ひどい悪魔のお話し
昔、昔 今よりちょっと昔の話。
あるところに若いお似合いの夫婦がいました。
夫はとても働き者で、力が強く丈夫です。
せっせとせっせと働きます。
妻は優しく賢く、料理がとっても上手です。
二人はとっても仲良しでいつもニコニコ
暮らしていました。
そんな仲良しな二人には、可愛い可愛いぼうやが
一人いました。
ぼうやはとても可愛く、目に入れたって
全然痛くないほどです。
ただ残念な事にぼうやは生まれた時から
体が弱く、病気がちだったのです。
そしてある時、ぼうやはとても重い病気に
かかってしまったのです。
病気はどんどん悪くなり、可愛いぼうやは
明日をも知れぬ状態になってしまいました。
二人は教会に行って、ぼうやが治るのを
神様に祈ります。
「 ああ、神様 どうかお願いです
あの子を助けて下さい 」
夫が必死に祈ります。
「 ああ、神様様お願いです
ぼうやを連れていかないで下さい 」
妻も必死に祈ります。
二人は、大粒の涙を流しながら、ぼうやが治るのを
神様に祈ります。必死に必死に祈ります。
「 嗚呼 もう悪魔だってかまわない!
ぼうやを助けてくれるなら!!」
夫が泣きながら叫びます。
すると突然、大きな男が二人の前に
現れました。
大きな大きなノッポの男 黒いスーツに
手にはステッキ 頭には羽帽子 口にはたくさん髭が
生えてます
「 さっきの言葉は本当かい? 」ノッポの
男が二人に問いかけます。
二人は突然現れたノッポの男にビックリしています。
「 あ、貴方様は一体どなたですか?」夫が
男に問いかけます。
「 さっきにお前に呼ばれたものさ 悪魔だっていいんだろう? 」
ボソボソと薄気味悪い声でノッポの男は喋ります。
悪魔と聞いて、二人はおっかなビックリです。怖くて怖くて
堪りません。
しかし恐る恐る妻が悪魔に聞きます。
「 もしかして、ぼうやを助けてくれるのですか?」
恐々と悪魔に問いかけます。
「 ああ、助けてやるともさ こんなことは朝飯前だ 」
悪魔はいばって答えます。
「 本当ですか? 本当ですか? 」
妻は必死に聞き返します。
「 本当だとも 本当だとも 」 悪魔は真っ赤な口を開いて
ニヤリニヤリと答えます。
「 ではお願いします ぼうやを助けてください 」妻は
悪魔に必死でお願いします。
「 わかった わかった しかしタダではやれないな 」 悪魔は
真っ赤なく口を大きく開いて、ニヤリと笑って言います。
「 わたしの腕でも足でも目でも 好きなところをさしあげます
命だって差し上げます
ぼうやが助かると言うのなら、今すぐにでも構いません」
妻は必死に悪魔に訴えます。
驚いた夫が妻を止めます。
「 妻はぼうやを育てなければなりません 私の方を選んで下さい
私の体のどこだって 命だって構いません 」
夫は妻を必死にかばい、自分の方を奨めます。
二人は互いを守るため、どっちも必死で譲りません。
悪魔は二人を見て、ウンザリした顔で
「 わかったわかった では二人の命ではどうだ?
