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Skill of Magic 10

 さて、玄関から入るのは芸がある行為と云えるのだろうか…… 俺は、御社の屋敷を見ながら、真剣にそんな事を考えていた。勿論、ギャグやふざけている訳ではない。

 俺が御社の立場だったら、星野に全幅の信頼を寄せて、何もせずにただ茫然と待っているか? と、考えたからだった。


 確かに星野が使った術は、御社がキマイラの頭をぶっ飛ばした時と同じ術だ。あれは、振動により物体を分子レベルで分解させると云った術だろう。

 たった一掻きで、星野の周りの霧を払った事からあの術の本質は理解した。


 魔術では及びつかない力を与えられた星野は、御社にとって仮初めの信頼を得るに足る存在だったが、仮が外れる事はない。それは、星野が使った術が御社のものより、威力が弱かった… 自分より弱い力しか使えない者を信頼しきるはずがないからだ。


 御社なら、星野が負ける事を大前提に置いている。ならば、どうするか… 頼りとなる人物がいなければ、自分が創り出した存在(もの)を番犬代わりに放っているだろう。

 魔物はいくらアイツでもまだ呼べない。となれば…… キマイラ辺りを屋敷に放っているだろうな。


「ちょいと決着をつけてくるな」


 力を使い果たし、木の根を枕に寝ている瑞穂に云う。


「お~、行ってこい…… むにゃ…… 」


 むにゃ… って、随分ベタな寝言だな。

 こんな時だが、笑いが込み上げてきた。


飛翔(エアレイヴン)


 二階の窓に向かって俺は翔ぶ。御社がいる部屋が、何処なのか性格には分からない。だが、前に行った時の事を思い出し、この辺だろうと当たりをつけたのだ。


「強化ガラスはごめんだぞ」


 そう云って、窓ガラスに蹴りを放つ。自分で云うのもなんだが、恐ろしく打点の高い見事なドロップキックだ。これだけ素晴らしい蹴りで、窓ガラスを破壊出来なければ恥ずかしい。


 ガッシャーン!! と、音をたてて飛び散るガラス。その中に身を潜り込ませて、部屋への侵入を成功させた。そして、その直後に俺は更に能力を発動させる。


「〈風切り(ウインドブレイカー)〉からの… 」


 窓に突っ込んだ際、獣の姿を確認していた。それがキマイラなのか、その他の合成獣キメラなのかは、判断出来なくても、何もしなければダメージを食らう。


「陽炎っ! 」


 獣の顎に刃を当てて、一気に力を解放する。

 獣の正体はキマイラだった。だが、俺の風切り(ウインドブレイカー)はいとも簡単にキマイラの顔を割る。

 今まで魔法として行使していた風切り(ウインドブレイカー)だが、亮が自負していた様に最強の魔術具なのだ。それに里美の技が加われば、ノーマルな使い方でも、この程度の事は出来て当然だ。


「ちっ、ハズレか… 」


 その部屋に御社の気配はない。いや、それ以上にここはハズレなのかもしれない。

 屋敷内には蠢く気配は感じるが、人の気配とはまた違うような気がする。〈探索(サーチ)〉を使ってみる事は考えたが、密閉度が高いこの屋敷では、細部まで把握する事は出来ない。


