運命
「ヴァイン、僕に、血を」
ヴァニラは、素早く彼女を突き飛ばし、牙を剥き出す。もう、渇きに抗えない、そんな欲望が爆発している。
「早く、僕を癒して」
しかし、その叫びは聞き入れてはくれない。それどころかヴァインは、ヴァニラから離れていく。まるで、罰を受けているかのように。
「やっとか、だが、あげるわけないだろ。ヴァニラが、壊れるまで飢えさせてやる」
ヴァニラの目は、真紅に染まる。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
その叫びは、森の中に轟く。
「ヴァニラ?」
後方からヴァンの声が聞こえる。ヴァニラの叫びで駆けつけたのだろうか。
「兄さん、はぁはぁ。息がくるしい」
ヴァニラはもう限界だった。血が欲しくて、欲しくて本当に狂ってしまうような。
「ヴァニラ、大丈夫か……」
ヴァンはふと手前にいる彼女をみた。その瞬間、今の状況に似合わない穏やかな風が吹き始める。何かを祝福しているかのよう。
「兄さん、僕に兄さんの血を」
ヴァニラは、ヴァンに手を伸ばす。しかし、ヴァンは、ヴァニラから遠ざかっていく。
「ヴァン、おまえはいいやつだな。俺のために協力してくれるとは」
ヴァンは、その言葉を無視し、何かにつられるようにふらふらと歩いている。その足は、彼女の方で止まった。
「俺についてこい」
しかし、衰弱しきっているからか彼女の体は全く動いていない。
「しかたないな」
ヴァンは、彼女の頭と両足の関節に手を入れる。これはいわゆるお姫様だっこだ。彼女の顔はリンゴのように真っ赤に染まる。もしかしたら、吸血されたときよりも熟したりんごになっていたかもしれない。ヴァンは、そのまま持ち上げ、歩き出す。それはまるで、本当の王子様と姫のようだった。




