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第4幕 エレジーよ、遠くあれ

道行く民の楽しげな笑い声。ひっきりなしに走る馬車の車輪の音と馬の蹄の音。市場の商人達の威勢の良い呼び声。吟遊詩人が爪弾く琴の音と伸びやかな歌声。未知の片隅では猫が欠伸をしながら丸くなり、きゃらきゃらと声を上げながら子供達が走り回る。

ここはオルタニアで最も栄える城下町である。その一角に居を構えるカフェのテラス席に陣取って、アウラローゼは冷たく冷やされた果汁たっぷりのアイスティーを飲みながら、じろりと正面でアイスコーヒーを嗜むフィルエステルを睨み付けた。


「フィル様。一体どういうつもり?」

「どういうつもりも何も、さっき言った通りだよ。嬉し恥ずかし初デートとでも言えばいいかな。君がオルタニアに来て一か月も経つのに、なかなか二人きりの時間が取れなかったからね。城下町の紹介も兼ねて、息抜きをと思ったのだけれど、気に入らなかった?」


アウラローゼとフィルエステル、双方どちらも外套のフードを深く被ったままだが、その所作から只人ではないことが滲み出るのか、周囲は二人を遠巻きにしており、そのおかげで声を少しばかり抑えるだけで二人の会話は成立していた。


口元に笑みを湛えて首を傾げるフィルエステルに、アウラローゼは舌打ちしたい気持ちになった。

な・に・が『嬉し恥ずかし初デート』だ。いい歳した青年が、よくもまあ恥ずかしげもなく言ってくれるものである。

どうせ自分とフィルエステルの結婚は政略的なものだ。必要以上に友好を深める必要などないだろうというのがアウラローゼの言い分である。そして、アウラローゼが不機嫌である理由は、決してそればかりではない。


「ミラも一緒でよかったじゃない」


不貞腐れたようにアウラローゼは呟いた。幼子のようなことを言っている自覚はある。

だが、それは間違いなくアウラローゼの本音だった。それが解らないはずがないというのに、フィルエステルは肩を竦めてにっこりと笑う。


「それじゃデートの意味がないじゃないか」

「私達の立場上、二人きりになろうと思う方が間違ってるわよ。それに、ミラを一人にしてはおけないわ」


一国の姫と王子が護衛の一人も付けずに城下町をうろつくだなんて不用心どころの話ではない。何かあったら、という仮定をすることすら憚られるのが、自分達の立場である。


加えて、アウラローゼはミラを城に残してきたことが気にかかってならない。緑青の侍女と呼ばれ、侍女としての能力ばかりではなく、アウラローゼの護衛としての能力も高い彼女であるが、この異国の地で一人にするのはいかがなものか。

だが、そんなアウラローゼを、フィルエステルは、その穏やかな口調からは想像もできないような強引さでミラから引き離し、ここまで連れてきてしまった。


よくよく考えてみなくてもフィルエステルは、優しげな甘い美貌に誤魔化されそうになるが、その実態は、当代随一の、生ける剣聖と呼ばれるほどの剣の腕前を持つ、大国オルタニアの第二王子だ。

たやすく御せる相手ではないということくらい解り切っていたことであったというのに、油断していた自分をアウラローゼは悔しく思う。

じっとりと恨めしげに自身を見つめてくるアウラローゼの薔薇色の瞳を受け流し、くすくすとフィルエステルは笑うばかりだ。


「心配しなくても君のことは私が守るし、ミラのことはユーゼフに任せれば問題はないよ。あれで気の利く男だからね」

「ユーゼフが気が利くのは、貴方にとってだけでしょう」

「うん、まあそれは否定はできないけれど。それでも、ユーゼフは一人の魅力的な女性を放置するほど責任感のない男ではないことは確かだよ。きっとミラのことも楽しませてくれるはずだ」


だから私達は私達で楽しもう?と笑いかけてくるフィルエステルに、唇を尖らせてアウラローゼは低く呟いた。


「ミラに何かあったら、許さないんだから」


単純に責任を取らせるだけでは済まさないと言外に告げる。

くすくすとまた笑ったフィルエステルは、やがてその眦を細めて溜息を吐いた。

笑顔ばかりの彼にしては珍しい反応にアウラローゼがぱちりとひとたび瞬きをすると、その薔薇色の瞳を、フィルエステルの色彩豊かな光が遊ぶ黒蛋白石の瞳が見つめてくる。


「羨ましいな」

「何がよ」

「君にそんなにも大切に思われているミラが。君はどうやら、まだまだ私のことが嫌いなようだし」


穏やかにそう言い切ったフィルエステルに、アウラローゼは思わず言葉を失った。


「き、嫌いだなんて……」

「あれ? 違った? じゃあ嫌いというよりも、苦手と言うべきだったかな」

「……」


気付いていたのかとアウラローゼは固まった。いや、確かに自身の態度はミラに溜息を吐かれるほどに割とあからさまではあった。だが、そんなことはちっとも気付いていない様子で毎日、毎日、飽きもせずに会いに来るものだから、よっぽど鈍いのだろうと勝手にアウラローゼは思っていた。


