欲求
ヴァニラは、数時間後に目を覚ました。見たことのある部屋で。ジャリジャリと、金属音が鳴る。どう言うことだろう。ヴァニラは、腕を足を動かそうとする。果たして、動けなかった。よく見てみると鎖で繋がれている。まるで囚人かのように。
「やっと目が覚めたね。ヴァニラ」
ヴァニラは、声の主の顔を見上げる。それは、数時間前にヴァニラの血を吸ったヴァインだった。
「何をするつもりなの。この鎖を外して」
ヴァニラは、語尾を強くした。だが、ヴァインに通用する訳がない。
「どうしてなのかな?俺は、ただ、ヴァニラがほしいだけなのに。これで、俺は、独り占めできるんだ。血を吸うことだっていつでもできる。もう、ヴァニラは、俺のものになったんだよ」
ヴァインは、不気味に笑い出す。いつから、こんなにねじれてしまったのだろうか。
「ヴァニラは、ずーとここにいればいいんだ。そしていつか、ヴァルから連絡が来て婚姻の儀式をしてもらう」
ヴァインは、そっとヴァニラの肌に触れてくる。ヴァニラは、必死で抵抗したが、無駄であった。空腹だからか、力すら出ない。
「そういえば、ヴァニラは、おなかがすいていたんだよね。ならさ」
ヴァインは、自分の肩を見せつける。そのきれいな鎖骨に酔いしれそうになる。
「俺の血を吸えばいい。我慢できないんだろ、その乾き。抗えないんだろ、その欲望。だったら、俺の血を吸うんだ」
ヴァインは、近くのナイフで自分の肌に傷をつける。ポタポタと流れてくる、少量の血。真っ赤な、ヴァンパイアと人間の混血。
「なにこれ、苦しい。喉がからからで頭が、おかしくなる」
ヴァニラは、欲に飲まれていた。あの血がほしい。落ちてるのが、もったいないと。
「どうしたのヴァニラ。苦しいの?だよね。さあ、俺の血をどうぞ」
ヴァインは、ヴァニラの頭をつかみ、自分の肩に移動させる。ヴァニラは、もう、極限状態に陥っている。
「舐めてみて、きっと病みつきになるよ」
言われるがままに、ヴァニラは、ヴァインの血をなめてみる。人間とは、濃厚さが違う。ドロッとしたものがなく、するするっと飲み込める。ヴァニラにとって、はじめての味わいだ。これは、世のヴァンパイアが求めていた血である。そう、ヴァインがいっていた、病みつきになる味だ。ヴァニラは、ヴァインの肩に牙を突き刺した。少ししか、飲んでいないのに治まる乾き、欲望。これは、いったい。
「癖になりそうだ。もっと欲に従順になっていいんだよ」
乾きは、治まっているはずなのに止められない。ヴァインは、なにか仕組みでもしたのだろうか。しかし、そんな力は聞いたことがない。
「さてと、もう食事は終わりだ。さあ、ヴァニラにとっては、休息の時間だよ。おやすみ」
ヴァニラは、ヴァインの肩から離れる。そして、ぼふっという音をたてて倒れこむ。しかし、それは、意思ではない。体を操作されているような感覚。いつの間にか、意識が遠くなっていった。




