合成獣7
「さて…」
俺は、瑞穂に治療されている、赤屋に向かって行く。
「おいコラ、ヘタれ。お前もう帰れ」
死者に鞭打つ行為に等しかったが、これ以上コイツに居られるのは、迷惑以外の何物でもなかった。
「ん、だと…」
怒りの表情をするが、やはり始めの頃の自信や気概をその目から、感じる事が出来ない。
既にコイツは負け犬に成り下がっている。この先着いてこられては、他の者に被害が及ぶ。
「んじゃ、聞くがさっきのゴリラ以上の敵がいて、お前やれるのか?」
「…」
「だろうな」
そこに居る全ての人間が口を閉ざしていた。
「はっきり言ってやる。この先、さっき合成獣以上の合成獣が必ず居るぞ。そんなもん相手にお前が居たら、必ず誰かが被害を受ける。さっきの里美のようにな」
「うるせーぞ、このクソカスがぁー!」
痛いところを突かれ激昂した赤屋は、瑞穂の治療を中断し、俺の顔を鷲掴みにした。
「テメーは焼き殺してやる」
チリチリと俺の髪が焼ける。だが、俺は赤屋の腕を払うつもりはなかった。
「やるならやれよ」
感情の起伏を抑えて言う。そして、赤屋の心臓辺りに手を当てた。
「お前の炎が俺を焼くのが早いか、俺の風がお前の心臓を貫くのが早いか、勝負してみるか?」
「なっ!!」
「出来ないよな、テメーは今計算しただろ?そして、勝てないと思っちまった。俺がお前なら、余計な事なんて考えないで、まずこうしてる」
ピンっと指を弾き、風の弾丸を赤屋の胸に叩き込む。
「がっ!!」
胸を抑えて膝を地面につける赤屋。俺はそこに追い討ちを掛ける。
「ぶっ!」
赤屋の顎に蹴りを入れたのだ。そして、
「いいか、相手が反撃出来る状況で、脅すのは愚の骨頂だ。脅しは相手の自由を奪ってからするんだよ」
大の字になっている赤屋の髪を掴み、その目を見る。
「ひっ!!」
最後に残っていた自尊心を完全に奪い取る。俺はそのつもりだった。だが、瑞穂は俺の腕を掴み捻りあげる。
「何のつもりだ?」
「やり過ぎよ。これ以上やるなら、私が相手になる」
瑞穂の目は真剣だった。俺がこれ以上、赤屋に手を出せば全力で掛かってくるだろう。
「ふぅ~、分かったよ…」
俺が力を抜くと、瑞穂は腕の忌ましめを解いた。
「真人、どんなに正しい事をしていても、やり過ぎれば正しくなくなっちゃうんだよ。アンタもそれは分かってるでしょ」
「そうだな…すまね」
瑞穂は答えずに、赤屋の頭を膝の上に乗せた。
「清流回帰」
右手を赤屋の顎に充てて、治療を施す。
「お前…」
「勘違いしないでね。私はアンタが大っ嫌い、けど怪我したままほっとけないでしょ」
そうコイツはこういうヤツだ。甘いかもしれないがそれでいい。
「妬ける?」
「なっ!!」
大いなる大菩薩の心境で、瑞穂を見ていた俺に、何を勘違いしたのか、カスミが茶々を入れてきた。
「瑞穂は俺のもんじゃぁーって、叫んできたら」
「あら、真人さんと水鏡さんはそう云うご関係ですの?」
そこに参戦する里美。
「クッツキそうでクッツイテない、そんな感じ」
「むむむ、では私は愛人2号で…」
何を仰有ってるんでしょ、この人…
「はっ、ちょっと2号って…」
「1号」
カスミを指して、里美は言う。
「何でそうなるのよっ!」
藪から出てきた蛇の存在に気づくカスミ。
重くなりかけた空気が一気に緩くなった瞬間だった。
一応、この章は後3話を予定してます。
是非、見ていって下さい。
(2話から変更しました。)