だが、忘れそうになるが、相手はあくまでも生ける剣聖でありオルタニアの第二王子だ。気付かれていて当然であったと言える。ならばもうはっきりと言ってしまおう。


そう内心で結論付けたアウラローゼは、アイスティーをぐいっと飲み干し、ダンッとグラスをテーブルに叩き付けるように置く。

ミラが居れば間違いなく「姫様」と低く嗜められることであろうが、生憎彼女は今はここにいない。周囲が驚いたようにこちらを見てくるが、そんな視線は知ったことか。


「貴方の言う通りよ。私は貴方が苦手だわ」


テーブルの上で白い手を組み合わせ、真っ直ぐにフィルエステルの黒蛋白石の瞳を見つめ、アウラローゼは言い放った。

好きになれないのは本当だが、嫌いという訳ではない。本人の言う通り、苦手という言葉が一番相応しい。


だってアウラローゼには解らないのだ。解りやすく示される好意を信じてもいいのか。

今までこんな風に解りやすく好意を示してくれたのは、それこそアウラローゼに【祝福】を与えてくれたエルフの【鳥待ちの魚】くらいしかいない。あのエルフは例外すぎて話にならないから、結局アウラローゼは自分で考えるしかないのだ。いつだって嬉しそうで幸せそうな笑顔の裏で、フィルエステルが何を考えているのかを。


そのまま黙りこくるアウラローゼをしばらく見つめていたフィルエステルは、ふいにその手をアウラローゼに向かって伸ばした。反応が遅れて避けることができなかったアウラローゼの頬のラインを、フィルエステルの指先が撫でていく。

それは、剣を持つ者の、硬い皮膚で覆われた、節くれだった指だ。そんな指を持つ者であるとは思えないほど甘い眼差しをアウラローゼに向けて、フィルエステルはあっさりと頷いた。


「うん。それで構わないよ。少なくとも、今はね」


今までの笑みとはどこか異なる笑みで、フィルエステルはそう続けた。穏やかで優しげな笑顔、とだけ表現するには、どこか悪戯げで、挑戦的でもある笑みだった。


無意識にごくりと息を呑むアウラローゼは、そっとその長く濃い睫毛を伏せた。

こんな時にミラや【鳥待ちの魚】がいてくれたらよかったのに。

そう内心で呟くアウラローゼよりも一足早く立ち上がったフィルエステルは、アウラローゼの手を取った。そのまま引き寄せられるように立ち上がらされ、ついたたらを踏むアウラローゼの肢体を、フィルエステルはその痩身で難なく受け止める。


「ちょ、ちょっと……!」


アウラローゼが慌てて身を放そうとしても、フィルエステルは手を放してはくれなかった。

ごく自然な動きでアウラローゼの腰に腕を回し、そのままエスコートするようにアウラローゼを歩かせ始める。


「フィル様!」

「いいからいいから。ちょっと君と一緒に行きたい場所があるんだ」


だから今から行こう、と、穏やかながらも有無を言わせてくれない口ぶりでフィルエステルは歩き出す。彼の腕に抱えられるようになりながら、アウラローゼは「だから苦手なのよ!」と内心で悲鳴を上げる。下手に暴れては注目を集めること間違いなく、結果アウラローゼは大人しくフィルエステルの腕の中に収まって歩みを進めるしかない。


フィルエステルは迷いのない足取りで、アウラローゼを抱えたまま道を進む。傍から見れば若い恋人同士の仲睦まじい姿そのもの様子に、周囲が微笑ましげな視線を向けてくるのが、アウラローゼには不本意極まりない。


