お茶会
俺は思う。人は一人の時があるからこそ、優しくなれるのだと…
つまり孤独は寂しい、だから誰かと共にいたい。共にいるならば、思い遣りは絶対条件である。
だが、孤独を求めている時さそれを得られない俺が、傍若無人に振る舞う奴等に優しくなれる道理はあるだろうか?
ここは一つガツンと…
「だから、何で俺の部屋に集まる?」
ベットの上から動けない俺が云える訳ない。
「日和ったわね」
と、カスミ。
「日和ったな」
と、亮。
「情けないですわ」
と、里美。
「あ、それポン」
と、瑞穂…って、お前だけなんか違うぞ。
キマイラの一件後、俺は瑞穂達に連れられて病院に行った。医者や看護士達からは、退院そうそうまたかと云う顔をされたが、それは俺の所為ではない。
前回も今回も、全部あの化物の仕業なのだ。
診断結果は、肩甲骨骨折で全治2ヶ月。全身の痛みは、能力の使い過ぎとの事だった。だがそれは、あくまでも表向きの診断だ。
確かに能力の使い過ぎでなる症状ではあるが、未熟者とは云え、流石に自分の限界ラインは把握している。どう考えても、限界を超えての能力使用はしていない。それでも使い過ぎと云うのなら、それは精神世界への転移が影響しているのだろう。
また骨折にしても、あの一撃で一切動けなくなったのだから、通常の骨折など有り得ない。下手をすれば、粉砕骨折までいっていた可能性があった。それが、通常の骨折なら回復したのだと云う事だ。
まあ、医者にそんな事分かるはずもないのだから、打倒な診断だと云える。しかし、骨折と疲労なら入院しなくても良いと言ったのは、間違いだったと俺は言いたい。
だってそうだろ、誰だって基本は入院なんぞしたくはない。しなくても良いと言われれば帰宅を選ぶ。その結果がこれだった。
瑞穂、カスミに加え、何故か里美まで、俺の部屋に居座り「お茶会」と称して、女性三人で喋り続けていた。だが、さっきまでは俺も疲れていたから、すぐに寝てしまった為、それでも良かった。しかし、目が覚めてみると、いつの間にか亮までがいて、麻雀をしている。
何故、麻雀?と云う、ツッコミをする気力はもうなく、しばらくの間様子を見ていたが、一向に収まる感はなく、しかも盛り上がってもいない。ただ惰性で、打ち続けていた。
怪我人がいる部屋で何やってんだコイツ等…その思考に俺が至った時、冒頭の展開になった。
「しかし、もうちょい面白いツッコミを期待してたのに、お前にはガッカリだよ」
「あ、それロンですわ」
「なっ!」
里美に振り込み絶句する亮。ざまぁ、お前なんて穴の毛まで、抜かれてしまえ。
「えっと、これで半荘終了ね」
ニヤリと、カスミは亮を見据える。なんか微妙に顔が、劇画調になっているような気がするのだが…何だこれ…
「云うまでもないけど、ダントツでドベは金縫君よ。分かっているわよね」
「う、ううぅ~」
まさか、某麻雀漫画のように生死を掛けた何かを…
「じゃ、これ、宜しく~♪」
卓の上に置かれる、本と指環と呪符。
ですよね~。おそらく魔術具の調整を賭けていたのだろう。
「あのすいません。これ全部となると、時間と予算が…」
「敗者が雄弁に物を語るものではありませんわ」
「初めに確認したしね。あ、そうそう真人のもあるから、よろしくね」
泣きながら救済処置を求める亮。しかし、里美と瑞穂があっさりと拒否する。
う~む、どうやら本当に穴の毛まで抜かれたみたいだな。実際、魔術具の調整には相当なお金が掛かるらしい。前回、カスミが亮に調整費を払っていたのを見たが、結構な金額を支払っていた。
学園内に格安で調整してくれるところはあるが、授業の一環で行っている為、上位プレート持ちは専門家に依頼する。
流石にこれは…一寸だけ、亮に同情してしまう。
ところで…まさかとは思うが、
「カスミ、ちょっとこっちへ来てくれないか?」
「な、何でよ」
コイツどもりよった。
「いいから来い」
渋々と、寄ってくるカスミ。
「お前やっただろ?」
ぼそりと、カスミに耳打ちする。
「てへっ♪」
舌を出し、可愛く誤魔化そうとする。
「お前な…」
「けど、瑞穂も里美も共犯だからね」
コイツ等、鬼だな…カスミに思考を読まれたら、亮に勝ち目があるはずもない。だがしかし、
「ぐっじょぶ、カスミ。俺の腕輪を頼む」
くっくく、亮よ。テメーは調子に乗り過ぎた。いっぺん地獄を見るがいい。
「クスっ、お主も悪よのぅ」
「いやいや、カスミ様程では…」
何だこの会話…自分から乗って何だが、ツッコミを入れてしまう。
「おーい、金縫。これもだって~♪明日の朝までしか待たないからね。そっこーで宜しく~」
