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御社の真実

「御社ー! 」


 学園のトップに対して、やっと16歳になったばかりのガキが大声で呼びつける。そこには目上に対する礼儀など欠片もない。

 御社は、お付きの二人に声を掛けると、一緒に近寄ってくる。そして、それを見た瑞穂達も急いで俺の元へ集まってきた。


「まさか召喚術を身に付けるとはね」


 御社は然したる感慨も持たない様子で云い放つ。その様子から、自分の真意を隠すつもりはもうないらしい。


「俺は神城 信司の孫だぜ。お前の教え子でもない。だから、これだけ力を引き出せた」


 だから、俺も明確な敵対意思を全面に出す。俺とコイツは敵なのだ。



『御社は目的を見失っているようだ。もし、修正が出来ないようなら、お前が潰せ』


 じいちゃんが、ここに入る直前に俺に云った言葉だった。目的を見失っている… その意味するところは、すぐには分からなかった。だが、御社と会って話を聞いている内に、段々と理解してきた。

 御社の目的は『魔招来(デビルズサモン)』クラスの魔物に対抗出来る能力者を育てる事。元は確かにそれだったのだろう。しかし、それが何かに変貌を遂げた。

 では、何に遂げたのか… 暫く、想像する事も出来なかったが、ここに来てそれが分かったのだ。


「御社さん。アンタじゃ、神城信司は越えられないよ。つまり、アンタの従者じゃ俺は潰せない」

「ほぉ、三年の一位と二位を目の前にして、そんな事を云えるのかい? 幾ら召喚術を身に付けたと云っても、この二人とやり合うのは、分が悪いと思うがね」


 ずいっと、三年の二人が前に出る。この二人の能力が未知数な上、御社の能力もはっきり分かっていない。確かに不利である事は否めない。


「それに君は兎も角、お友達はどうかな? ここで集団戦(パーティバトル)宣言をすれば、全員巻き込まれる事になるよ」


 このっ! ギンと御社を睨みつける。仲間を傷つけると聞けば黙ってはいられない。


「理事長、あまり私達を甘く見ないで下さいと、以前申し上げたはずですが」


 里美は俺を制して、小太刀を抜きながら前に出る。そしてもう一人、


「アンタには、姉様を壊された怨みがあるのよ。仇が討てるチャンスなら、私も黙っていられないわ。何が君の姉さんから聞いているよ。アンタから姉様の事を聞くと本当に虫酸が走る」


 あの時、カスミが汗を流して黙り込んだ本当の理由は、これだったのか…


「俺は特にないけど、ダチに手を出すなら遠くから、全力で神城を応援するぜ」

「俺は姉さんを護るだけだ。神城はどうでもいい」


 …… 取り合えずお前らは黙ってろ。マジで気が抜けるから。


「私は最初から何も変わりません。ただ真人をフォローする為だけにここにいますから」


 瑞穂は星野の治療しながらそう云う。参ったな… ここに来てコイツの誇りが何なのか、分かっちまった。


 ったく、コイツらみんなアホだ。皆して半年で理事長に喧嘩売るなんてな。


「友情ね~いいわ~、オネーサンそう云うの大好きよ♪

 理事長ここで集団戦(パーティバトル)宣言をするなら、私を含む二年4位まで、一年に協力しますわ。

 経験豊富な先輩と云えど、このメンバー相手に二人で対抗するのは、少々骨が折れるのではなくて」

「赤屋 圭君か。君が動くなんて、一体どんな風の吹き回しだい? 」

「可愛い弟子がピンチなら、動くのが師匠の役目ですから… それに、アナタの目的に疑問が生じましたの。神城信司を越えられないとはどう云う意味ですか? 」


 圭さんはそう云うと、俺の横に並びウインクを一つした。


「正直に云えよ御社。お前はもう魔物なんて、どうでもいいんだろ? 」

「真人君、何故そう思うんだい? 」

「質問を質問で返すと怒られますよ。俺は回りくどい質問をしている訳じゃない。Yes or Noで答えられるはずです」


 後ろで速水が苦い顔をしているだろうが、御社は多分それ以上の顔をしている。


「いいだろう答えてやる。その通り、私は魔物などもはやどうでもいいと思っているよ。でも、それは私の所為ではない。全ては神城信司が根源なのだよ」


 ゆっくりと御社は語り出す、自分は落ち着いているつもりなんだろう。しかし、この場にいる全ての者は感じていたはずだ。この御社来栖と云う男に生まれている狂気を… そして、この狂気が生まれた理由を今、御社は話そうとしていた。


