表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/63

Skill of Magic 11

 前回来たときは、蜘蛛やら蛭がウヨウヨいた通路だが、今は何もいない綺麗な通路だった。


「そういや、あんときは騒がしかったな」


 赤屋が術をぶっ放し、俺達はそれに着いて行った。その人数は五人… 一人でいる今とは大違いだ。そして、大きな違いがもう一つ。


 鼠が大量にいた地点、第一ポイントと云うべき場所に、5匹の合成獣(キメラ)が待っていた。

 鼠型が3匹に、ゴメラが2匹…… 一人で相手にするしかないのだが、面倒臭い事この上ない。


「時間が勿体無いからな、速効で片付けてやるよ」


 更にあの時と最大の違いは俺の強さだ。

 これは単なる自慢だが今の俺ならこの程度の相手、面倒臭いが敵じゃない。


飛翔(エアレイヴン)


 正面でたむろっている合成獣(キメラ)の中心へ飛び込む。そして瞬時に、風切り(ウインドブレイカー)を閃かせ鼠型を二体屠る。そして、刃が届く範囲ゴメラがいる。


「お前も逝けよ」


 体を翻し、目的としたゴメラの首に刃を当て、削ぎ落とした。これで後二匹。

 残った合成獣(キメラ)は本能で、俺に恐れを抱き、戦意を失っていた。もはや、ほっといても障害にはならない。しかし、


「そんな姿で生き恥晒すのは辛いだろ」


 その生物固有の能力は上回っているのだろうが、進化したとは云い難い。見ているだけで、嫌悪を感じるその姿は生命(いのち)の冒涜だ。


 俺はゴメラの肩に飛び乗り、首筋に刃を落とす。そして、最後の鼠型はその場から逃げ出した。


「外には出す訳にはいかないんだよ」


 合成獣を追い抜き、進行方向に逆らって合刃を振るう。鼠型のスピードはゴメラより速いが、それが仇になる。カウンターで入った刃は、体を二つに分け絶命させた。


「ちっ、いい気分じゃねえな…… 」


 術で倒すのと違い、命を奪った感覚が手応えとして残っている。存在自体があやふやな魔物を斬るより、ずっしりと重く思えた。だが、立ち止まっている訳にはいかない。

 場合によっては、同胞を… 御社を殺るかもしれないのだ。そしてその時、おそらく躊躇ったら殺られるのは俺だ。

 更にその先へ…… 俺は歩を進める。



 ◆



「来たね」


 洞窟の最深部に、御社は二匹のキマイラを両脇に携えて立っていた。


「一体、何匹そんなもん創りだしたんだ? 」

「さあ、失敗作を入れれば100は下らないと思うがね」

「て事は、合成獣(キメラ)を合わせれば、1000以上の生命を玩具にしたって訳だ」

「それがどうかしたかい? 魔物に喰われたものは数千万になる。それに比べたら大した数ではなかろう」


 人がそう考える事が狂ってるって、何故分からないんだ。


「否、だから狂ってるんだろうな…… 」

「狂ってる? 私がかい… 」


 含み笑いをして、御社は狂気の視線を俺に向けた。


「だとしたら、原因は信司にある。つまり、この犠牲は君達の一族が間接的に関わっている、と云う事だね」

「お前の妄想にウチを巻き込むな。ったく、不愉快極まりないな」

「不愉快なのは私だよ。君の存在自体、実に不愉快だ。だから、もう消えてくれ」


 指を鳴らし、二匹のキマイラを俺に差し向ける。


「…… 何か、今更だよな」


 左右同時に襲い掛かってくる。

 そのキマイラ達が俺の眼前まで迫った時、術を放つ。


風の槍(ウインドランス)


 その牙で噛み砕こうとした一匹へ、風の槍(ウインドランス)を食らわせる。だが、外からの攻撃では倒せない。だから、俺はキマイラの口の中へ術を放った。つまり、文字通り食らわせたのだ。