一体どこへ連れていくつもりなのか。そう問いかけたくても、否が応でも高まる鼓動がうるさくてアウラローゼから言葉を奪う。


そうして、二人身を寄せ合って歩むことしばし。アウラローゼとフィルエステルは、とある広場に辿り着いた。

アウラローゼの手を引いて、フィルエステルは空いているベンチに腰を下ろす。

そこでようやく握られていた手を解放され、アウラローゼはほうと安堵の息を吐き、フィルエステルの傍らに立ったまま、周囲を見回した。

色鮮やかな石畳で花の模様が描かれた広場の中心には、オルタニアの守護神たる戦女神が佇む噴水が据えられている。

周囲のベンチでは民がそれぞれ談笑に耽っていたり居眠りをしていたりする。あちこちで野良猫が居眠りをしている姿や、小鳥がその羽を休めている姿が見受けられた。

平和そのものの、穏やかな時間が流れる広場だ。


「フィル様が私を連れてきたかったところって、ここなの?」

「いや? ここはちょっとした寄り道だよ」

「……」


悪びれる様子もなくフィルエステルは言い切った。この王子様はどこまでふざけているのかとアウラローゼは頭が痛くなる。

どういうつもりかと無言で問いかけるうろんげなアウラローゼの薔薇色の瞳にも臆することなく、微笑むばかりのフィルエステルの膝に、アウラローゼの背後から勢いよく、ひょいっと身軽に何かが飛び乗ったのは、その時だった。


「きゃっ!?」


驚きに声を上げるアウラローゼとは対照的に、落ち着き払った様子でフィルエステルは膝の上に飛び乗ってきたそれ――すなわち、白い毛並みを持つ大きな猫の頭を撫でた。


「やあ、ブラン。久しぶりだね。今日も相変わらず君は美しい」


フィルエステルの言葉に答えるように、白猫はにゃあと一声鳴いた。そしてくるりとその場で丸くなる白猫を見下ろしていたフィルエステルは、その黒蛋白石の瞳を、気付けばベンチから五歩は離れたところにまで移動していたアウラローゼに向けて笑った。


「アウラ、君もこっちに来て私と一緒に撫でればいいのに」

「お断りするわ」


間髪入れずにアウラローゼは即答した。意外そうに瞳を瞬かせるフィルエステルに、アウラローゼはつんと顔を背ける。


「私、動物にも嫌われてるもの」


アウラローゼが触れることを許してくれたのは、長兄カルバリーエが従える風鳥シルフィードと、次兄キリエルーバが従える水馬ウンディーネだけだ。

基本的にジェムナグランの城内を自由に行動している彼女達は、兄達の目を盗んでは、アウラローゼの元に遊びに来てくれていた。シルフィードとウンディーネは、“鉄錆姫”にとって、数少ない、たった一羽と一頭の友だった。

そんな一羽と一頭を除いた他の動物達は、アウラローゼに懐くことはなかった。王族としての嗜みとして乗馬のレクチャーを受けた時は、馬がアウラローゼに怯えてそれはそれは苦労させられたものである。なんとか乗馬を一通りこなせるようになった時には、アウラローゼも馬もへとへとに疲れ切っていたものだ。


いくら自分が動物を好きでも、動物は自分のことが嫌いなのだ。そうアウラローゼは思っているし、周囲もまたそう思っている。

少なくともジェムナグランではそうだった。“鉄錆姫”の名は、動物達の間でも広まっているのだと、かの故郷では散々陰口を叩かれたものである。


フィルエステルの膝の上で今でこそ大人しくしている白猫も、きっと自分が近寄ればすぐに逃げてしまうに違いない。だからこそ近寄らずにその姿を目で愛でることしかできない。

そんなアウラローゼに、少しばかりフードを持ち上げてその黒蛋白石の瞳をフードの下から覗かせたフィルエステルは、穏やかに告げた。


「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。ブランはレディだからね」

「怖がってなんて……!」


なんて失礼なことを言うのだろう。怖がってなんていない。ただ、近寄らないのがお互いのためだと思うから、それを実行しているだけだ。柳眉を顰め、きっとフィルエステルを睨み付ける。

フードで隠れてはいるものの、アウラローゼの、見る者にきつい印象を抱かせる美貌に睨み付けられればそれなり以上に誰もが迫力を感じるはずだ。ジェムナグランでは、アウラローゼの薔薇色の瞳に誰もが恐れをなした。だが、フィルエステルはくすくすと笑うばかりである。


「まあまあ。大丈夫だから。そっとでいい。まずはここに座って? それから、その手を伸ばしてごらん」


フィルエステルは、白猫の頭を左手で撫でながら、右手でぽんぽんと自らの隣を叩いた。ここでフィルエステルの提案を断るのは容易いことであったけれど、それをしたが最後とんでもなく敗北感を味わうことになりそうで、アウラローゼは渋々フィルエステルの隣に腰を下ろす。


フィルエステルの膝の上で丸くなっている白猫は、気持ちよさそうに目を細めている。そっとアウラローゼは、恐る恐るその白猫に手を伸ばした。

ぴくっと耳を動かし、顔を上げてじっとアウラローゼを見つめてくる白猫に、思わず触れる寸前で手を止める。だが、フィルエステルに「アウラ」と優しく呼びかけられ、とうとうアウラローゼは白猫の背に手を乗せた。


