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合成獣8

御社が、俺達を監視しているのは分かっていた。


あのネズミの大群がいた場所で、焦げた天井を見た時、煙の動きがおかしい事に気付いた。

原因は、巧妙に隠したとは云えないカメラだった。


もっと、見つかりにくい隠し方はあったはずだが、それをしなかったのは別にバレても良いという事なのだろう。


つまり、見つかるのも御社の計算の内なのだ。


大ネズミをスルーした事、赤屋を帰した事も、御社にしてみれば些細な事、結局は掌の上から逃げ切れていない。


だったらコレも計算してるのだろ?


風弾(エアバレット)


パキっ!硝子の割れる音がする。

あ~壊れたな。でも、弁償しろとは云わないだろ?


「何、無駄な事してんのよ…」

カスミがぼそりとツッコむ。


「ささやかな反抗かな?」

「小さいですわ、真人さん」


言わないで里美さん…


「そんなセコい事してるなら、アレ何とかしなさいよ。完全にやっちまった状態じゃない」

「そうですね。あの合成獣ゴメラより、厄介となると、水鏡さんの力が必要になるでしょうね。それであのままなのだと…」


ホレ早く!と云う様に俺を追い払う。

まあ、確かに俺の所為ではあるのだが…


俺が赤屋にした判断、それは間違っていない。だが、本人を納得させようと行った手法は、明らかに間違っていた。

繰り返す様だが、俺は赤屋が嫌いだ。だから、納得させる方法に恐怖を使った訳だが…


人が人を思う気持ちは際限がない。それが好意であれ、敵意であれ変わらない。注意しなければ、過ぎた感情を持ってしまう。だから、瑞穂は俺を止めた。嫌いが、嫌悪に憎悪に変わる事がないように…


瑞穂に一切の非はない。にも、関わらずコイツは自分がやり過ぎたとヘコんでいる。


「なぁ、アレは完全に俺が悪かったって…」

「でも、赤屋君が着いて来ないようにするには、まだ足りなかったかもしれないし…」


こうなると、瑞穂はなかなか納得しない。普段ならその内、勝手に立ち直るのだか…


「否、赤屋にそれだけの根性があったとは思えない。お前はすぐ行動するくせに、たまに変なトコで考え込むよな」

「今後の課題かな」

「違いねぇ…けど、今回のお前は間違っちゃいないよ。止めてくれてありがとな」


俺は瑞穂に謝ったが、礼を述べてない事を思い出し、礼を云うと瑞穂の表情が変わる。

そういやそうだな。謝罪より感謝の方が思いが伝わり易いに決まってる。


「ねぇ、まだ~」


ナイスタイミングで割り込んでくるカスミ。何故かジト目で不機嫌だった。


「あらあら、ウフフ…」


里美は笑っていたが、表情の起伏が少ないのでどのような笑いなのか、計りようがなかった。


「ところでさ、この先にもっと凄い合成獣(キメラ)がいるって、前提で進んでいるけど、それって間違いないの?」


一段落した後、俺達は先に進んでいたが、カスミから当然と云える質問が出た。


「ああ、それか。多分、間違いないな。RPGの基本は、ダンジョンの最深部にラスボスがいるもんだ。まだ先があるのに、あそこで終わりはあり得ないよ」

「あーるぴーじーって、何ですの?」

「Role Playing Gameの略ですよ。頭文字を取ってRPG。私も内容までは知らないんですけど」


俺の変わりに瑞穂が答える。やはり、この三人はゲームの知識が乏しいらしい。


「内容は問題ないさ。ただそう云うルールがあると理解してくれればな」

「今一、分かりづらいですね。でも、あるルールにに従ってこの状況が作られていて、そのルールではまだ終わりではない。そう云う事でよろしいのでしょうか?」


O.Kと指で輪を作ると、里美は納得したようだった。


そして、徐々に道が広くなってきている。どうやら、ゴールは近いようだ。


「でもさ、最後の合成獣(キメラ)って、どんなのかな?まさか、ライオンの頭に山羊の胴体みたいな姿だったりして…って、どうしたの?」


カスミは、全員の顔が青ざめるのを見て驚いている。


「カスミ…何で変な事言うのよ」

「今、言うべき事じゃありませんね」

「何、何で私責められてるの?」


状況を飲めないカスミは、半べそをかいている。


「お約束だな…このフラグが立たない事を期待するよ」

頭を抱えて、俺は天に祈った。



「マジですか…」


そこは間違いなく洞窟の終点だった。

この先の道は見えない。その上、真ん中に居座る一匹の獣。

ライオンの頭を持ち、尾は蛇、体は山羊とは思えないが、全身バネのように筋肉が隆起している。

そして、今までと決定的に違うのは、バランスの良さだ。失敗策などと云えない。


「キマイラですか…これは、明らかに本多さんの失策ですわ」

「わたしっ!私の所為なの」


アホなやり取りはどうでもいいわっ!

こうなれば、伝説のように火を吐かないでくれる事を祈るのみだ。


「グルルゥ~」

キマイラの喉が鳴る。俺達の存在に気付いたようで、顔を上げた。


ヤバイ!!それは直感だった。


「散れっ!」


とっさに出た一言で、全員が一斉に跳ぶ。

直後、俺達がいた場所から火柱が上がる。


マジかよ。思うだけでもフラグは立つのか…

ゆっくりと近づいてくるキマイラを見ながら、俺はそんな事を考えていた。



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