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少年は刀一本でPKになる  作者: 鳩乃蕃茄
妹の属性には気をつけよう
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48 相変わらずβ鯖は治安がよろしい

『よう遥!元気そうだなぁ父さんは嬉しいぞぉ』


「うるせえクソ親父なんの用だ」


『親にはそれ相応の言葉遣いをして欲しいものなんだが…まあいい。用件は簡単。前言った通りお前の妹で俺の娘の結愛に合って欲しい』


「断る」


怪しい。このクソ野郎がそれだけのためにあの金額を使って呼ぶわけが無い。


『それは困った。実はお前の復讐を少し手伝ってやろうかと思ったんだがなぁ』


「ッ」


『そう、悔しいだろう。お前が気にしているであろう法的部分を俺は絶対にどうにかする権力を持っている。受けない手は無い、違うか?』


「……あーあ分かったよ。何をすればいいんだ」


『我が愛しの結愛は何故かいじめられててなぁ』


「そんなに性格悪かったか」


『いいや天使だ!それで学校に行かず部屋に閉じこもってるんだが…』


「それをどうにかして欲しいと」


『そうだ。無論お前だけの力では無理なら物は用意する』


「なんで俺かは分からんがやってみるよ」


『決まってるだろ。お前を信頼してるんだよ。実の息子としてではなく1個人として』


突然マジトーンになるのやめろ。


「そうかよ。それじゃいつ行けばいい?」


『明日の放課後暇か?』


「いきなり急だなおい。まあ暇なんだが」


『なら来い。あいつ以外は席を外すようにしたから存分に話せ。あ、既成事実作るのはやめろよ?後怖いから』


「やらんわこのクソ親父が!!!」


勢いで切った。


「ふぅ…どうするかな」


月乃結愛。この世で一番嫌いな妹。その事を考えるだけで陰鬱とした気分になった。



━━━━━━━━



「スタート」


頭に付けたヘッドセットが唸り徐々に体の感覚が抜けていく。

約束は明日だ。ならとりあえずやるべきは現実逃避だろう。

ぶっちゃけ死んでもアイツには会いたくないんだがなぁ…。うーん。

唸るうちに遂に体の感覚は無くなりやがて眠るように意識が電脳へと切り替わった。




━━━━━━━━━━




体の感覚が再び戻った。宿屋からログインしたらしい。

さて、最初の街は相変わらずお行儀のよい民度をしているが……。


「おい!お前。今ぶつかったろ!俺様達はγ鯖でデカいシマ作ってたクランワセリスの人間だぞ?」


どうやら今他鯖からあぶれたPK達が集合してるようだ。そりゃPK禁止になんてなったらβ鯖にくるしか無いだろう。

そしてγは知らないが今残ってるβ鯖の人間は大概ネジ3本くらい飛んでる。


「だからなんだ?雑魚がドブネズミの威を借りてんじゃねぇよ」


「てっめ」



ガッと響いた音は殴りかかろうとしたドブネズミの雑魚が足払いされ直後に頭を地面に叩きつけて発した音だろうか。


「いいか。雑魚を狩って喜んでた雑魚が舐めた口聞くんじゃねぇぞ?」


「ひっ」


「貴様らァ!何をしている!!治安を乱すんじゃない!!」


「ちっ二度とそのツラみせんじゃねぇぞ」


憲兵に見つかり蜘蛛の子散らすようにいなくなるチンピラ共。もはや風物詩だ。

まったく、一体どっちが仕掛けたのかすら分からなくなるようなレベルである。

しかしいつものお行儀の良さを抜きにしても今日はダントツで治安が悪い。

まあしばらくしたら落ち着くだろうが。







「てな訳で来たんだけどさ」


「相変わらず治安悪いな」


爺さんはこちらを向きもせず鍔の細工を作っている。お茶が美味しい。


「だよね〜あ、そういや怪傑のガスラークと殺り合ったんだけどさ」


「ほぉ。アイツと真正面から!どう立ち回った?」


ようやく爺さんがこちらを向いた。


「こうこうこうして…」




「なるほど。攻撃的な立ち回りをしたか。危険だがそれもまたアリだ」


「あ、なんかもっと丁寧に動けとか説教は言わないのな」


「丁寧も何も相手は弱化したとはいえ歴史に名を残す怪物だ。それくらいの柔軟さは必要だろうよ。それにな」


「それに?」


「それに結局はお前さんの道だ。俺は教え導くことは出来ても強制することは出来ん。だからお前さんの結論がそれならそれでいいんだろうよ」