「あの男はな、魔物が人を蹂躙している時に見て見ぬふりをしていたのだよ」

「あら、それはおかしいわ。神城信司は、魔物と対峙して生き残った初めての人間のはずです。だから、理事長も面識がもてたはずですよね」


 圭さんの言葉に、御社はフンと鼻を鳴らして下卑た目を向ける。


「お気楽な事だ。では、聞くがお前達の長である神城信司が、本当に魔物より弱いと思っているのか。

 アイツはな、人が死ぬのを承知の上で、魔物を見逃していたんだよ」

「馬鹿云え、そんな事をして何になる」


 有り得ない、あのジジイは非常識なところは沢山あるが、命の重みは知っているヤツだ。


「今のこの状況を見ても気付かないのか。アイツはな、お前ら能力者が表舞台に立てるように、計らっていたんだ。

 俺はそれにまんまと乗せられたと云う訳さ。全くもって不愉快な話だよ。

 だから、俺は決めた。あの男を超える能力者を創り、ただ利用されただけではないと証明するとな」

「お前の勝手な思い込みで、振り回される方はたまったもんじゃねぇな


 そうだ、ジジイがそんな事を考えていたなんて、証明はない。全部、御社の想像の域を出ない話だ。


「思い込み? くっくく、これはいい。ヤツの後継者がこんな間抜けとはな。あの当時、私が次々と能力者の家系に行きつき、そして協力を得られたのは、信司が動いていたからだ。そうでなければ、迫害を受ける異能力者が、表舞台に立つはずがないのだ。

 私が幾ら保護をすると云っても、おいそれ協力など出来るはずがないだろう」


 確かに御社の話は、一本筋が通っているように感じる。あのジジイは、俺達能力者の為に普通の人を犠牲にしたと云うのか…


「信司の陰は見え隠れしていたが、俺はそれでもいいと考えていた。アイツが協力してくれているのは、俺を信用しての事だと思っていたからな。

 だが、時間が経てば見えてくる。アイツの実力が魔物を遥かに凌駕している事に気付いた。今ではあの魔物を用意したのはアイツじゃないかとさえ、思っている」


 コイツは正論の中に、被害妄想が入り混じっている。その曖昧さが狂気を生んでいるようだ。


「真人君… 私は君が嫌いなんだよ。私を利用し、唯一高みから私を見下す男の孫がね。

 本当は早々に退場してもらうつもりだったが、何の因果か君は魔法の能力をもっていた。その能力を調べる事が出来ればと考え、泳がしていたが、君は何の役にも立たなかった」


 ふざけんなよ。そんなのただの逆恨みじゃねえか。俺とジジイを重ねて、勝手にコンプレックスを抱いているだけだ。


「だから、考えたんだよ。君がとことん私に逆らうのであるなら、君に協力する者全てを消してしまおうとね。

 だが、君は本当に困った男だよ。一年だけでなく、二年の上位も味方に引き込むとは思わなかった。お陰で予定がまた狂ってしまった。

 最早、普通の駒だけじゃ、君達を消せないんでね。とっておきを出す事にするよ」


 御社の瞳から、完全に光が消失したような錯覚を覚えた。この感覚はマズい、何かをしようとしたら、体を張ってでも阻止しなければならない。だが、この覚悟だけでは足りなかった。何かをしようとしたらではなく、今すぐに止めなければならなかったのだ。


 ニヤリと笑った御社が指を鳴らすと、三つの球体が表れた。


「これは… 」

「擬似召喚球(サモンオーブ)だよ。生まれてくる存在(もの)に説明は不要だろ。そして、もう羽化を止める事は出来ない。例え私を倒してもね。

 君達はここで羽化を待って、魔物を倒さねばこの学園内にいる全ての者が死ぬ事になる」


 学園の人間全てを人質にしたと云う事か。


「正義の味方として、消えてくれ。願わくは相討ちになってくれる事を祈っているよ」


 御社と三年の二人は、講堂の方向へ歩いて行く。何も出来ないのは、悔しいが今は魔物との戦いに備えないといけない。


「赤屋、亮、悪いが星野を連れて校舎まで退いてくれ」


 俺の頼みに赤屋は反論しようとしたが、圭さんの一睨みで大人しく従う。


 戦闘開始まで、もうそれほど時間は残されていないようだった。

 

次から最終章に入ります。

なるべく早い更新をしたいとおもいますが、一寸不定期になるかもしれません。是非長い目でお付き合いください。

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