41 Ghost
「落ち着け落ち着け俺だ」
「……なんでここに?」
「多分インスタントマップのバグとかじゃねーのか?俺にも詳しくはわからん」
「そうか」
凄い怪しい。だが、それよりもこいつの持ってる情報のが重要だ。
「なあ高田馬場。隠蔽の被害者だと言ってたがどこかにその情報があったのか?」
「ああ、それはお前とは別に見つけた手記があってな…ほらよっと」
取り出したそれは俺の持ってる計画書と変わらずボロボロになっている。
『//月6日 何故か十二王議会の1人がこんな田舎の教会に現れた。
司祭様に話があるらしい。
今日は泊まっていくようだ。
//月9日 最近倒れるものが増えている。何か流行病でも蔓延してるのだろうか。しかし最近患者さんが運ばれたことも無いし院内は清潔。不思議なこともあるものだ。あと最近地下から叫び声が聞こえるなんて噂話もあるがそもそも地下室は存在しない。バカバカしい
//月15日 原因が分かった。この前にきたクソ王と司祭が地下に作っていた物にマナを吸われて倒れる人が続出してたみたいだ。
幸い私はマナが豊富で分かるまでに倒れるまでに時間がかかったらしい。だがもう私も限界だ。
//月17日 クソ司祭も死…だ。もう残っ…いるのは彼と私と…だ…だろう。ついに教会ご…埋めら…た。とんでもない魔法だ。
美しかった庭も荒れてしまって泣きそうだ』
「エグすぎでは?」
「だよな。んでどうする?」
「どうするもこうするも俺たちは5層に用事があるんだからそっちに向かうしかないだろ」
「それもそうか。んじゃこっちだ」
「道知ってんのか」
「あ、ああまあお前より先に来てたからな」
だから最初のところで階段が開いてたのか。
「なるほどな。んじゃ行くか」
入ってきた扉のから見て右側奥のこじんまりとした扉を開けると寮みたいな感じだろうか。古びたベッドが左右にズラリと並んでおり、少しカビの匂いもする。
「この道で大丈夫なのか?」
「ああ。この先であってる」
ガギッン!!
「……何してるんだ?」
「ちっ防がれたか」
「だから聞いてんだろ。何してるんだってな!」
「うるせえ偽物。そもそも5層への道は反対の扉だぞ?どこへ連れてくつもりだったんだよ」
「そりゃすまない。普通に道間違えた。だからその刀を引いてくれ」
「その話し方。まずおかしいのはそこだよ」
「は?」
「あいつは冷静に見えて常に楽しそうに喋る。そして何より扇動家だ。観客がひとりでもいるならそんなに淡々とは話せないんだよ」
「……」
「そしてお前がいること自体おかしいんだ。3層まで一切痕跡がなかったはずなのに唐突に4層になって痕跡が現れた。おかしいと思わないか?」
「………」
「そもそもな、高田馬場は今オフラインなんだよ」
静寂、そして笑顔。
「アハハハハハハハハハハ。いいなその推理。少し乱暴だが正解だ。俺は高田馬場じゃない。そうだな《GHOST》いや陳腐だが《THE DREAMING GHOST》とでも名乗っておこう」
そのセリフと共に名前が《高田馬場》から《THEDREAMING GHOST》に変わる。
「姿は変えないのか?」
「ああすまない。俺には体が無いからしばらくこの姿で居させてもらおう」
「そうか。んじゃ死ね」
いつでも踏み出せるよう静かに構える。
「おいおい怖いなぁ。それこれお友達の体だろぅ?罪悪感とかないの?」
「生憎ね。それに高田馬場は1度殺してみたかったんだよ」
「そうか。ならもう問答は無しだ。あとは剣が語ってくれる」
────────────
先に動いたのは亡霊の方だった。
接近すれば勝てると踏んだのか、2振りのダガーを手に一直線に接近してくる。
俺はそのカウンターに下段に構えた刀からの切り上げ。が、体を逸らしそのまま壁を走り、俺の知らない紫のダガーのASが襲うが、
冷静に左足を引き、体をずらし切り上げた刀を型にハマった動きをしている亡霊に振り下ろす。
渾身の一撃とはいかないが、いいそれなりには効いたか。
怯んで下がった隙を逃さず【風】を纏い、下がる速度より速く接近し…
「【死線突き】」
っ喉を狙ったが倒れるように躱される。
ASが終了しない俺を下から鳩尾目掛け蹴りあげられる。
体が浮き上がるなんて冗談みたいな状況になり、ベッドを吹き飛ばしながら、悶絶する。
「………」
油断すらしないのかよチクショウ。
怒涛のダガーによる連続攻撃を刀と足での牽制と回避によってなんとか距離を開け、仕切り直す。
残り約HP4割。あちらは5割。
先に斬った方の勝ちか。
上段に構え、突っ込む。
刀は下に。
残り6歩。5歩。ここだ。【風】を纏い急激に加速し…!
「【桜花】!!」
「スネークファング」
刀は桜色に刀身が輝き、下から切り上げ、
2振りのダガーはまるで蛇の顎のように上下同時に振り下ろされる。
1回、2回、3回と火花を散らし剣戟が巻き起こるが止まらない。
「コンボ【彼岸花】ァァ!」
「【システム・トリック】【スパイラル・エクスタシー】」
普段なら使わないコンボすら使い、追い討ちをかけるがそれでも亡霊は追従する。
血のように赤く輝くダガーとそれよりも深い紅に染まる刀が再びぶつかる。
謎衝撃波で周りのベットが粉々になり、さらに激突する。
2回、3かいっ!?突如亡霊が彼岸花の迎撃を捨て、心臓にナイフを刺し…あっぶない。
それより早く刀がやつの首を斬った。
残りHP0。
「俺の勝ちだ」
息を切らし、胸に痛みを感じながらポリゴンになり始めた亡霊に勝利宣言をする。
「ちっ負けか。じゃあまたやろうじゃないか」
ケロッとした様子で首が話し出す。
「また現れんのかよ…。あ、そういやお前が連れていこうとしたあの部屋には何があったんだ?」
「それを聞くのは野暮だ。自分で確かめて、死ね」
亡霊はポリゴンと化し消えた。
ピローン
称号『ゆゆゆゆゆ夢見るるルルぼうれい霊は眠らラらラらなナナナなななディルディルディルるるるるるるルルルルるルル
なんかバグってる
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ピローン!
称号『夢見る亡霊は眠らない』
を獲得しました。
称号はステータス画面から設定することができ、名前の下に表示されます。
※非表示も可能です
称号なんてシステムあったのか。
とにかくそれよりあいつが連れていこうとした部屋の方が気になる。
ぐちゃぐちゃになったベッドを蹴飛ばして乗り越えるとやがて小さな扉を見つけた。
中から音はしない。
意を決して開けると
『何も無かった』
シミひとつない、不自然なまでに白い壁と床と時折走る黒いノイズ。
それだけ、それだけで本当の意味で何も無い。
違和感を感じスクリーンショットを撮りすぐさまツイッターや掲示板で情報を求めてみたが何も出てこない。というかどうやらここに部屋自体存在しないという情報すら出てくる始末である。
嫌な寒さすら感じ始め、ゆっくりと扉を閉めた。
とりあえず運営に報告しておこう。
さ、気を取り直して今度こそボスを殺しに向かおうか!
という訳でほんとはボス戦までやる予定でしたが、ダレそうだったんで次回に持ち越しです。
……なんで今まで存在しなかった称号なんてシステムがバグりながら現れてるんですかね?