「そうか。あ……そういえばランキング報酬でなんか貰ってたじゃん」


いそいそとメニューを開くと案の定プレゼントボックスが光っている。運営がケチ過ぎて存在自体忘れてたぜ。


「さてさて中身はなんだろなっと」


ポンと具現化したそれは…


《血濡れの妖狐面》


物騒な名前の狐の面だった。

……なんかところどころ赤黒くない?名前の通りやっぱそういうことだよな。


「……若造とんでもねぇ品貰ってきたな。そいつはちとまずい」


爺さんが見ただけで嘔吐いた。


「やばい?」


「やばい」


とりあえず性能見てみるか。


《血濡れの妖狐面》


AGI+44 VIT+44 特殊スキル『■■■』


イベント『ゴブリン襲来』のβ鯖ランキング報酬

*譲渡売却不可 不滅 死亡時ドロップ無し


「なんか変なスキル付いてるが…」


雑に黒く塗りつぶされたスキル欄が不気味すぎる。


「というかこの妖狐面生きてない???」


触っているとゆっくりと脈打つのだ。なんで?


「そういうことだろう。仕事柄狐にゃ手伝って貰うがこりゃアレだ。悪さして封印されたタイプの悪ぃお狐様だ」


「なんという物を運営は送り付けてるんだ…」


化け狐なんていい噂1つ聞いたことがない。


「ま、若造にゃお似合いの仲じゃねぇか?俺は絶対御免だが」


言われてみれば首狩りだのなんだの色々やってきたんだ。今更ビビる必要も無いだろう。


「それもそうか。んじゃまとりあえずそこらで実験を……あ」


「おいおい刀はお前さんが派手に折っただろう」


「んなら適当に直剣で」


「お天道様はあれだろ?お前の戦い方に合わせたって言ってたんだ。刀作った方がいいだろう」


「とは言うが爺さん新しい刀作ってくれるのか?」


「ふむ、材料次第だが……」


「だが?」


「とてつもなく大量の材料かかなりのレアアイテムが必要になる。そして恐らくお前さんの力量に見合う品にはならん」


なるほどまあそろそろ新しい街に移らなきゃ行けない頃合だろう。


「あ、ちなみにこれって使える?」


「……怪傑のガスラークの心臓か!こりゃまたとんでもないものを」


青白く輝き主が死してなお脈打つ大きな心臓。怪傑のガスラークのレアドロップ品だ。


「いけるか爺さん」


「無理だ。俺が使っても力は出せん」


「それじゃあ仕方ない。んじゃあマップ進めて適当にドロップ品でも狙うから普通の打刀くれないか?」


「まあ待て。俺では無理だが作れる人物を『深霧の森』の奥に知っているのだが」


「早速新マップ来た」


「あいつは」


爺さんの言葉を遮るように何かが部屋に突っ込んできた。

矢のような黒く細長いそれは囲炉裏の上を通り抜け爺さんの作業台ギリギリで空中制止…いやあれ爺さんが掴んだだけだわ。よく見るとそれは黒い燕であり、どうやら何かを運んできたらしい。


「?」


「ふむ…まあ大丈夫だろう」


「マジ?それは助かる」


ピローン!


[新たな刀を求めて]が解放されました。

[新たな刀を求め深霧の森の奥にいるという人物を探そう!]

報酬 ???


「そしてこれはその主からの試練だ。刀の類を一切身につけるな。使うな。これは厳守しろ」


「試練、ね。了解した」


「あとこれを持ってけ。証明になるはずだ」


古ダンスから爺さんが持ち出したのは細かい細工が施された鍔。


「これは?」


「その人の元で修行してるときに作ったやつだ。それを持って交渉すりゃ打ってくれる。おっと金も忘れるなよ?」


「ありがとう。んじゃあ行ってくる」


「おう!」


刀は使えないがどうにかなるだろう。とりあえず鍔と妖狐面をストレージにぶち込み細工を施し南門に走り出した。




━━━━━━





「……ああ。奴が動いた。南門から出たから…ああ。そうだな、おそらく新マップでも目指すんだろう。それじゃあ始めるぞ。俺たちのダンスの始まりだ」


1つ動けばまた1つ。血なまぐさい思惑は歯車のように動き出す。

感想ポイントブクマ以下略


次の話も珍しく書き終えているんで明日投稿します。ちなみにようやく戦闘回です。

初手から重苦しい話でなんかすまない…

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