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探索開始

次回はもうちょっと進めたい。


 俺達の住んでいる街は近くに高原があり牧畜が盛んに行われている。観光地やレジャーの名所にもなっていて、大型連休などは全国から人が集まってくる。

 そんな街でも住み分けはある。街の中心近くを流れる川を境に、東側が観光を目的に、訪れた人が泊まるホテルが多い地域で海がある。西側にはレジャー施設やキャンプ場がいくつかあり、牧場や田畑が多い地域。南北でも若干の違いはあるが、大雑把にいえばそんな感じだ。家は西側で山の麓にあり、少し登ればキャンプ場と牧場がある小さな地域だ。

 玄関から庭に出ると、夏になる前の柔らかい日差しが俺を迎えてくれた。しかし、俺が見た光景は、ちょっと信じられないものだった。植物が大きかったのだ。田舎とかそんなレベルじゃなく、植物が異常に成長していた。道端に生えていた雑草が腰を超え、街路樹は、根回りが数十メートルある巨木と化していた。


「…これが適応した植物か。街の地図とか変わってそうだな。後で森羅万象で確認しとくか。今はちょっと倉庫を漁ってみよう。」


 庭の隅にある倉庫を覗くと、色んなものが雑多に置かれている。ここを見ると確信するが、俺の収集癖は絶対に親譲りのものだ。


「ま、剣先スコップとかでいいだろ。後は、草刈り用のマチェーテがいい感じかな。あー、リュックも持ってくかな。」


 剣先スコップは市販の量産品、マチェーテは祖父が使っていた、近くの刃物店の物でナタに近い。リュックは登山用のもので、バックパックと呼んでも差し支えない物だ。中にはロープ、懐中電灯、コンパス、救急セットが入っている。リュックを背負い、マチェーテをベルトから下げてスコップを持ってく倉庫を出る。


「さてと、次は工兵隊だな。」


 実は目覚めてから、身体の中に何かある感覚はあった。これが魔力かと納得していたし、使う感覚も何となく分かっていた。

 工兵隊スキルを使用すると意識しながら、腕から魔力を放出する。少し力が抜けたような感覚の後、白いモヤのようなものが目の前で集まり人型になった。数はちょうど10体、色白で足はなく浮いている。体が軽く透けていているので、向こうの景色が若干見える。浮いているので正確には分からないが、身長は腰のあたりだ。なんか幽霊っぽい。

 さっきの感覚では数や1体に込めるMPも指定できる感じだった。MPを確認してみると20減っていた。今ので1体2MPか。


 「よし、じゃあ最初の指示が工兵隊に相応しくないので悪いけど、近所の様子を誰にも見つからないように探って欲しい。周囲3キロ程でいいから、綿密に頼む。俺はそこの角を右に曲がった所にある喫茶店で人を探していると思うから、2時間ほどで集合だ。それでは散開!」


 すると工兵達が敬礼した後に身体を薄くし、見えなくなってしまった。これは目視では多分見つけれないな。

 それを見たあと、俺は家から見て左側にあるT字路地を右に曲がり、道なりに150メートル程行ったところにある喫茶店『白樺』を目指す。

 着くまでに森羅万象で情報を得る。今、人はどれくらい生き残っているのか、街の地図、植物の異常成長についてなどだ。工兵隊の進捗状況を確認していると、喫茶店に着いた。


「シロさーん、長滅ですけど生きてますか?」

「はいはい、仁君かい?今回は災難だったねぇ。それと、その挨拶は若干不謹慎だ。生きてるから文句も言えるがね。それにしても物騒な格好だね。」


 そう言いながら、店の奥から出てきたバーテン服の男性。そう、この人が俺の探し人の1人。この喫茶店のマスター、|大士<<だいし>>|鹿<<ろく>>さん。大抵の人はロクさんって呼ぶけど、俺はシロさんと呼んでる。理由は俺が白色を好きなのと、喫茶店の名前にも白が入ってるから。7年前に脱サラしてこの喫茶店を始めた33歳独身。俺はこの人のコーヒーと人柄が好きで、週に3~4回不定期で手伝いに来て、コーヒーを無料で飲み放題にしてもらっている。


「あぁ、生きててよかったです。シロさんのコーヒーが飲めなくなるのは痛い。雪春が、火事場泥棒とかに気をつけろって言ってたので。」

「なるほどね、雪春君の勘はよく当たるからね。それはそうと僕よりコーヒーかい?呆れたよ。でも、今ある豆の分のコーヒーしか飲めなくなると思うよ。商売あがったりだよホント。」

「今は商売とか言ってる場合じゃないですよ、それより|円<<まどか>>は今日バイトじゃないですか?」

「円ちゃんはバイトでここに来てるよ。今は二人で荷物をまとめてた所だったんだ。君の家によってから、まずは公民館に向かうつもりだったんだ。そっちから来たけどね。裏に行ってみるといいよ。」

「分かりました、行ってみます。そうだ、シロさんはどうしますか?俺達は情報を集められるので、今のところ家族で動くつもりです。」

「情報を?まぁ、後で聞くよ。そうだねぇ、ずっと僕のコーヒーを飲み続けてくれた仁君を放っておくのも不義理だし、君が店を手伝ってくれるようになって、円ちゃんもバイトに来てくれた。君には本当に世話になったんだ。そうだね、君の所に行く事にするよ。」

「助かります、シロさんのコーヒーがあれば百人力ですよ。じゃあ、円に話してきますね。」

「僕は店を閉める準備をしとくよ。」


 そう言って白さんが店のテーブルやイスを片付け始めたのを尻目に、俺はカウンターの裏にあるスタッフルームに通じる扉に向かった。

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