集団vs集団
40人vs20人
一見絶望的にも見えるが、あっちは対モンスター用のパーティであり、回復、物理攻撃、魔法攻撃、防御と大雑把に分けてひとグループあたりだいたい十数人くらいしかいないはずだ。
まして対人経験などほとんど無いだろう。
つまり集団で連携を取りつつ攻めればなんてことも無かっただろう。
そんな簡単すら忘れた俺は納刀し1人突っ込む。
魔法や弓矢はフェイントを混ぜて躱し、さっき煽ってきた奴に【一閃】をぶち込む。
さらに近くのやつを姿勢を合わせコンボで【死線突き】で刺殺。
死体を適当に蹴り飛ばし、カウンターと【流刀】で数人硬直狙いのアホを切り捨てる。
数にもの言わせた斬撃やらが掠るが無視して納刀。
からの【一閃弐式】で手数を稼ぎながら背後からの敵を鞘で殴りつつ、再び納刀。
懐からナイフを数本取り出し、刀ではやりにくいほど接近された敵の首に2本刺す。
急所扱いで悶えるのを確認しつつ抜と...
そこで気が付いた。背後から大剣を構えた男が振り下ろそうとしてることに。
この距離は回避が間に合わなっ
「死ね【アルスセイバー】!」
轟音が響いた。
肩が裂けるように痛い。てか裂けかけてる。カウンターの要領で少し後ろに下がりながら刀で逸らしたのが幸いだったのか大剣は抜けてるため、動こうとすれば動けそうだが、焼けるように痛い。
切り替わるように今度は目の前に今度は直剣が迫る。これ死ぬんじゃないか...?
そう思って諦めかけたときだった。あいつは来た。2本のダガーで直剣を受け止めつつ
「おいおいまさか勝手に突っ込んで勝手に諦める気か?」
ニヒルに笑った暗殺者は一瞬で直剣使いを刺し殺した。
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高田馬場視点
「あの馬鹿1人で突っ込みやがった。お前ら!あいつは多分3分は死なない。今のうちにヒーラーを片付けに行くぞ!」
そう言いながら目の前に来た盾役を蹴飛ばし、ヒーラーまで走る。恐らく隠密やらで何人かは走ってるだろうからなるべく目立つようにさらにナイフを起動。
このナイフはMPを消費しながら思考でコントロールする頭のおかしい武器だ。相当目立つだろう。
それを操りながら自分もタガーで戦闘に行くなんてそりゃまさに曲芸士だな。
自嘲しながら近くの恐らく護衛的な剣士を正面と背後からのナイフで喉を刺して切り捨て、かわいい格好した女の子達もじゃんじゃん刺殺してく。
というかそんなに数がいなかったな。せいぜい6人ってとこか。
味方の何人かが盾役に行ったのを確認しつつ、剣士組のとこに急ぐ。
「あの馬鹿...死にかけてるじゃないか」
見ればあいつは大剣で肩をバッサリ切り裂かれ、死にかけてる。
急ぐために【エスケープダッシュ】を使用。
名前の通り本来は脱出のための技なんだがこれを利用して高速であいつに近寄り接近してた直剣を2本のダガーで受け止めつつ煽る。
「おいおいまさか勝手に突っ込んで勝手に諦める気か?」
ニヒルな笑いも忘れちゃならない。
ツキハ視点
「そうだなまだ早かった」
わざわざ危険な場所に来てまで助けてくれたんだ諦める訳にはいかないだろ。ポーションすら飲まず立ち上がる。肩は痛むがもう気にならない。
剣士組は残り8人。対してこっちは2人。
「最高に楽しいじゃないか!」
納刀したままのそれを抜き、構える
「4:4でいいか?」
「7:1でもいいぞ?」
「抜かせ」
軽口を叩きながら左右に別れ襲いかかる…!
なにたった8人。皆殺しだ。
さっき肩に大穴空けてくれた大剣使いに堂々と近寄り、攻撃を全てカウンター。
ついでに袈裟斬り。受け止められるが、がら空きのお腹に向かって【アサルトキック】。
強襲の名の通り強烈な一撃を与え激痛に怯んだ隙に逆袈裟斬り。
「さっきの仕返しだ」
肩をバッサリ切り裂き、さらに喉に刀を刺す。
「お前!!」
「ふっ」
まずは怒りの形相で斬りかかってくる盾持ち片手剣の攻撃を【流刀】で受け流し、【桜花】で盾の隙間から体を三枚おろしにする。これで2人。
もう1人の槍持ちは殺そうとする前に首が吹き飛んだ。恐らくあいつだろうがまあキル数に追加しとく。これで3人。
残り2人。ゆっくり接近して構える。
「あとはあんただけだね」
「ひでぇもんだぜ。やっぱ本職は違うねぇ」
「お前もなかなかにやるんじゃないか?」
「バレちゃったかー。じゃあ俺の細剣に溺れて死ね」
ボロボロの革鎧を纏った男はレイピアで何らかのアクションスキルなのだろう高速で6回ほど攻撃してくる。これヤケクソだろ。
普通に下がりながら迎撃し、終わった瞬間のレイピアを上に切り上げる。
「もう少し決め台詞はもうちょっとこう…よくしようぜ?」
腹に刀を刺した瞬間高田馬場がナイフで喉を刺して殺した。
「こいつはどうする?」
「んーまあ半分こでいいっしょ」
「そいつは傑作だ」
マーガリン視点
時間は少し戻ってツキハや高田馬場が近距離で激戦をしてるなか、こっちはこっちで別の戦いが繰り広げられていた。
ダン!!
ほぼ同時に放たれた弾丸は互いに狙った相手には当たらず空を切る。
直ぐにその場から離れつつ愛銃のドライゼちゃんをコッキング。
「いや~きついね。敵さん上手すぎるよほんとぅ」
実際距離は僅か800m。が、しかしスコープもなくさほど強くもないエイムアシストのみでの撃ち合いを10分以上続けているのだ。愚痴のひとつでもこぼしたくなる。
しかし淡々と手は止めず敵がいる辺りに撃つ。まあこのまましてれば負けはしないかな~。
淡々とした戦闘は色んな思考を意図せず呼ぶ。
(...これでいいのかな私。下では味方も敵も分からないような激戦が繰り広げられてる。支援のひとつでもした方がいいんじゃないの?)
(けどまだ死にたくない)
「死にたくないけど…!」
それでは下で激戦を繰り広げる味方に申し訳ないんじゃないか?そう狙撃手として数多のゲームを渡り歩いた己のプライドが囁く。
「………ふぅ」
息を止めて集中する。敵はどこ?どうやって隠れてる?
目を動かし耳をすませ1ドットでさえ精査する。
「いた」
茂みの窪んだ地点。ゆっくりと移動する様子を見つけた。
そして同時に、撃つ。
派手なエフェクトと共に回転した弾薬は主の狙い通り放たれ、敵の頭を消し飛ばす。
100点!なんてね。
「じゃあ魔法使いさん達もやりますかぁ」
棒立ちで魔法を撃とうしてる魔法使い達を淡々と狙撃する。気分はまさに射的ゲームね。
ついでに今ツキハ君が殺し合ってる槍持ちも撃ち殺す
あ、弾切れちゃった。
「じゃあ遥君また月曜日ね~」
さっさと気配遮断を掛けて撤収する。
あとはなんとかなるだろう。
後にPK抗争の引き金と呼ばれるこの交戦はPK側が3人死亡、攻略組側は全滅とPK達の圧勝に終わり、これ以降のβ鯖にPKとPKKの増加を招き、攻略クラン、ひいては運営の悩みの種に繋がるのだった。
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