 体内ではキマイラの防御力はないに等しい、風の槍(ウインドランス)は臓器を破壊した。

 そして、もう一匹は〈陽炎〉で切り裂いている。


「これは…… 桁違いに強くなったね」

「お陰様で」

「だが、それは本当の力じゃない」


 油断していた訳じゃない…… 俺の両目は御社の姿を捉えていたはずだ。だが、だったらなんで奴は俺の真横にいる。


「くっ! 」


 瞬時に後ろに飛び退く。

 その動きを見極めた上で、御社は右手を振るった。


「これが力だよ。真人君」


 御社はその右手で、俺の風切り(ウインドブレイカー)を掻き消すと高らかに云う。


「…… どんな冗談だよ、コレ」


 俺の風切り(ウインドブレイカー)は、魔力で集めた風だ。それを消すという事は、魔力そのものを消したという事だ。

 こんな事は星野では絶対に出来ない。


「私の魔法が星野と同じだと思っていたのかい? 」


 余裕の表情で云う。馬鹿にされているのは分かっているが、そんな事は些細に思える。

 俺の中では、威力は違うが、系統は同じだと認識を固めていた。だが、それが根底から覆されそうになっているのだ。


「くくっ、良い顔だ。出来れば信司にその顔をさせたいものだがね」

「有り得ない夢を見るもんじゃねぇよ…… 俺で満足しておけ」


 尤も、俺の表情で満足出来るようなら、こんな狂気に走る事もなかっただろうがな……


「必死に分析しているようだね。では、上を見たまえ、これが答えの一つだよ」


 御社に促されるまま俺は上を見る。


「バ…… かな…… 」


 見上げた先に4つの瞳があった。

 その瞳の持ち主達は、天井に立っていた(、、、、、、、、、、)。そして、微動だしないまま俺を見下ろしている。


「それはね。オリジナルに最も近い魔物の模造品だよ。だから、その強さも君が先程戦った三体より上だ。

 私の切り札の一つさ」


 御社の云う通り、二体いる魔物は一匹は犬型だが、もう一匹は猿型だった。確かに50年前の魔招来(デビルズサモン)で生まれた魔物は、二体で一組とされていた。

 組合せからいっても、オリジナルなるに近いのは分かる。だが……


「召喚出来るはずがない…… 」


 魔物の召喚にはかなりの魔力を使うはずだ。そして、こちらに留めておくにも召喚主の魔力を使い続ける。御社が呼び出した魔物は、既に消滅している。故に、それ以上の魔力消費はないにしても、新たに召喚するほどの魔力があるはずがない。


「その通りだよ。私がこれを呼び出したのではない。この魔物は随分前からここにいるんだよ」


 御社以外…… 随分前…… だと。


「お前っ!! 」

「50年前に、我々が味わった恐怖を少しでも感じてくれれば幸いだ」


 御社がその手を挙げると、猿型の魔物が絶叫をあげた。その声は形容するのが難しいが、その効果は充分理解出来る。


 魔衝撃(デビルズインパクト)とでも呼ぼうか、この声は精神世界(アストラルサイド)から直接肉体にダメージを与える。

 魔力耐性のない普通の人間であるなら、その声を聞いただけで絶命する。


風精霊譲渡(シルフィードギフト)


 それは、ただの直感だった。

 猿型が犬型に命令し、物理攻撃をしようとした瞬間に肉体強化させなければ、取り返しのつかない事になる。そう感じた俺は力の出し渋りを止めた。


 犬型が天井をその四肢で蹴り、俺に攻撃を仕掛ける。


「ちっ! 」


 そのスピードは、先程の魔物とは桁違いだった。奇しくも俺の勘は正しかった訳だが、それは追い込まれた事も同時に照明していた。


 身を捻り犬型の攻撃を交わす。そして、その後追撃出来れば攻略の余地があるが、桁違いの防御力を誇る魔物に小技は通用しない。


 俺がこの魔物を倒せるとしたら、ジンの増幅(ブースト)と魔法精製した風切り(ウインドブレイカー)での一撃しかない。


「ジンっ! 」


 二択の中で、最善の方法と思える選択をする。

 ジンを召喚しつつ、犬型の攻撃を交わしながら距離をとる為に〈爆裂風砲(バーストウインド)〉を放つ。


「主よ、何やら面倒臭い事になったな」


 向こうから全てを見ていたジンは、俺を見ずにそう云った。


「ああ…… だが、万策尽きた訳じゃない。力を貸してくれるな? 」

「云うまでもない。主に尽くすのが忠犬じゃ」


 そうしてジンは、犬の鳴き声を三回あげた。

 その意味は、増幅ブーストの残数を俺に伝えたのだ。


 残り三回で魔物二匹と御社を倒せなければ、俺は無事ではいられない。だから、脳をフル回転させた。

 無事にアイツらの元に帰る。

 今の俺の願いを叶える為に、ただ全力を尽くすのだった。



次回最終話の予定でしたが、1話追加します。

後2話何度も変更すいません。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