ふかふかの毛並みに、アウラローゼの手が沈んだ。温かく柔らかな、心地のよい毛並みだ。そのままゆっくりとその背を撫でると、白猫はゆっくりとした動きでアウラローゼの膝の上に移り、ごろごろと喉を鳴らしだした。


「……!」

「ほらね。ブランも君のことがお気に召したみたいだ」


目を見開くアウラローゼに、フィルエステルは軽く笑って立ち上がる。


「近くで小鳥の餌を売っているんだ。せっかくだから買ってこようか」

「え、で、でも、この子は……」

「この様子だと、私がいなくても君がいてくれたらブランは満足してくれるよ。すぐに戻ってくるから、少し待っていて」

「ちょ、ちょっと!」


ひらりと手を振って踵を返すフィルエステルを追おうと、アウラローゼは立ち上がろうとする。だが、ブランと名付けられているらしい白猫が、抗議するように一声鳴いた。ベッドは大人しくベッドの役目を果たせと言いたいらしい。

白猫の水色と黄色というオッドアイがじぃっとアウラローゼを見つめてくる。なんとも逆らい難い圧力を感じ、アウラローゼはフィルエステルを追いかけるのを諦めて、改めてベンチに座り直した。白猫は満足げに目を細めて、再びアウラローゼの膝の上で丸くなる。


「……この私をベッド扱いしてくれたのは、貴女が初めてよ」


温かく心地よい白猫の背を撫でながら、アウラローゼは呟いた。一国の姫君たる自分相手に、まったくいい度胸をしているレディである。悔しいがかわいい。このままいくらでも撫でていられそうだ。そして、アウラローゼに『初めて』を与えてくれたのは、この白猫ばかりではなく。


「フィル様も、おかしな人ね」


誰に対するものでもなく――敢えていうなれば、自分自身に対して、アウラローゼは小さくひとりごちる。鉄錆姫と世に知られるこの自分を妻にと臨んだフィルエステルの真意を、オルタニアに来てから一か月経過した今もまだ、アウラローゼは理解していない。

ただフィルエステルの甘くとろけるような眼差しは、いつだってアウラローゼを落ち着かなくさせる。どこまでも丁寧に、まるで得難い宝物を扱うかのようにアウラローゼに優しく触れるフィルエステルの手はいつも温かく、やはりいつだってアウラローゼを戸惑わさせる。

こんな感覚は初めてで、どうしていいのか解らなくなって、だから結局彼のことを苦手であると思わざるを得ないのだ。

厄介だわ、と、オルタニアに来てから何度思ったか知れないことを再度思いながら、白猫の柔らかく心地よい毛並みを存分に堪能する。


「聞いたか、鉄錆姫の噂」


だが、不意に耳に入ってきたその単語に、思わずアウラローゼは手を止めた。『鉄錆姫』。それは間違いなく、自分の悪名高き忌み名である。

白猫を見下ろしていた視線を持ち上げ、その視線をそっとフードの下からその単語の出てきた方向へと向ければ、すぐ近くのベンチで、男女数人が寄り集まっているところが目に入った。この近辺に住む平民だろう。彼らは一様に難しい表情を浮かべていた。

一体何を言い出してくれるのだろうか、と、ひっそりと聞き耳を立てるアウラローゼに当然気付くはずもなく、彼らは口々に話し始めた。


「輿入れの際に強盗団に襲われたんだろ。戦と一緒にやってくるなんて、さすが“鉄錆姫”だよなぁ。大丈夫なのかよ」

「その後の顛末を知ってるか? なんでも、鉄錆姫は自ら先陣を切って、襲ってきた奴らを惨殺しまくったらしいぜ。強盗団だけじゃなくて、自分の護衛として連れてきた騎士達も、役立たずだって一人残らずその場で斬り捨てたんだとか」

「ああ嫌だ嫌だ。やっぱり鉄血女王の生まれ変わりは血がお好みなんだねぇ」

「まったくだ。そのまま殺されちまえばよかったにな」

「馬鹿! 滅多なことを言うんじゃないよ」

「だってよぉ、どうせ鉄錆姫は三回死んでも生き返るんだろ? 一回くらいいいじゃねえか。それくらい痛い目を見てもらわなきゃ、俺達の黒鉄王子殿下が、あの鉄錆姫なんかと結婚なんて許せるかよ」

