25 のじゃロリの名は
翌日
何するでもなくぼーっとベッドで寝っ転がっていた。VRのヘッドセットはそこらに転がってる。
ログインしたくもあるが、フィールドに出た瞬間袋叩きにされそうでなぁ…。
まあグダグダ悩んでても仕方ない。
そんなわけでログイン。
目覚めた宿屋を抜け出しどこへ行こうか考える。
あそうだ!街の中なら多分殺させないはず。爺さんのとこに行こうか。
「首狩りが居たぞー!!街の外まで追いかけろー!!」
いやふざけんな。
身を隠しながら走り出し、路地裏をむちゃくちゃに走り爺さんのとこに向かう。
ここまで来ればさすがに大丈夫だろう
「おう来たか」
「おーす。まあとりあえずメンテナンスして貰っていいですか?」
「あいよ」
小さく返事をした爺さんが刀を受け取って手入れを始める。
「あ、あと稽古も後でお願いします」
「ああそれなんだが」
「ん?」
「毎回同じような内容でもつまらないだろう。それに刀を使うものがひとつの型を極めるだけじゃいけない。とりあえずどっちかの型の道場に行っとけ」
「いいのか?じゃあ風ノ型に行きたいんだが」
「わかった。ほれ刀だ。あとこの巻物を持ってけ。地図と紹介状だ。多分これがありゃあいつでも真剣に稽古つけてくれるだろう」
刀と巻物を受け取り、地図を見ながらのんびり向かうとしようか。
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えーと雑貨屋の反対の武器屋の左横の裏路地を通って2番目の角を右に曲がりまっすぐ進んで左に曲がれば...
目に飛び込んできたのはそこらの建物と同じような西洋風の屋敷。明らかに道場ではないような気がするがよく見ると表札のとこに〈ヨノ風ノ型道場〉って書いてある。うん。
まあなんというか思ってた場所と違うが入る。
「こ、こんにちは」
恐る恐る入ったそこに居たのは……
「ん?なんだあんた」
プレイヤーだった。
屋敷の中の応接室でお茶を貰う。
「ふむふむなるほど。別の道場から来たのか」
「ああ。で、ここの師範代はどこだ?」
「今出かけてるよ。ああ申し遅れたな俺は時宗。ギルド風花雪月のギルドマスターをしてるものだ」
「よろしく。俺はツキハ。無所属のPKだよ」
「ツキハ?…PK?お前首狩りか!」
「だとしたら?」
先程までの和やかな空気はどこへやら。重く張り詰めた糸のような空気へとあっという間に変わる。
「悪の刀使いは殺してやるよ」
「そうか。荒らすのは悪いし道場に行こうぜ」
「ほう?野蛮なPKのくせ言うじゃないか」
「ほらさっさと移動するぞ。案内しろ」
「ちっ…こっちだ」
互いに警戒しつつ歩く。あ、というか……
「ここ殺傷禁止区域じゃないか」
「...あ」
どうやらあっちも気づかなかったらしい。
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「さて、ここが道場だ」
案内された場所は俺の知ってる道場よりも2回りほどデカい場所だった。
「んじゃさっさとはじめるか」
「ほいよ」
少し離れて抜刀。力を抜いて構える。
「それじゃ」
「【風】よ!」
その合図と共に高速で接近してくる。
そこからは無言の剣戟。互いにフェイントを混ぜながら隙を見ては斬り殺そうと刀を振るう。
だが決定打になるような一撃は無く、攻めきれず、受けきれないこともまたない。
あちらは風ノ型。速さを追求する型故に一撃一撃に威力は無い。
対してこちらは水ノ型。防御とカウンターを追求する型故に攻めきれない。
上から振り下ろされた一撃を受け止め鍔迫り合いになる。
「早く死ねよ」
「お前がな!」
鳩尾を狙って蹴り強引に距離を取りつつ、納刀。アクションスキル【一閃弍方】を突っ込みながら放つ。
「おいおい舐めるなよ【桜花】」
高速の3連撃が抜刀された刀の2連撃とぶつかり火花を散らす。
一撃。二撃。最後の一撃を強引に刀の位置を合わせて防ぐ。連撃が短い俺は先に硬直が切れ、すぐさままだ動けない時宗に袈裟斬を...
「そこまでじゃ!」
とんでもない速さで振られた刀が間に入ってきて俺の刀を止める。
「あ?」
「やっべ」
睨みながら振り向くと身長140cm位の小さく可愛い女の子が怒りの形相で仁王立ちしていた。
はい。ヒロインじゃないです。野生ののじゃっ子です。多分




