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Skill of Magic 1

 召喚球サモンオーブが震動を始める。

 御社は云ったこれは疑似であると。だが、生まれる存在(もの)は間違いなく魔物だ。そして、これを御社が創ったと云う事は、魔招来(デビルズサモン)以来、生まれていた魔物は御社が創っていたと考えられる。

 理由は簡単だ。

 人が魔物の恐怖を忘れない為、能力者の存在意義を無くさない為だ。だが、その為にこれを創り出したのなら、やはり御社は狂っていると云わざるを負えない。


「御社を潰す」


 俺の言葉に、カスミと里美は頷く。


「でも真人君。その前これを何とかしなきゃね」


 あの圭さんが震えていた。魔物を見た事がある瑞穂と同じ様に…


「そうですね」

「じゃあ真人君が、リーダーね。これが動く前にフォーメーションの指示を出しなさい」


 圭さんがリーダーを務めるのが一番適任だと、俺は思っている。しかし、皆の視線が俺に向かっている。あの速水でさえ俺の言葉を待っていた。


「ここから生まれる魔物の強さは、今の俺には分かりません。だから、俺と圭さんが各一匹、残った人で後一匹の対応をお願いします」

「結構、大胆な戦法ね。平均的な分配を考えないのは何で? 」


 一人で魔物の相手をさせられる圭さんなら、当然の疑問だった。


「理由は簡単ですよ。俺はあのお二人の力を知らない。だから、速水… さんの力を基準にしました。

 戦いの基本は各固撃破ですが、今回はそれが出来ない」

「逃がす訳にはいかないものね」

「ええ、その通りです。だから、戦力を集中させました。俺と圭さんの役目は時間稼ぎです。主戦力は飽くまでも、俺と圭さん以外です。一匹を倒したらすぐに、圭さんのフォローに回って下さい」


 時間稼ぎだけなら、圭さん以外にも出来るかもしれない。そうすれば、主戦力の強化は目に見えるが、俺は全員のレベルを速水に設定している。つまり、俺と圭さん以外では時間稼ぎも厳しいと踏んでいるのだ。

 過小評価と云われれば、そうかもしれないが、圭さんが本能で恐怖を感じている様に、俺の本能もこの選択は間違いないと感じている。


「真人君。主戦力が魔物倒した後、私のフォローに回るのであれば、君に掛かる負担は私以上になるのよ。それでもいいの? 」

「俺の事は気にしないで下さい」

「真人は一人で魔物を倒すつもりですよ。赤屋先輩」

「ですわね。そんな目をしてますもの」


 会話に割り込んでくるカスミと里美。そして、その言葉に瑞穂以外の全員が驚いている。


「そんな無茶な事… 」

「無茶じゃないと思います。真人は倒すつもりでやるだけですから、それでも本当に倒してしまうかもしれません。

 コイツたまにとんでもない事するんです。そんな時はいつもこんな顔してますから」


 絶句する圭さんに、瑞穂が宣言する。


「… 信じられない。オネーサン吃驚だわ。こんな美少女三人も手込めにするなんて、鬼畜だわ」

「な、何を言ってるんですか、突然」


 圭さんの発言に、三人は顔を真っ赤して沈黙している。頼むから、何か云ってくれ。俺はまだ何もしていない。


「あーあ、その真人君への愛を少しでも、愚弟に注いでくれればいいのに… 」

『それはない』

「ですわ」

「だよね~、はぁ」


 息ぴたりと声を合わせる三人に、あっさり理解を示す圭さん… 赤屋、ほんとに不憫だな。


「馬鹿話はその辺でいいだろ。すまんが、俺達にはこれ以上ついていけん」


 心底あきれ顔をしている速水と二年の二人。


「あまり時間もないんだろ? だったら、こちらの能力ぐらいは確認しておかなければ、連携がとれないだろう」

「あ、それでしたら、カスミさんにお任せしていただければ、問題ありませんわ」

「学年三位〈風の歌(ソングオブウインド)御影響子みかげきょうこさんと、同二位〈統治者の支配領域(ルーラシップエリア)不動稔侍ふどうねんじさんですよね。速水先輩は今更ですね」


