表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/63

お茶会

 俺は思う。人は一人の時があるからこそ、優しくなれるのだと…

 つまり孤独は寂しい、だから誰かと共にいたい。共にいるならば、思い遣りは絶対条件である。

 だが、孤独を求めている時さそれを得られない俺が、傍若無人に振る舞う奴等に優しくなれる道理はあるだろうか?

 ここは一つガツンと…


「だから、何で俺の部屋に集まる?」


 ベットの上から動けない俺が云える訳ない。


「日和ったわね」

 と、カスミ。

「日和ったな」

 と、亮。

「情けないですわ」

 と、里美。

「あ、それポン」

 と、瑞穂…って、お前だけなんか違うぞ。


 キマイラの一件後、俺は瑞穂達に連れられて病院に行った。医者や看護士達からは、退院そうそうまたかと云う顔をされたが、それは俺の所為ではない。

 前回も今回も、全部あの化物の仕業なのだ。


 診断結果は、肩甲骨骨折で全治2ヶ月。全身の痛みは、能力の使い過ぎとの事だった。だがそれは、あくまでも表向きの診断だ。

 確かに能力の使い過ぎでなる症状ではあるが、未熟者とは云え、流石に自分の限界ラインは把握している。どう考えても、限界を超えての能力使用はしていない。それでも使い過ぎと云うのなら、それは精神世界への転移が影響しているのだろう。

 また骨折にしても、あの一撃で一切動けなくなったのだから、通常の骨折など有り得ない。下手をすれば、粉砕骨折までいっていた可能性があった。それが、通常の骨折なら回復したのだと云う事だ。

 まあ、医者にそんな事分かるはずもないのだから、打倒な診断だと云える。しかし、骨折と疲労なら入院しなくても良いと言ったのは、間違いだったと俺は言いたい。


 だってそうだろ、誰だって基本は入院なんぞしたくはない。しなくても良いと言われれば帰宅を選ぶ。その結果がこれだった。


 瑞穂、カスミに加え、何故か里美まで、俺の部屋に居座り「お茶会」と称して、女性三人で喋り続けていた。だが、さっきまでは俺も疲れていたから、すぐに寝てしまった為、それでも良かった。しかし、目が覚めてみると、いつの間にか亮までがいて、麻雀をしている。


 何故、麻雀?と云う、ツッコミをする気力はもうなく、しばらくの間様子を見ていたが、一向に収まる感はなく、しかも盛り上がってもいない。ただ惰性で、打ち続けていた。


 怪我人がいる部屋で何やってんだコイツ等…その思考に俺が至った時、冒頭の展開になった。


「しかし、もうちょい面白いツッコミを期待してたのに、お前にはガッカリだよ」

「あ、それロンですわ」

「なっ!」


 里美に振り込み絶句する亮。ざまぁ、お前なんて穴の毛まで、抜かれてしまえ。


「えっと、これで半荘(ハンチャン)終了ね」


 ニヤリと、カスミは亮を見据える。なんか微妙に顔が、劇画調になっているような気がするのだが…何だこれ…


「云うまでもないけど、ダントツでドベは金縫君よ。分かっているわよね」

「う、ううぅ~」


 まさか、某麻雀漫画のように生死を掛けた何かを…


「じゃ、これ、宜しく~♪」

 卓の上に置かれる、本と指環と呪符。


 ですよね~。おそらく魔術具の調整を賭けていたのだろう。


「あのすいません。これ全部となると、時間と予算が…」

「敗者が雄弁に物を語るものではありませんわ」

「初めに確認したしね。あ、そうそう真人のもあるから、よろしくね」


 泣きながら救済処置を求める亮。しかし、里美と瑞穂があっさりと拒否する。


 う~む、どうやら本当に穴の毛まで抜かれたみたいだな。実際、魔術具の調整には相当なお金が掛かるらしい。前回、カスミが亮に調整費を払っていたのを見たが、結構な金額を支払っていた。

 学園内に格安で調整してくれるところはあるが、授業の一環で行っている為、上位プレート持ちは専門家に依頼する。

 流石にこれは…一寸だけ、亮に同情してしまう。

 

