気鋭の溢れ者達の集団か」


「あんま気にする必要も無いだろ」


「いやこいつらの募集要項がな」


「あーうん。これはウチが狙われるかもな」


「んでツキハって今刀無いじゃん」


「まあ、ピンポイントに狙われることは無いだろ。気にしすぎだ」


「それもそうか!あ、そういやこのクエストがさ…」



━━━━━━━━━



どれだけの時間が経っただろうか。



「首狩りさぁ…さすがに限度があるだろ。チートかよ」


「失敬な。努力と言って欲しい」


戦況は、良くない。刀無しによくやったと思うほど暴れたが残っていた数本の直剣はなんかぶっ飛ばされた。しかも相手はまだ複数と来た。


「はぁ…はぁ…へへっ所詮首狩りと言えど刀が無きゃその程度かよ」


「刀無しで4人屠ったら充分だろ」


「やっぱお前おかしいわ」


再び襲撃者達は獲物を構える。今度こそ屠られるだろう。さすがに限界だ。

幻惑系の魔法で狂った三半規管に苛立ちそれでもインベントリから残り1本の直剣を構える。


「あー…ああああ!もうこうなりゃ死ねば諸共じゃゴラァアア!」


「クソ!くっそ!コノヤロウめんどくせぇ」


掠った矢は無視!当たりだけ躱して突っ込む!

盾は蹴ってフェイント混ぜて剣を躱して…


「めんどくせぇ!お前らだけ死ね!!【シャープアサルト】おおおおお」


強引にパリィし空いた隙を突撃技で詰めこれで…




「まあ待ちたまえ諸君」



「……………は?」


確かに刺したはずの剣は目の前の枯れ木のように痩せた仮面の男の細剣に防がれた。


「誰だお前」


「私か。私はデクレスト。彼ら『masquerade』のクランマスターだ」


「そうか。死ね」


剣を離し最短距離でのナイフと時間差を付けた蹴りはどちらもあっさりと防がれ返す刀で素早く喉にレイピアが突きつけられた。


「待ちたまえと言っているんだ」


「領主!何をしようと」


「君も少し黙りたまえ。見ていれば相棒無き敵を複数人で囲って襲う蛮行を行っているでは無いか」


「しかし名をあげるにはこれが」


「少し黙りたまえと言っている!君も我がクランのルールは覚えているだろう」


その声はまるで氷河のように冷たい。


「…はっ」




「誰だか知らんがわざわざ子分の獲物を横取りか?」


強引に引き剥がしバックステップで仕切り直すように構える。


「いいや。いいや違うとも!そもそも私は君を…殺す気は無いんだ」


「…へ?」


先程の動きからしてかなりの使い手だろう。何を言っているのか分からず、剣を落としかけたわ。


「私は殺人系貴族になるのが目標でね」


「どんな目標だよ」


まるでお茶でも入れるかのような気軽さで物騒なことを漏らすデクレ何とか


「私は常に舞踏会の主役だ。そして君はダンス(殺し合い)の相手にふさわしい。なればこそ!装備も揃わぬ君をおちおちここで殺すのは私的につまらない」


「私的につまらない」


「そうだとも!というわけでここは手を引くから行きたまえ。君には行くべき場所があるのだろう?そして恐らくそれを達成すれば君は本来の動きを行える。違うかい?」


先程とは別物の声色といい、イマイチ掴みどころがない…というか怪しさしかない。


「仕方がない。彼らの思いを無駄にするのもしのびないのでな。

それではここに宣言しよう!!そこで見ている君も隠れて配信している貴方も聞きなさい。

我々『masquerade』が望むは強者とのダンス(殺し合い)のみ!!!それを満たさぬ愚民共に価値は無く、殺す理由にすらならない。襲わぬ限り愚民の命は救って差し上げよう」


うっわもっと面倒くさそう。


「そ、それじゃ言葉に甘えて俺は行くぞ。……ああそうだデクレストだっけ?」


「何かねツキハ君」


「次は容赦無用(ぶっ殺す)だ。あと呼び捨てで構わない」


「ふふふふ…フハハハハハ!そうかツキハよ!そう。それでいい!そうでなくては私が仮面舞踏会を作った理由がなくなってしまう!ああ……また会おう。いいダンスを踊れることを期待するよ」


割とそろそろ反応が欲しいところではある。感想だけでもいいんでください。


今更小話・近接アクションスキルの色々

基本的に近接武器のアクションスキルは2種類に別れます。

・使う向き、構え方などが決まっているアクションスキル。これは連撃技などに多いです。

例として一閃やスパイラルエッジなど

・技名を叫べば寝転がっている等で無い限り発動出来る割と自由度の高いアクションスキル。これは主に単発技に多いです。

例としてスラッシュや桜花など


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― 新着の感想 ―
[一言] 十二分に面白いので安心してください✌︎('ω'✌︎ ) おニューな相棒が早く見てみたい!!
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