「とりあえず、いつもの部屋に行ってみるか… 」


 廊下に繋がる扉に手を当てて、向こう側の様子を探る。何も考えずに飛び出して、キマイラとばったりなんてことになったら、たまったもんじゃない。

 警戒を怠るような真似はしないが、とりあえずの心配はいらないようである。俺はドアノブを捻ると、なるべく音をたてないようにして部屋を出た。


「えっと、階段があそこだから…… 」


 薄暗い屋敷の中を記憶を頼りに、いつもの部屋の前に立つ。


「んっ…… 」


 重厚な扉の向こうに感じる違和感… それは、人の気配ようであるがどこか違う、警戒心を高める何かだ。

 どんな小さな動きも見逃さないように、俺は扉を開ける。


 窓がないその部屋は闇に満ちていた。月明かりの欠片もない漆黒、暗闇に目が慣れていた俺ですら何も見えない。それでも、何かいるのが分かる。


「言葉が通じる存在か? 」


 闇の中にいる存在に俺は語りかける。何もいなければ、単なる間抜けな行為だが、どうせ誰も見ていないのだから躊躇う必要もない。


「…… ああ、通じるぜ」


 そして、その闇から答えがあった。


「そっか、じゃあ何でお前がここにいるのか、答えてくれるな…… 亮」


 闇の中にいる金縫 亮に向かって、俺は問いを投げつける。すると、今までなかった気配がそこに生まれる。


「敵として待っていた…… それが一番納得する答えか? 」

「否、そりゃ最も納得いかないな」

「そっか、そりぁ困ったな」


 頬をぽりぽり掻きながら、そう云う亮はいつもの亮だった。


「困る事なんかないだろ。お前は二つ答えればいいだけだ。御社の居所とお前の目的をな」

「理事長の居場所はしらん、俺の目的は内緒だ。これでいいか」


 とことんふざけている奴だ。結局のところ話すつもりはないのだろうが、ほっといていいとも思えない。


「体に聞いた方が良いみたいだな」

「いや~、俺にはその趣味はないな。どっちかと云えば攻める方が…… 」

「〈空弾(エアバレット)〉。悪いが、ツッコんでやる余裕なんてないんでな」


 亮の頬をかすめて、俺の空弾(エアバレット)が後方の壁を穿った。


「ったく、冗談ぐらい受け止めろよな。分かったよ、俺が分かる範囲で教えてやる。

 理事長だが、随分前に屋敷を出ていったぜ。何処に行ったかは分からんが、これだけ屋敷に化けもんを放って行ったんだ。予想はつくだろう? 」


 なるほど、ラスボスらしく振る舞うって事か……


「で、お前はあの時の会話にしっかりと聞き耳をだててたみたいだな。めんどい事には関わらないんじゃなかったのか? 」

「ちゃー、ヤッパばれたか…… まあ、今だって、そんな変わってないんだがな。だが、魔術具を超える魔法具の情報があるかもと思えば黙ってられないだろ」


 今までのように、全面的に信じる事は出来ないが、コイツが魔術具バカなのは疑いようがない。つまり、亮がここにいる理由はまさにそうなんだろう。

 ただ、コイツがここまで無事に辿り着いた理由も、気配を感じなかった理由も分からないし、話す気もないようだった。


「まあ、お互い人間だ隠し事の一つや二つあるだろ。それを踏まえた上で、今後付き合っていくかは、神城が決めればいい」

「そうだな、お前の探求心でコイツは随分使えるもんになってるしな。親友から友人に格下げはするが、それもいいだろ」


 魔法によって生み出した刃にも耐える能力。それを持った腕輪を眺め俺は云った。


「たは~、厳しいな」


 亮はいつも通りだ。その顔を見てると、いつか腹を割って話せると思える。だから、縛るものは無くす。


「世の中そんなもんだろ。それで、探しものはあったのか? ま、何を探してたか聞かんがな」

「否、何を探してたかは云わんが無かった。だから、俺にはまだお前が必要みたいだ。居なくなるんじゃねぇぞ」


 その後、亮はまだ探しものがあると云って屋敷に残り、俺は見送られ瑞穂の元に戻ってきた。


 決着を着けられなかったが、御社はキマイラの洞窟にいる。それが分かっただけでも充分な収穫だ。そしてもう一つ、俺の風切り(ウインドブレイカー)は最大出力で使っても壊れる代物ではないと、作成者からお墨付きを貰った。ただ、

(使えばお前がどうなるか保証は出来ない)

 そんな有りがたくない言葉も一緒にだったが……

 それでも、使わなければならなければ使う覚悟はある。


 俺は瑞穂の顔を眺めて翔ぶ。歩いて5分の場所なら、1分掛からずに着く。本当の終わりはもうすぐに迫っていた。



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