「――そうだな。今は大人しくしているらしいけど、結婚したらまた何かやらかすかもしれないぞ」

「いくら政略結婚とはいえ、鉄錆姫がお相手だなんて、黒鉄王子殿下があまりにもおいたわしいよ」


――――随分とまあ、好き勝手に言ってくれるものである。


アウラローゼが輿入れの際に襲われた事件はと言えば、それこそ一か月前の話だ。まだその話題が出てくるとは驚きである。しかも内容が誇張されまくっている。

自ら先陣を切って斬り合いをしたのは確かに事実であるが、実際にアウラローゼが直接手にかけた襲撃者はいない。護衛であるジェムナグランの騎士達や、途中で助けにやってきたフィルエステル、そして最終的に強盗団を捕らえたオルタニアの騎士達がすべて片付けてくれたのだから。

もちろん、彼らにその責すべてを背負わせるつもりはない。守られた自分もまたその責を背負うべきであるとは理解しているし納得もしている。そう考えれば、彼らの噂もまたあながちすべてが偽りであるとは言えないのだろう。


それに、ジェムナグランでは似たような噂を立てられたことは何度もある。陰で囁かれているはずの噂であったはずなのに、それらは不思議とアウラローゼの耳によく入ってきた。


だから、こんな風に言われることくらいなんてことはない。慣れている。今更傷付くはずがない。それなのに、何故かアウラローゼは、それ以上彼らの話を聞いていられなかった。


すっくと立ちあがると、白猫がその膝から落ち、抗議の鳴き声を上げる。だが構うことなくアウラローゼはそのまま広場から背を向けた。

いつものような高い踵の靴ではなく、低い踵の歩きやすい靴は、どんどんアウラローゼを広場から引き離してくれる。のろのろとした歩みはやがて急ぎ足になり、小走りになり、最終的には駆け足になった。

フードが落ちないように手で押さえながら、アウラローゼは周囲を見向きもせずにひた走る。

余裕も、優雅も、泰然も投げ打って息を切らせながら走っていたアウラローゼの身体に、やがて大きく衝撃が走る。誰かにぶつかったのだと気付いた時にはもう遅く、アウラローゼは思い切り尻餅をついた。


「何すんだ、姉ちゃん」


被っているフードが落ちなかったことに安堵するアウラローゼの頭上から、お世辞にも上品とは言い難い男の声が降ってくる。フードを押さえながら見上げれば、そこにはニヤニヤと笑みを浮かべた男が立っている。鼻に付く酒臭さに、男がかなり酔っ払っていることが窺い知れた。


「あ、ら。ごめんなさい」


これは面倒なことになりそうね、とアウラローゼは内心で舌打ちをする。そしてその予想は生憎のことに間違ってはいなかった。

アウラローゼの謝罪に下卑た笑みを深めた男は、その腕を伸ばし無理矢理アウラローゼを立ち上がらせて引き寄せる。


「謝るだけかよ。ここはちゃーんとお詫びをしてもらわねえとなぁ」

「っ離して!」


間近で嗅ぐ酒の臭いにむせかえりそうになる。剣を持ってきていないことをアウラローゼは悔やんだ。愛用の細剣とまではいかなくても、せめて護身用の懐剣くらいは持ってくるべきだった。ジェムナグランでは肌身離さず何かしらの武器を持ち歩いていたと言うのに、今日に限って何一つ持ち合わせていないことに歯噛みする。

どうやら自分は、オルタニアに来てから、随分と平和ボケしていたらしい。だからだ。だからあんなくだらない噂話で、今まで作り上げてきた硬く高い心の壁に、ひびが入ってしまった。だがそれを認めたくなくて歯を食いしばるアウラローゼを、男はひとけのない裏道へと引きずり込む。

これはまずい、と顔を青ざめさせるアウラローゼのフードに、男の手がかかる。


「こーんな被りもんなんて被って、お高くとまりやがって。たまには俺みたいな奴に奉仕してみろよ」


男の手がそのままフードをはぎ取る。そして露わになったアウラローゼの暗い赤茶色の髪に、男は大きく息を呑んだ。

そのきつい美貌が晒されたアウラローゼは、フンと鼻を鳴らしてその薔薇色の瞳を眇めた。精一杯の強がりだなんてことくらい解っていたが、ここで自らの矜持を折って泣き喚くような真似などできるはずがなかった。酔っ払った男はアウラローゼのそんな胸中には気づいた様子もなく、彼女の花のかんばせを凝視しながらごくりと喉を鳴らす。魅入られたようにアウラローゼを見つめて、その華奢な腕を掴む手に男は力を込めた。


私の美貌がこんなところで仇になるなんて、と内心でほぞを噛みながら、掴まれた腕の痛みにアウラローゼは顔をしかめる。

そんなことには構わず、男はようやく、にやりと下品な笑みを浮かべた。


「こりゃあいい。ちょっと遊ぶだけじゃもったいねぇな」

「……そうね。貴方程度の男を相手に選ぶほど、私は安くないわ。あまりにももったいなさすぎるわね」

「あん? なんだとぉ?」


眉を顰めてアウラローゼを睨み付けてくる男を、アウラローゼはぎろりと男を睨み返した。男はそこで初めてアウラローゼの薔薇色の瞳に気付いたようであった。薔薇色の瞳を持つことが許されている存在は、この世界には二種類しかいない。一つは深き森アルフヘイムに生きる奇跡の種族、エルフ。そして、そのアルフヘイムを内包する国、ジェムナグランの王族だけだ。


