ボス戦3-激戦
振り下ろされた炎はクモの硬い装甲を容易に焼き、貫通し響き渡るはクモの声にならない絶叫。
元々火が弱点だったのだろうが、そこにさらに多重の攻撃が降り注ぎ、一気に3割まで近衛クモの体力は削れる。
「やろうと思えば削れるもんだねぇ」
『っ!?高須!早くしろ!』
そこに緊迫した声でY高須の叫び声が響く。
ただ事ではないと判断したのだろう。速攻で【ヘイトリアクション】を使用し、ついでにダメージを50%カットする【グレートウォール】も使用し、耐える姿勢を構える。
『お、2人もお願いします!』
VCで指示が入って脳が理解するより速く、口と手は動き、俺と明美もシールドで【グレートウォール】を使用する。
その瞬間だった。体をやけどと切り傷だらけでボロボロになったクモが暴力そのものとも呼ぶべきであろう技も何も無い狂ったように
暴れだしたのは。
毒糸を撒き散らしながら突進してきたクモが俺の方に迫り来る。
────<その頃の妨害班>
「ほんとうに残念だがそろそろ限界だわ」
「うるせぇ口じゃなくて手を動かせ。右後ろ」
「そりゃすみませんなぁっ!」
しっかりと見て最短距離で近づき、心臓に【死線突き】。いい加減新しい技が欲しいところだ。
「そういやメイプルズは生きてるか?」
「魔剣士が死んだが他は生きてる!ギリギリだがっ!」
「そりゃ良かった!なあヘンゼルどっちが先に死ぬか賭けようぜ」
「なんだその悪趣味な賭けは。もちろんお前が先に死ぬ。3000ゴールド賭けてやるよっとぉ!」
残り数人となった前衛の首が空の旅行に案内される。
「言ったなてめぇ。お前が死ぬのに5000賭けてやるよなぁ!?」
再び【風】を纏い、盾の庇護から溢れた魔法職をぶっ殺し、答える。
『やっほーみんな元気ー?』
「「「「「遅いわ!!!」」」」」
『そんな怒らなくても〜』
パァン!
明らかにファンタジーじゃしちゃいけない音と共に弓兵の首が飛ぶ。
「ないすしょっとー」
『ありがとね〜!あ、でもあと残弾5発しかない』
「んーまあどうにかなるだろ」
「っとこんなふざけてる場合じゃないぜ?大物のご登場だ」
乱戦と化していた戦場が静まりかえる。
1人は大剣を肩に担いだ皮鎧の大男、もう1人はフルメイルの金髪。金羊毛の名前は知らないがクラマスか何かと聖杯騎士団のアルベールか。
「手負いにも見えなくはないがまあいい感じだろう。復讐しにきたんだが逃げんよな?」
「さあ?それは知らんよ。というか名乗らないのは失礼だろうが」
「そりゃすまん。俺の名はエンバラ。今回の指揮官だ。そしてお前を殺す男だよ」
凄い自信だ。
ゆっくりと刀を下段気味に構える。
「まあまあ君たち、そんなすぐ殺しあわないでくれたまえ。はじめまして首狩りくん。よろしく」
なるほどあくまでなかったことにしたいと。
「初めまして?いやいや久しぶり、だろうがなぁ?あの時スカウトされたとき以来だっけか。
アハハそう睨むなよ。堂々と味方他クランの闇討ちしたいから手伝えって言われたから断っただけだろ?おっとこれは言っちゃいけないことだったね」
運良くどこにもバレて無かったであろう情報が漏れ、周りがザワつく。
「………君はほんと人の神経を逆撫でするのが上手だね」
「そんなにキレるとお体に触りますよ???」
「黙れ。お前ら、もういい。今回の討伐は諦めるがこいつら全員殺すぞ」
「お前のほうが殺意ビンビンじゃないか」
だが諦めるという話が聞けた。
『Y。そっちはあと何分かかりそうだ?』
『高田馬場か。こっちはあと5分かからんだろう。もう少し耐えてくれ』
『了解した。幸運を祈る』
話を耳に流しながら構えた刀を1度納刀し、いつでも抜刀術を使えるように構える。
「あー俺は今回パス。頑張って」
強がってはいるがヘンゼルもまたボロボロだ。
「了解んじゃいくぞ」
「待てよ兄弟俺も混ぜろ」
「兄弟…まあいいか。よしやるとしよう」
高田馬場はいくつものダガーを
俺は刀を
エンバラは大剣を
アルベールは騎士剣を
第2ラウンドの開始だ。
───────
先に動いたのは高田馬場だった。
「【トリックナイフ】【エアクライム】」
何も無い空中にナイフを突き刺し、空を蹴る。
ここだ。一瞬、全員の目が高田馬場に釘付けになったその一瞬に【隠伏】を使用し、エンバラに接近する。
「【一閃参式】」