 里美に促され、カスミはあっさりと二人の名前を挙げる。本当に何処から情報を仕入れてくるのやら…


「君は? 」


 自分の名前を挙げられて、がっちりとした体格の不動先輩は、カスミに話し掛ける。


「私は本多カスミです。不動先輩の事は姉から… 聞いてます」

「そうか、本多先輩の… では、君が〈千の本を管理する者(サウザントノベル)〉か、これは頼もしいな」


 カスミは、姉を御社に潰されたと云っていた。不動先輩はその姉さんの知り合いなのか。


「何ですか、その二つ名は? 」

「本多先輩がよく自慢していたよ。私の妹は凄い、名付けて〈千の本を管理する者(サウザントノベル)〉なのよってな」

「姉さま… 」

「もっと先輩の話をしたいところだが、また今度にしよう。圭が単独で動く今回は、君が全体指示を出すんだ。出来るな? 」


 不動さんは、俺が思っていたスタイルをカスミに伝える。カスミの精神感応(テレパシー)なら、全員がどのように動きたいのか手に取るように分かる。そして、カスミの指揮能力は俺が知っている。


「皆さんの2つ目の能力(セカンドスキル)を教えて下さい」


 それは、無言の了承だった。カスミは、不動さんの問いに答えずに確認に入る。


「俺は符術〈金剛〉を使う。そして御影は… 」

「一寸、不動。私の能力をあんたが簡単に答えないでよ。自分で云うわ、それが礼儀でしょ」


 なるほど、速水が4位にいる理由がよく分かる。間違いなくこの二人も逸材だ。

 御影さんの言葉は、指揮下に入る事を意味する。カスミの事を知る不動さんは兎も角、良く分からない者に従うのは、並みの決断ではない。だが、今何をする事が大切なのかを一瞬で判断し、即座に行動に移せる力は尊敬に値する。


「私の二つ目の能力(セカンドスキル)は、治療(リカバー)よ」


 指環をカスミに見せながら、御影さんは云う。


 魔術〈治療(リカバー)〉は、瑞穂の清流回帰アクアヒーリングの魔術版だ。効果は全く同じで、外傷のみの快復だが、出力は精霊術の方が上と云った代物である。一方、不動さんの〈金剛〉は攻撃力アップ。里美の〈神速〉と同系の符術である。


「では、御影さんの二つ目の能力(セカンドスキル)での攻撃力アップはないと云う事ですね」


 カスミの言葉は、受け取り方によっては侮辱になる。しかし、御影さんはあっさりと受け入れる。


「そうね。でも攻撃力ダウンは減らせるわ。それに前線に立つ為の攻撃は、この風が補ってくれる」


 風使い(ウインドマスター)か、御影さんの一つ目の能力(ファーストスキル)は、俺と同じのようだ。これなら、カスミも立案し易いだろう。


「はい、分かってます。これに不動さんの念動力テレキネシスがあれば… 」


 カスミはしばし思案した後、俺と向き合った。


「真人、作戦修正を提案するわ」

「聞こう」

「基本は今までと変わらない。けど、真人か赤屋先輩が負傷した場合の対策に、瑞穂を付けてもらう。そして、治療の必要が発生した場合は、残った方が二匹を相手にしてもらう。

 これが一番確実性があるでしょ」


 確かに、御影さんに回復能力があるなら、瑞穂の代わりをする事は可能だ。しかし、


「御影さんが回復に回ったら、二人分の戦力ダウンになるんだぞ、それでもいいのか? 」

「あら、真人さん。赤屋さんの事は信用するのに、私達の事は信用してくれませんの。悲しいですわね。真人さんが命令してくれれば、魔物の一匹や二匹滅殺してやりますわ」


 滅殺って… ったく、里美らしい。


「だったら、とっと片付けてこっちのフォローを頼む」


 結局折れるのは、いつも俺だ。コイツらには勝てない。その事を改めて理解した。


「時間ね。真人君、準備はいい? 」

「いつでも」

「久しぶりに炎姫の舞いを見せてあげるわ」


 召喚球(サモンオーブ)の震動が止まり、殻が破られる。いよいよ待った無しになったようだ。そして、ある意味初めて本当の戦いが開戦した。


 

最終章を開始しました。

結構キツキツでやっていますが、何とか最後まで書き上げますので、是非最後までお付き合い下さい。


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