入学初日の出来事3(プレートバトル4)
上位能力は、「魔法使い」「精霊使い」「PSI」の総称だ。
この能力を持つものは少なく、能力者全体の一割にも満たない稀少種と云われている。
更にその中で、一番少ないのは「魔法使い」で、魔招来以来、3人しか出現していない。
そして、今の能力者の大半は魔術士になる。
魔法と魔術は同じものと思われているが、実は違う。
魔法は精神力を使い「呪」と「印」を以て事を成す。
魔術はこれに「媒体」を加える事で使える。
媒体となる物に決まりがある訳ではないが、代表的な物として「宝石」や「護符」があげられる。
媒体は「魔術具」と云われ、これを使える者が能力者になるのだ。
上位能力の才能差は、使える術そのものの威力である程度、判断する事が出来るが、魔術は使える魔術具の数で判断される。
また、よほどレアな物でない限り、魔術具その物にランク付けはされていない。
格闘技で云えば「どの格闘技が最強なのか」ではなく「誰が最強なのか」を重視していると云う事なのだ。
「んな事、云ったって、俺が与えられたプレートは間違いなくコレだぞ。大体、上位能力は最強と云う訳じゃないだろ」
カスミの真剣な顔に信じかけたが、能力補正など聞いた事がない。例えあったとしても、何でコイツが知っていると云う疑問が残る。
「上位能力の事は否定しないんだ?」
「とりあえずこの場は味方なんだろ、だったら下手に隠すより知っといてもらった方が、連携を取りやすい」
「それよ、上位能力の件は置いておくとしても、アンタの判断力や胆力は高い。上級生に囲まれているこの状況で、冷静でいられる100プレートなんておかしいでしょ」
そんな事云われても …
「ま、今どうこう云っても仕方ないをだけどね。アンタ、マジで自分の事、過小評価してる馬鹿みたいだから…それに、そろそろアイツ等も水鏡さんがもう戻らないって気付く頃だし、動くわね」
「そうだな…しかし瑞穂が戻らないと云う事は伝えるつもりだったが、気付いてたか」
「当たり前。アンタ、風の探査を何度もしてたでしょ。にも関わらず、魔力感知が出来なかったからね。能力の特定も出来たわ」
…底知れんヤツだな。
魔力感知なんて、落ち着いた環境で結界を張らなければ普通出来ないぞ。
「そして、アンタの能力なら離れている水鏡さんと連絡が取れるでしょ。悪いけどあんな雑魚追いかけて、まだ戻って来ないなんてね」
「流石。だったら、この先の説明は不要だな」
「当然!」
『火炎球』
四方から同時に放たれる魔術。
だが、分かり易い動きだ。
カスミも反応を示し、俺のすぐ側までやってくる。
「風障壁」
俺を中心に風が円を描き舞い上がる。
これは文字通り風の壁を創る防御術だ。
最強の防御力を誇る土障壁には及ばないが、火炎球の4発ごときでどうにか出来る程、柔い術ではない。
「カスミ!後ろ4人」
「りょーかい」
術を解くと同時にカスミに指示を出す。
すると、カスミは手に持つ本をパラパラ開く。
「魔力階段」
そして、創り出した階段を蹴り高く飛ぶ。
本当に凄い…これだけ戦い易いのは、瑞穂と組んで戦った時以来だ。
「風散弾」
体を全回転させ放つ一撃は、火炎球を放った4人を穿ち、更には飛び込んで来ていた2人にもヒットする。
風散弾は、風爆弾を分散させて放つ術なので、威力自体はそれ程高くないが、当たった後弾けると云う特性がある。まともに一発でも食らえば、すぐに戦闘復帰は出来ない。
カスミが宙に跳んだのは、俺がまず倒すであろう敵を特定し、どう倒すかまでを把握しているからこその動きだった。
360度の攻撃は味方を巻き込む為、使いづらい。だが、攻撃範囲に味方がいなければ、自由に使え最大の効果が生まれる。
「後8人!」
カスミを確認すると、空中に留まっていたが2人が創られた階段を使い近付こうとしていた。
だが、これは問題ない。こう云うケースの場合、相手が創ったものを使うのは愚の骨頂だ。
その証拠にカスミの表情に焦りはない。
「土龍昇」
また、本をめくり術を発動させると、カスミが乗っている階段以外の場合に、土がせり上がると階段を破壊しつつ、迫ろとしていた上級生を弾いた。
そして、そのまま地面叩き付けられる。
後6人。
やはりカスミは強い。
瞬時、戦術を立て適切な術を使う。
この程度のレベルの相手なら、2人ぐらい同時にしても何の問題もない。
俺も負けてはいられない。
「飛翔」
風使いの最大の武器は攻撃力ではない。
移動力と云う事を思い知れ!!
次々と倒されていく仲間をみて、浮き足立つ上級生。
俺は飛翔を使い、一気に間合いを詰めると、スピードに乗ったまま、ボディーブローを叩き込む。
「ぐふっ!!」
悶絶して前のめりに倒れる。
後5人!
そう考えた時だった。
ピキっ!と音たてて、時が止まったような錯覚に落ちる。
アイツが来た!
俺は本能的に飛び退き、カスミに向かって翔んだのだった。