合成獣9
「困りました…」
表情から、どの程度困っているのか分からないが、里美はキマイラと接触した後、すぐに戻ってそう報告した。
「困ってるのは俺も同じだ。で、何に困ってる?」
「近接戦闘は無理そうですわ」
おいおい…そりゃ、万事休すって事じゃ…
「だっ、里美!」
「ええ」
キマイラが放つ火炎の吐息を何とか避ける。
思えば初めからジリ貧だった。
キマイラの初撃の火炎球を何とか交わした後、俺と里美は二人で直接攻撃を行った、スピードなら俺や里美が遅れを取るはずがない…と、思っていた。
ところが、コイツはとんでもないヤツだった。
神速付きの里美と、ほぼ同じスピードで動き、パワーは合成獣並…はっきり云って面食らった。
里美は達人級の体術で、キマイラの攻撃をやり過ごし、俺は飛翔のスピードが上回っていたので、何とか態勢を立て直す事が出来た。だが、中間距離まで離れると、コイツは深追いせずに、火炎球と火炎の吐息の連打をしてくる。
瑞穂とカスミが近くにいる時は、術で何とか防いでもらえるが、離れている時は避けないと、一方的な攻撃を食らう。
ならば長距離からと、攻撃をすると、悉く交わされてしまい意味がない。
挙げ句、危険を覚悟で接近戦を里美が挑んでくれたが、ソッコウで戻ってきた。
「因みに聞くが、何故、接近戦は無理だと?」
「刃が通らないんですの。合成獣の時は少しづつでもダメージを与えられたので、まだやる価値はありましたが…」
なるほど…これはいよいよもって、退散を考えた方がいいな。
「瑞穂、キマイラの初撃地点で水流障壁。一端退く」
ここまでの経過の中で、俺は1つの結論を出していた。
キマイラはあの区画からは出て来ない。
それが、調整なのか調教なのかは分からないが、間違いない。ボスキャラが居るべき場所から、離れるゲームなどあり得えない。御社がゲームをしている感覚でいる以上、原則を外れるような事はないはずだ。
一方で、ボスから逃げる事が出来ないRPGは多いが、100%逃げられないと云う訳ではない。そして、キマイラの行動…中間距離まで離れると深追いせずに、火炎系の攻撃に切り換えるのは俺の考えを肯定していた。
「今だ!」
瑞穂が指示位置に立ったのを確認して、一斉退避の指示を出す。
全員が瑞穂に寄っていくのを確認したキマイラは、
火炎球を吐き出す。
「水流障壁」
やはり火炎系にはとことん強い。瑞穂はあっさりと炎を弾く。
「全員、後20M後退!!」
「何なのアレはっ!」
開口一番、カスミは叫んだ。
「そうですね。どの距離でもダメージを与えられない。速度も力も桁外れ…反則ですわ」
「真人?」
三人が俺の顔を見る。
「この中で、キマイラにダメージを与えられるヤツはいるか?」
俺の質問に皆、手を上げる。
やはり隠し球はあると云う事か…だが、質問を「倒せるヤツはいるか?」に切り換えれば、全員がNOになる。
「やっぱりアレしかないか…」
「何かありますのですね」
里美の言葉に俺は頷く。
「キマイラの倒し方と云えば1つでしょ」
「キマイラの倒し方…って、あんな事出来る訳ないじゃない」
俺の案にカスミは気付いたようだ。
「かなり危険だが、勝算はあるさ」
俺は瑞穂の指環を見ながら、作戦を皆に伝えたのだった。