ただし二人分だから、子供の病気が治るのと
子供が凄く長生きするようにしてやろう これでどうだ?」
悪魔は二人に話しかけます。
二人は必死に考えます。自分たちが死んでしまえば、ぼうやを守り
育てる事ができません。
二人は話し合い、自分達の命よりぼうやの命を選びました。迷ってる
間にもぼうやが死んでしまうと思ったからです。
悪魔に、二人の命を捧げる事を伝えます。
「 わかった ではこの契約書にさっさと名前を書くんだ 」
二人はブルブルと震える手でそれぞれの名前を契約書にサインします。
「 ふむふむ これで間違いないな では子供の命を
助けよう さらばだ! 」
悪魔はそういうと、もの凄い雷の様な音と一緒に消えてしまいました。
そして二人は、その場にパタリと倒れこみました。
朝になり、二人は目を覚まします。お互いの顔をみつめ、辺りを見回します。
地獄でも天国でもありません。どう見ても教会の中です。
「 二人とも死んでない! まさか約束が守られなかったのでは!」
二人はビックリして、ぼうやがいる病院に急ぎます。
するとお医者様と看護婦さんが一杯、ぼうやの居る病室に集まっています。
『 ぼうやになにかあったのでは!? 』 二人はぼうやの
ベッドに駆け寄ります。
「 おお、ご両親を探していました 峠は無事に越えました 」 お医者さまが
喜んだ顔で二人に話しかけます。
「 朝方になったら、まるで嘘の様に元気になってビックリしました
長い事、医者をやってるがこんな事は初めてです 」
お医者様は本当に、ビックリした顔で二人に話します。
「 パパ、ママ!! 」 ぼうやが元気な顔で二人に抱き着きます。
「 ぼうや ぼうや 」 夫と妻は元気になったぼうやを二人で
抱きしめながら、ギューギューっとぼうやを強く抱きしめます。
喜びながら抱きしめます。ぼうやは本当に治っていたのです。
ぼうやが良くなったその夜に、二人はベットで話し合います。
「 やっぱりあの悪魔がぼうやを治してくれたんだわ 」
「 そうだね」
「 でもわたしたちは、いつ死ぬのかしら」
「 そうだね もしかしたら今日かもしれないし、明日かも…」
二人が死ぬのが怖くなりましたが、考えても仕方がありません。
もう契約書にはサインをしてしまったのですから。
あれからぼうやは、悪魔との約束通り病気ひとつせず、元気に育ちました。
そして仲のよい夫婦は、今まで以上に働きました。
いつ悪魔が魂を取りに来てもいいように、悔いが残らないようにと
必死で必死で毎日毎日働きます。そして今まで以上に皆に親切に
したのです。
それから何十年かが過ぎて、二人は年を取りました、ぼうやは立派な大人に
なってお嫁さんと子供もいます。可愛い可愛い孫たちです。
年を取った夫が亡くなる前に妻に言います。
「 お前をひとり残してすまない お前と一緒になれて本当に幸せな人生だった
悪魔が魂をとりにきたなら、私は死んでしまったと伝えてくれ
約束を破って本当にすまないと 」
年をとった妻は夫の手を握りながら
「 わかりました 悪魔が魂を取りにきたなら、私がちゃんと伝えます 」
妻は夫の手を強く強く握りながら、約束します。それから夫はしばらくして
家族や友人、大勢に人に見守られながら死んでしまいました。
夫は本当に大勢の人に好かれていたので、とても立派なお葬式をあげてもらいました。
妻も残念な事に、やっぱりその数年後には亡くなってしまいました。妻もやっぱり大勢の
人に好かれていたので、夫と同じようにとっても立派なお葬式をあげてもらいました。
二人の魂は、結局悪魔に取られる事もなく、行いが大変よかった二人は天国へと
旅立っていったのです。
でもなんで悪魔は、魂を取りにこなかったのでしょう?
それは理由がちゃんとあったのです
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ここは地獄の悪魔の事務所
二人の命を取りに来ると言っていた悪魔が
上司に怒られています。
上司はとってもカンカンです
「 お前は一体、何回同じ間違いをすれば気が済むんだ 名前と一緒に
魂をいつ取りに来るのか、契約書に日付を書けといっただろう!」
悪魔は怒られてションボリした顔で
「 すみません 二人分の魂が取れたと思って、浮かれてしまって
書くのを忘れてしまいました・・・ 」
上司はさらに怒って怒鳴りつけます
「 いいわけなんか聞きたくない 契約する時に日付を書かなければ、
あの二人の魂は取れない! 」
悪魔は、もっと怒られてションボリです。
「 あの二人の魂は、久しぶりの極上の魂だったのに!
こっちは本当に丸損だ!!」
悪魔の上司は顔を真っ赤にして、大声で部下の悪魔を怒鳴りつけます。
「 お前は本当に酷い悪魔だ!!!」
最後まで読んでくださり、ありがとうございました
はじめての童話です 読んでいただけると嬉しいです