酒気で赤らんでいた顔が、傍目にそうと解るほど明らかに、一気に青ざめていく。


「――――ひっ!? ま、まさか……」


男は大きく顔を引き攣らせた。まるで化け物でも前にしたかのようなその表情を、アウラローゼは、よく知っている。故国ジェムナグランでも、このオルタニアでも、幾度となく目にした表情だからだ。

つまらないものを見るかのようなアウラローゼの視線の先で、男がその分厚い唇を恐怖に戦慄かせた。


「て、鉄錆姫……っ!?」

「何をしている?」

「っ!?」


男の悲鳴のような声に続いて割り込んできた穏やかな声に、アウラローゼは肩を震わせた。男に腕を掴まれたまま肩越しに背後を振り向けば、深くフードを被った長身の青年――フィルエステルがそこにいる。


そう、フィルエステルだ。

疑いようもなくそこにいるのは彼であるというのに、アウラローゼは違和感を覚える。先程の声音は、本当に彼のものであったのだろうか。確かに穏やかな声音であったけれど、不思議と固く冷たいものを感じさせる声だった。こんな声を彼が出せたことを、アウラローゼは純粋に驚きを覚える。


硬直しているアウラローゼと男を前にして、フィルエステルはとんっと地を蹴った。

ほんの一足飛びでアウラローゼ達の元にやってきたかと思うと、いつの間にか腰から抜き払っていた護身用の剣を、彼は男に向かって突き付けた。一瞬の出来事だった。

剣の腕にはそれなりに自信があるアウラローゼですら目で追うことも叶わなかった太刀筋に、飲んだくれた男が反応できるはずがない。

瞬き一つで喉笛にひたりと据えられた剣の切っ先に、男はようやくアウラローゼの腕を解放して後退りする。


剣を構えたままアウラローゼを、フィルエステルは片手で軽々と引き寄せて、腕の中に抱き込んだ。

逆らうこともできずにそのままその片腕の中に収まることになったアウラローゼは、そこから見上げた先にあったフィルエステルの表情を見て息を呑んだ。フィルエステルが浮かべていたのは、いつもの穏やかな笑顔ではない。あの優しく甘い表情からは考えられないような、冷たく硬質な無表情だ。


「私の姫君に、何をした?」


温度の無い声は、下手な怒鳴り声よりもよっぽど恐ろしい。アウラローゼはそう思った。そしてそれは男もまた同様であったらしく、悲鳴を上げて男は逃げ出した。遠ざかっていくその背を見つめるフィルエステルの黒蛋白石の瞳に宿る光は、とても冷たい。


もしかして、もしかしなくても、フィルエステルは怒っているのかもしれない。それも、とてつもなく。

遅れ馳せながら、やっとアウラローゼはその結論に思い至る。


男の姿が見えなくなったところで、ようやくフィルエステルはアウラローゼを解放し、剣を鞘に納めた。

そのままじっと黒蛋白石の瞳に見つめられ、アウラローゼはそっと瞳を伏目がちにさせ、両手の指を絡ませ合いながら、ぼそぼそと呟いた。


「……よく、私を追いかけられたわね」


沈黙に耐え切れず、かろうじてそう声を絞り出すと、フィルエステルはその視線を足元へと落とす。


「ブランのおかげだよ。彼女が案内してくれたから」

「ブランが?」


まさかと思いながら、フィルエステルの視線を追いかけて足元を見遣れば、そこには真白い猫がちょこんと鎮座していた。驚きに目を瞠るアウラローゼの足に擦り寄り、白猫はにゃあと鳴く。そしてそのまま優雅な足取りで白猫は去っていった。

呆然とその後ろ姿を見送るアウラローゼの頬に、ふいにフィルエステルの手が伸ばされる。びくりと身体を竦ませるアウラローゼの頬をなぞる手は、驚くほどに優しい。その手に導かれるようにして、気付けば俯かせていた顔を上げてフィルエステルの顔を見上げる。

彼の表情は、怒っている、というものではなかった。その瞳には、ただアウラローゼのことを案じるばかりの光があった。


「ごめん、遅くなって」


気遣いに溢れた声だった。この一か月もの間、幾度となく聞かされてきた、最近になってようやく聞き慣れた声。不本意ながら、聞き慣れてしまった声。

自分はそんな声を向けられるような人間ではないとアウラローゼは思う。冗談ではなかった。何故だか瞳の奥が熱くて仕方が無い。その感覚を振り払うようにして、アウラローゼはきっとフィルエステルを睨み付ける。


