合成獣5
左の道へ進んだ俺達は、歩いてすぐにネズミがこちらへ逃げた理由を知った。
「あれは…」
瑞穂は信じられないと云う表情だ。
「合成獣ね。けど…」
大型犬程の大きさで、アリクイのような爪を持つネズミを見ながら、カスミは言葉を濁した。
「失敗作だな」
体の大きさと手足のバランスが、どう見ても悪い。
瞬間ならそれなりの強さがあるだろうが、時間を稼げば勝手に自滅する。
「うん、でも失敗じゃないかもしれない」
「え、何でそう思うの?」
瑞穂の質問にカスミはコホンと咳を1つする。
「元々、あんなふざけた合成は出来ないからね。それを可能性にしてるのは、魔術なのよ。私は専門じゃないから詳しくはないけど、魔術強化していれば、失敗作にならない」
なるほど、確かに元々が非常識なのだ。常識がそのまま通用すると考えない方がいい。
「でも、どちらにしても、倒さないといけないんだよね。真人どうする?このまま、ここに居てもラチが明かないわよ」
瑞穂の言葉に少し考えてみる。幸いあの合成獣は領域に入らなければ、襲ってはこないようだ。
御社はボスを倒せばクリアだと言った。
つまり、あの敵を倒さなければならないと云う事だ。
だが、何か違和感を感じる…
そもそも、アレをラスボスだと思うのだ。
二択の道を選択し、その道の先にいた合成獣だからか?
御社はこれをダンジョンRPGだと言った。
これはアイツにとってゲームなのだ。では、RPGのパターンから考えれば、ラスボスは最終地点にいるものじゃないのか。
「そうか…」
やられたな…俺は奥歯をギリっと鳴らした。
「瑞穂、カスミ、ここはスルーするぞ」
「へっ?どういう事」
「そうよ、アレを倒すのが目的なんでしょ」
瑞穂とカスミは、何も分かっていないようだ。もっとも、ゲームという概念から遠い二人だ。それも仕方ないだろう。
「あの合成獣の後ろを見てみろよ。奥に進む道があるだろ」
二人は言われるがまま、視線を合成獣の後ろに向ける。
「確かにあるわね。でも、それが何?」
「RPGってそういうものなんだ」
カスミの質問に、俺はそう答えた。
「だから、右の道へ戻る。少し急ぐから先に行くぞ」
「ちょっと、真人」
「カスミを水流疾走に乗せて、なるべく早く追い付いてほしい。飛翔」
説明は不充分だったかもしれないが、少しでも早く辿り着くべきだと思った。
地面スレスレを高速で翔ぶ。そのままスピードを緩めずに、目的地に向けひた走った。
道が拓けた時、俺の目に里美に襲い掛かる、赤屋もどき…もとい、ゴリラもどきが映った。
アレなら遠慮はいらないな。
俺は、スピードそのままに態勢だけを変えて、ゴリラもどきの顔面に、蹴りを放った。
「神城さん」
里美は俺の名前を呼んだが、どう答えるべきか分からない。どうやら、俺も焦っていたようだ。
こうなると、言える事は少ない。
「待たせたかな?」
何故に疑問形になるかな…まったくしまらん。
ただ間に合った、それだけは誇れる気がした。