高速の抜刀。ギリギリで気づかれ防がれる。
だがこれでいい。
参式の効果はヘイトを集める。
そう。高田馬場の相手をしようとしてたアルベールさえこちらに一瞬だけでも意識を割かないことは許されない。
「カバー助かる!【クアッドスラッシュ】」
「ちょっ!?」
空を蹴った高田馬場は重力に従い落ちながら紫に輝く4本のダガーでアルベールの急所を切り裂き、殺した。
「加勢いるかー?あ、これ聞こえちゃいねえわ」
他が目に入らぬほどの激しい剣戟。
エンバラの大剣を首の皮一枚で躱し、切り返すがそれをエンバラは大剣や鉄手甲で受け止め、剣を凪ぎまた俺はバックステップで下がる。
一進一退の攻防は白熱し、誰も近づくことを許さない。
「オラァッ!【ジャイアントスイング】」
横薙の大剣をジャンプし回避。
間髪入れず、無骨な大剣がまた振り下ろされるが、間合いは分かってる。紙一重で横にズレ、叩きつけられた大剣を足で押さえつけながら最短距離で喉を突く。
「っぶねぇ!?」
なんとエンバラはそれを素手で刀身を掴むことにより防ぎ、さらに片手で大剣を振り回して上に乗っかってる俺を振り落とした。
場はもう一度0に戻る。
「人と殺し合うってのは覚悟してたより苦しいもんだな…。お前はこれ楽しいか?」
何を言ってるのかが分からない。だが
「楽しい。お前も楽しいに決まってるよなぁ!?」
「狂ってやがるっ…!」
気迫で押し、少し退いた瞬間を狙い懐に飛び込む。
──ここで決める。
「【彼岸花】」
「クソガキがッ!舐めるなよ!!【一刀両断】」
どこまでも鮮明な紅色に刀身が染まり、大剣は白く輝き、読み合いすら捨て2つの武器が激突する。
瞬間、衝撃が、当人ら以外を吹き飛ばす程の爆風が吹き荒れた。
「狙撃は…しないほうがいっか」
砂塵晴れた中心では未だ異なる武器が鍔迫り合い、火花散らす。だがどちらの刀身も紅く、白く輝きまだやれると叫ぶ!!
弾かれるように下がりエンバラを睨みながら再び構えたエンバラの最大級の一撃を、針を通すようなステップで躱し突っ込んだ紅い凶刃が牙を向く。
初撃。まずは邪魔な右手を手甲ごと切り落とした。
二撃。返しに袈裟斬り、皮鎧ごと肉を裂く。
三撃。前に出ながら腕を抜刀でもするまでのように下げ独楽のように腹を切る。
終撃。最後の一刺しとばかりに喉を刺す。
また地面が真っ赤に咲き誇った。
まるで弔う彼岸花のように。
「ふぃー」
「なんだありゃ…」
「くっそ指揮系統がめちゃくちゃじゃねぇか」
「エンバラの野郎…覚悟しとけよ」
「撤退するぞ!」
「覚えてやがれよ」
「いやそれは古くない?」
バラバラに撤退してく攻略組をたまに襲ってくるやつを倒してるとボス戦の方からまた爆発音が響いてきた。
「お疲れぇ!」
「よくやるもんだ」
「まあな」
「っと攻略班の方に急ぐか」
「そうしますか」
━━━━━━━━━
走って向かうとそこでは激しく暴れる近衛クモの突進を真正面から受け止めるおっさんと雨よ霰よとばかりに弓や魔法が飛ぶ戦場が広がっていた。体力は残り1割といったところか。
「おーす」
「そっちも終わったのか!ま、休んでてくれ」
「それでいいのか」
「任せれた仕事まで取られちゃ悲しいもんよ!」
「らしいし休むか」
クルクルとナイフを回しそこら辺の岩に座る高田馬場。まあいいのだろう。
「ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ…ギチ…ギ……」
体中を火と矢と切り傷でボロボロになった近衛クモはそれでもロジックの通りヘイトの高い明美を狙……わず
「ちょっ!?やべぇぞ」
奥で指示を出していた高須Y目掛け突進しだした。
高須Yの地点は要するに後衛職の塊だ。いかに残り1割といえど後衛だけでは削りきれない。
慌てて走り出し妨害班総出で強引にクモを抑え込む。お、重い…。
「焼けええええええ」
叫び声と共に火属性魔法の雨が降り注ぎ、クモを焼き払った。
「ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギギギギギギギギギギギ」
燃えた体が徐々にポリゴンに変わり……そして砕け散った。
『イベントボス3戦目、撃破されました!!おめでとうございます』
こうして、過去最大級に疲れたボス戦は終了した
ポイント、ブクマ等なんかください。