「貴方が謝ることじゃないでしょう。勝手にあの広場を離れた私が悪いんじゃない」

「それでも、守ると言っておきながら、君を一人にしたのは私だ」


だから謝らせてほしいのだと主張するフィルエステルに、アウラローゼはぐっと唇を噛み締めた。

この青年を相手にしていると、意地を張っている自分がとんだ大馬鹿者のように思えてくる。自分の立場も理解せずに一人で暴走して、襲われかけて、そして助けられて。アウラローゼはフィルエステルに迷惑しかかけていないというのに、フィルエステルは自身の方が悪いのだときっぱりと言い切る。その潔さこそ、今のアウラローゼに必要なものだ。


「……私こそ、ごめんなさい。勝手なことをして」


できる限り柔らかい言い方になるように苦慮しながら、アウラローゼはそう言った。フィルエステルは、アウラローゼの頬から手を離して頭を振る。謝罪を受け入れるつもりがないのだろうかと不安がアウラローゼの胸を過ぎる。

だが、続いてフィルエステルが口にした台詞は、アウラローゼにとって予想外のものだった。


「謝罪よりも、お礼の方が嬉しいかな」


至極当然のことのようにフィルエステルはようやく、いつものように柔らかく笑った。その笑顔に目を奪われてしまった自分を内心で蹴り飛ばし、アウラローゼは恐る恐る口を開く。


「…………あり、が、とう」

「うん。どういたしまして」


ぎこちなく、小さな声で礼を言うアウラローゼに、フィルエステルは頷く。そしてアウラローゼに再びフードを被らせた彼は、その手で今度はアウラローゼの手を取り、指を絡ませてくる。

所謂『恋人つなぎ』と呼ばれる手のつなぎ方に驚くアウラローゼの手を引いて、フィルエステルは歩き出す。


「君と一緒に行きたい場所があると言っただろう? ちょうどこの近くなんだ」

「だ、だからって、こんな風に手を繋がなくたって……!」

「またはぐれたら大変だもの。もうブランはいないんだよ?」


くすくすと笑み混じりにそう言いながら歩を進めるフィルエステルは、つられて歩くしかないアウラローゼがなんとか手を離そうと奮闘しているのを後目に、ますますその繋ぎ合う手の力を強くする。

先程の男のように遠慮なくアウラローゼに痛みを与えるような力ではないが、だからこそ下手に振りほどくこともできずに、アウラローゼはもう諦めることしかできなかった。


はあ、と大きく溜息を吐いて手を引かれるアウラローゼに、くすくすとフィルエステルはまた笑い、迷いのない足取りで、人気のない道を進む。

大通りのざわめきが遠ざかっていく。石畳の階段を上る最中も、フィルエステルは手を離さなかった。ただ長いドレスの裾を持ち上げるアウラローゼを気遣うようにしながら、彼はゆっくりと階段を上る。


やがて辿り着いた頂上で、フィルエステルはようやくその手を離して、長い階段のせいで息を切らせているアウラローゼの方を振り返り、両腕を広げてみせた。


「ほら、着いた。ここだよ」


目の前に広がる光景に、アウラローゼはただただ見惚れることしかできなかった。

そこは、花々が咲き誇る展望台であった。色とりどりの花々がその美を競い合い、整備された柵の向こうには、オルタニアの城下町が広がっている。

その美しさに、アウラローゼは息を呑んだ。心地よい風がフードを攫い、アウラローゼの髪を乱すが、そんなことに構ってなどいられなかった。

アウラローゼはフィルエステルの横を通り過ぎて、柵に手をかけて城下町を一望する。眼下の城下町は遠く、その喧騒がアウラローゼの耳に届くことはない。ただ青空の下で笑顔で生きる民の姿は見えるような気がした。

無言のままのアウラローゼの横に、フィルエステルが並ぶ。そして彼は、柵に頬杖をついて、身体をもたれかけさせた。


「王室が整備した展望台なんだけれどね、民はなかなかここまで足を運ばないんだ。だから私は一人になりたいときにここに来るようにしているよ。夜は夜で星が綺麗だから、気に入ってくれたのならまた一緒に来よう」

「星が見えるの?」

「そう。見事なものだよ」

「それは素敵ね」


城下町を見下ろしたまま短くアウラローゼは答えた。愛想の欠片もない返事だが、紛れもなくそれはアウラローゼの本音だった。それに気付いているのかいないのかは定かでないが、フィルエステルは気分を害した様子もなく笑うばかりだ。