「腕輪、指環、本、呪符を明日の朝まで…って、死ぬ。マジで死ぬぞ」
卓に突っ伏しながら、亮は駄々を捏ねる。
「金縫さん、早く始めてくださいね。ここで待つのにも限界がありますから…我慢の限界を超えると、私…」
小太刀を抜き身にして微笑む。
「は、はい、只今!!」
怖っ、やっぱこの女怖い。亮は号泣しながらも、せっせと魔術具の調整を始めた。
ん、だが待てよ。今、聞き捨てならない事言わなかったか?確か、ここで待つとか…
「さて、皆さん。真人さんも目覚めましたし、そろそろ始めましょうか」
里美の一言で、亮を除く全員が俺の周りに集まる。
「ナニスルツモリナノデスカ」
不穏な空気を感じる。
「何って、お茶会よ。真人の話をお菓子にね」
あれー、瑞穂さん。目がマジなのですが…
「悪いけど真人、今回は誤魔化し無しよ。アレも使うからそのつもりでいて」
カスミもか…こりゃ、本気だな。
「ふぅ、で、何から話せばいい?」
「まず、真人さんに何が起こったのか。ですわね」
何れにしても、御社のあの力を見た以上、隠しておく事は出来ない。結局、最後は御社の力の見解が議題になるだろう。
適当な答えを云っていいが、カスミが心を読んでいる。どっちにしてもバレるなら、全てを話してしまった方がいい。
◆
「つまり、魔法使いになる為には、精神世界に住まう存在と接触する必要がある。でも、魔法使いの素質がなければなれないって事よね」
魔術に精通しているカスミが、やはり一番理解しているらしい。
「ああ、俺の契約精霊によれば、そう云う事らしいぞ」
「でも、そうすると精霊使いは、契約時に精神世界との接触はしていると思われますが、真人さんが魔法に目覚めのはもっと後ですよね」
里美の意見はもっともだ。しかし、その件については俺なりの見解がある。
「予想の域は出ないが、おそらく肉体接触が必要なのだと思う」
実際に魔法を使うのは、肉体なのだからこれに間違いはないはずだ。
「じゃあ、私も魔法使いになれる可能性があるのね」
瑞穂がそう云うと、カスミと里美は視線を外した。分かっているのだ。この可能性に伴う危険性の大きさを。
「否、その考えは捨てるんだな」
「何でよ?」
「まず、精神世界の存在と肉体接触をもてる可能性は低い。そして、接触をもてたとしても十中八九死ぬ」
瑞穂もその恐ろしさを知っている。だから、それ以上の追求はしてこない。
「そうですね。私達が魔法を身に付ける可能性は排除すべきです。でも、理事長なら僅かな可能性でもあれば、犠牲を厭わないのでは?」
「ああ、それは俺もそう思う。だから、これに繋がる話は一切しない。幸い、二ヶ月の猶予があるし、何とかなると思う」
そう、この二ヶ月の間に、出せる情報を精査していかなければならない。
「そんな簡単な話なの?私は今、真人の話を聞いて、あのジジイが見せた能力が魔法じゃないかと思ってるわ。そうなると、ある程度の予測はしているはずよ」
「そうだな、俺もアレは魔法だと思ってる。だが、どの状況で魔法が目覚めるかは分かっていないはずだ。勿論、仮定の一つには入っているとは思うがな」
だからこそ、その仮定に繋がるような事は一切云えないのだ。
「なるほどですわ。とすると、私達はこの事は知らない方が良かったですわね。知らなかった事にして話せば、必ず何処かで綻びが生じます」
「だな。だから、お前達にはある処置を施そうと思ってる」
「それに危険は?」
カスミがそう聞くと云う事は、コイツ精神感応を使っていないと云う事だった。
使うと宣言したくせにやってくれる。
「危険はない」
「そ、なら私はいいわよ」
「私も異存ありませんわ」
二人はあっさりと了承した。そして瑞穂は、
「アレをすればいいのね。条件は?」
自分の仕事をはっきり理解していた。
「そうだな、じゃ…」
「なんじゃこりゃぁあああ~」
条件を伝える前に、亮が絶叫をあげた。
「こらぁ、神城っ!テメー壊すなって言っただろうが!!」
は?何の事だ。
「俺の腕輪~」
どうやら、あの一撃で壊れたらしい…確かに、魔法を乗せて使ったみたいだから…壊れても不思議はない。
「あはっ…やっちゃったの?」
「ふざけんなよ。弁償しろよ…腕輪ぁ~」
マジ泣きしながら、亮は俺に詰め寄る。
「分かった、弁償する。だから、新しくモノくれ」
「あるかっ!このアホ~」
その後、亮を宥め、何とか新しい腕輪を作って貰うよう説得した。ただ、女性陣は自分の魔術具の調整に、更なる時間が掛かる事を知って、亮を責めたおした。
イカサマしておいて、容赦ねぇ…
そんなこんなで、夜通し全員が帰る事なく、朝日が昇るまで居座ったのだった。