 ところで…まさかとは思うが、

「カスミ、ちょっとこっちへ来てくれないか?」

「な、何でよ」

 コイツどもりよった。

「いいから来い」

 渋々と、寄ってくるカスミ。


「お前やっただろ?」

 ぼそりと、カスミに耳打ちする。

「てへっ♪」

 舌を出し、可愛く誤魔化そうとする。


「お前な…」

「けど、瑞穂も里美も共犯だからね」


 コイツ等、鬼だな…カスミに思考を読まれたら、亮に勝ち目があるはずもない。だがしかし、

「ぐっじょぶ、カスミ。俺の腕輪を頼む」


 くっくく、亮よ。テメーは調子に乗り過ぎた。いっぺん地獄を見るがいい。


「クスっ、お主も悪よのぅ」

「いやいや、カスミ様程では…」


 何だこの会話…自分から乗って何だが、ツッコミを入れてしまう。


「おーい、金縫。これもだって~♪明日の朝までしか待たないからね。そっこーで宜しく~」

「腕輪、指環、本、呪符を明日の朝まで…って、死ぬ。マジで死ぬぞ」


 卓に突っ伏しながら、亮は駄々を捏ねる。


「金縫さん、早く始めてくださいね。ここで待つのにも限界がありますから…我慢の限界を超えると、私…」


 小太刀を抜き身にして微笑む。

「は、はい、只今!!」

 怖っ、やっぱこのひと怖い。亮は号泣しながらも、せっせと魔術具の調整を始めた。

 ん、だが待てよ。今、聞き捨てならない事言わなかったか?確か、ここで待つとか…


「さて、皆さん。真人さんも目覚めましたし、そろそろ始めましょうか」


 里美の一言で、亮を除く全員が俺の周りに集まる。


「ナニスルツモリナノデスカ」

 不穏な空気を感じる。


「何って、お茶会よ。真人の話をお菓子にね」


 あれー、瑞穂さん。目がマジなのですが…


「悪いけど真人、今回は誤魔化し無しよ。アレも使うからそのつもりでいて」


 カスミもか…こりゃ、本気(マジ)だな。


「ふぅ、で、何から話せばいい?」

「まず、真人さんに何が起こったのか。ですわね」


 何れにしても、御社のあの力を見た以上、隠しておく事は出来ない。結局、最後は御社の力の見解が議題になるだろう。

 適当な答えを云っていいが、カスミが心を読んでいる。どっちにしてもバレるなら、全てを話してしまった方がいい。


 ◆


「つまり、魔法使い(マジックマスター)になる為には、精神世界(アストラルサイド)に住まう存在と接触する必要がある。でも、魔法使いの素質がなければなれないって事よね」


 魔術に精通しているカスミが、やはり一番理解しているらしい。


「ああ、俺の契約精霊によれば、そう云う事らしいぞ」

「でも、そうすると精霊使い(エレメントマスター)は、契約時に精神世界との接触はしていると思われますが、真人さんが魔法に目覚めのはもっと後ですよね」


 里美の意見はもっともだ。しかし、その件については俺なりの見解がある。


「予想の域は出ないが、おそらく肉体接触が必要なのだと思う」


 実際に魔法を使うのは、肉体なのだからこれに間違いはないはずだ。


「じゃあ、私も魔法使いになれる可能性があるのね」


 瑞穂がそう云うと、カスミと里美は視線を外した。分かっているのだ。この可能性に伴う危険性の大きさを。


「否、その考えは捨てるんだな」

「何でよ?」

「まず、精神世界の存在と肉体接触をもてる可能性は低い。そして、接触をもてたとしても十中八九死ぬ」


 瑞穂もその恐ろしさを知っている。だから、それ以上の追求はしてこない。


「そうですね。私達が魔法を身に付ける可能性は排除すべきです。でも、理事長なら僅かな可能性でもあれば、犠牲を厭わ(いとわ)ないのでは?」

「ああ、それは俺もそう思う。だから、これに繋がる話は一切しない。幸い、二ヶ月の猶予があるし、何とかなると思う」


 そう、この二ヶ月の間に、出せる情報を精査していかなければならない。


「そんな簡単な話なの?私は今、真人の話を聞いて、あのジジイが見せた能力が魔法じゃないかと思ってるわ。そうなると、ある程度の予測はしているはずよ」

「そうだな、俺もアレは魔法だと思ってる。だが、どの状況で魔法が目覚めるかは分かっていないはずだ。勿論、仮定の一つには入っているとは思うがな」


 だからこそ、その仮定に繋がるような事は一切云えないのだ。


「なるほどですわ。とすると、私達はこの事は知らない方が良かったですわね。知らなかった事にして話せば、必ず何処かで綻びが生じます」

「だな。だから、お前達にはある処置を施そうと思ってる」

「それに危険(リスク)は?」


 カスミがそう聞くと云う事は、コイツ精神感応(テレパシー)を使っていないと云う事だった。

 使うと宣言したくせにやってくれる。


「危険はない」

「そ、なら私はいいわよ」

「私も異存ありませんわ」


 二人はあっさりと了承した。そして瑞穂は、

「アレをすればいいのね。条件は?」


 自分の仕事をはっきり理解していた。


「そうだな、じゃ…」

「なんじゃこりゃぁあああ~」


 条件を伝える前に、亮が絶叫をあげた。


「こらぁ、神城っ!テメー壊すなって言っただろうが!!」


 は?何の事だ。


「俺の腕輪~」


 どうやら、あの一撃で壊れたらしい…確かに、魔法を乗せて使ったみたいだから…壊れても不思議はない。


「あはっ…やっちゃったの?」

「ふざけんなよ。弁償しろよ…腕輪ぁ~」


 マジ泣きしながら、亮は俺に詰め寄る。


「分かった、弁償する。だから、新しくモノくれ」

「あるかっ!このアホ~」


 その後、亮を宥め、何とか新しい腕輪を作って貰うよう説得した。ただ、女性陣は自分の魔術具の調整に、更なる時間が掛かる事を知って、亮を責めたおした。

 イカサマしておいて、容赦ねぇ…


 そんなこんなで、夜通し全員が帰る事なく、朝日が昇るまで居座ったのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