そうして、どれほどの時間が経過したころか。アウラローゼと一緒になって城下町を見下ろしていたフィルエステルは、ふとアウラローゼの方を見遣った。


「ねえ、アウラ」

「何かしら?」


今度は何を言い出すのだろうとアウラローゼが薔薇色の瞳をフィルエステルに向ければ、彼は柔らかく微笑んだまま小首を傾げてみせた。


「君は、この国をどう思う?」


その問いかけは、予想外の問いかけであった。少なくとも、アウラローゼにとっては。何を言い出すのかと視線で問いかけても、フィルエステルは何も言わない。ただ無言でアウラローゼの答えを待っている。

これは下手なごまかしなど通用しないに違いない。そう結論付けたアウラローゼは、唇に片手を寄せて、しばし考え込む。

このオルタニアで過ごした一か月は、大して長い期間ではない。だが短いとも言い難い期間であることも確かだ。その中で感じたものを思い返してみて、やがてアウラローゼはゆっくりと口を開いた。


「いい国だと思うわ。豊かで、平和で、民には笑顔がある、理想的な国よ」

「なるほど。模範的な答えだね」

「あら、どういう意味?」


何やら引っかかる言い方をしてくるフィルエステルに、アウラローゼは柳眉を顰める。

きつい美貌をますます剣呑なものにするアウラローゼにも、フィルエステルは臆することはなかった。その笑みを消し、真剣な表情で青年は更に続ける。


「私が聞きたいのは、“君にとって”、このオルタニアがどういう国であるかだ」


アウラローゼはますます柳眉を顰め、眉間のしわを深くする。この美貌に余計なしわなど作りたくないというのに、随分と嫌な質問をしてくれるものだと内心で盛大にアウラローゼは舌打ちした。

“アウラローゼ”にとってこのオルタニアがどういう国であるかなんて、そんなこと、初めから決まりきっている。


「ジェムナグランと、そう変わらないわね」


きっと、オルタニアばかりではなく、どこの国に行っても同じことだ。そうアウラローゼは思っている。それは今までもこれからも変わらない見解であるに違いない。アウラローゼにとってばかりではなく、“鉄錆姫”を知る者にとってもまた同じことが言えるはずだ。

どうしてそんな今更のことをこの青年は問いかけてくるのだろう。アウラローゼにその真意を読ませてくれないフィルエステルは、これ以上は答える気など毛頭ないアウラローゼに、更に疑問を投げかけてくる。


「そう。じゃあ、そのジェムナグランは? 君にとってどんな国だった?」

「――――それ、は」


ああ、嫌だ。だからこの青年は苦手なのだ。彼はこうしていつもアウラローゼをあばこうとする。穏やかな声と優しい手で、アウラローゼの隠しておきたいものを引きずり出そうとする。

これが無理矢理の行為であれば、いくらだってアウラローゼは抵抗できるというのに、フィルエステルの態度は、アウラローゼにそれを許してはくれない。気が付けば自然とフィルエステルに差し出してしまいそうになる自分が、アウラローゼは嫌でたまらない。

これ以上あばかれてなるものか。踏み込ませてなるものか。そうして無言になるアウラローゼに、フィルエステルは寂しげにその整った眉尻を下げた。


「ごめん。意地悪な質問だったね」


エステルは手を伸ばし、アウラローゼの先程酔っ払った男に絡まれた一件で乱れ、シニヨンから零れた長い髪を指に絡ませた。そのまま、その香油に艶めく赤茶色の毛先に、フィルエステルはそっと口づけを落とす。反射的にアウラローゼは身を竦ませる。

硬直するアウラローゼは動かない。動けない。そんなアウラローゼにもう一度「ごめん」と謝罪を口にしたフィルエステルは、アウラローゼの手を取った。


「そろそろ帰ろうか。じきに日が暮れる」


どうしてそんなにも寂しそうなのだろう。どうしてそんなにも切なそうなのだろう。その甘く優しげな美貌に浮かべるにはてんで不釣り合いな表情を浮かべるフィルエステルに、アウラローゼは戸惑うばかりだ。


何故貴方がそんな顔をするのよ。

いつもみたいに能天気に笑っていればいいじゃない。

貴方にはきっと、笑顔が一番似合うんだから。


そう不思議と、驚くほど理不尽に腹を立てながら、アウラローゼはフィルエステルに頷きを返した。

そして二人は展望台を後にした。アウラローゼが、フィルエステルの手を拒絶し損ね、王宮に帰るまで手を繋いだままであったことに気付いたのは、王宮で二人の帰りを待っていたユーゼフに、ニヤニヤとからかうように指摘されてからだった。

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