移り変わり
世界設定の説明会です。
「世界の移り変わりを開始中です。」
俺、滅長<<ながめつ>>仁<<じん>>が目を覚ますと、真っ白な空間の中にそんな文字だけが見えた。てか、浮かんでた。服は記憶にある部屋着だし、見たところ異常はないように感じる。
「なんぞこれ?どういう状況?」
「私は、新たな世界意思のシステム。『 神々』の案内板です。
現在、世界の移り変わりに伴う肉体の再形成後です。」
世界意思?移り変わり?再形成?訳が分からない。俺は自室にいたはずだ、妹の料理がもうすぐ出来るんだ。食べ損なうとどうする。
「世界意思とは、はるか昔より存在する世界の意思です。
移り変わりとは、世界のシステムが置き換えられ、新たなシステムで動き出す事です。一種の自然現象とご理解ください。
今回、移り変わりが起こったのは、明確な自意識のある多数の世界意思(通称:神々)、が誕生した事によるものです。
身体の再形成は、魔素に適応出来た事で、魔素を扱える身体に作り替えられています。」
思考を読まれた?いや、ここは不思議空間の中だし、神って言うくらいだ。それくらいは出来そうだ。
夢や幻って感じでもないしな。なんにせよ、この案内板?が説明してくれそうだ。
「世界意思についてはもういい。
世界はどう変わった?魔素と身体の再形成について教えてくれるか?」
「魔素とは、世界に満ちた新たな元素です。身体に取り込まれると魔力と言うエネルギーになります。
魔力は強い意志に反応し、人々が魔法と呼ぶ自然現象の上書きが出来ます。
移り変わりに伴い、魔素に適応出来なかった者は死亡しました。
現在、世界には魔素に適応した動植物しか生存していません。もちろん神々によって新たに生み出された生命も存在しますが、基本的には、旧世界の動植物が適応して生き残った形になります。
また、ステータスが確認出来るようになりました。職業、魔力、MP、スキルが表示されます。
職業にはLvがあり、覚えるスキルは職業に左右されます。
魔力とMPを簡単に例えると、エンジンとガソリンです。魔法は魔力を高めれば高威力になり、MPを高めればより長く維持できます。
スキルは特殊技能です。熟練度の確認も出来ます。また、職業Lvを上げる度に全関連スキルの熟練度が上昇し、スキルポイントを入手します。スキルポイントを使い、新たなスキルの習得や強化が出来ます。熟練度は使い続ける事でも上昇します。なお、人々の遊んだゲームのような、HP等の肉体的な強さを示す数値はありません。
現在、身体は魔素に適応したことで、人としての特徴は残して変化しています。この変化は魔力を放出する起点となる場合が多いです。
変化はコンプレックスを素にしており、長滅仁の場合は、肌が鱗のようにひび割れる乾燥肌です。変化としては腕から手、足から背中にかけて鱗が出現しました。」
少し長い案内板の説明にはツッコミどころが多かったが、とりあえず集中してて読みきった。今の状況はこの案内板だけが頼りだ。情報があれば危険を避けることも、立ち向かうことも出来る。無ければ蹂躙される。
「 死亡するとあるが、家族は無事か?分かるなら教えてくれ。」
「都<<みやこ>>様と雪春<<ゆきはる>>様の生存を確認。」
その短い文書の中には、父の名前がなかった。
家は5年前に母がガンで亡くなってから父子家庭だった。再婚もせず、ろくに帰らずに仕事ばかりしていた。
そんな父を尊敬していたし、妹と弟を守るのは俺の役目だと思っていた。これからもそれは変わらない。父はいない、都と雪春は俺が守り育てる。
…だけど少しだけ悲しんでもいいよな。
仁は、父がよく顔に浮かべていたくすぐるような笑みを思い出し、流れ出る涙を拭くこともなく静かに泣いた。遠くで父の声が聞こえたように感じながら。