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合成獣3

「如何致しますか、神城さん」

左右に別れた道の前で、里美が俺聞いてきた。

「待てよ、山辺。何でそんなカスに聞く?」

ピクっ!!

コメカミの辺りの血管が震えているのが分かる。

速水辺りにアホ、カス呼ばわりされるなら、まだ納得…うん、ムカつくけど、納得出来る。

アイツの強さは俺も認めているし、連携が必要な時には、文句を云いながらも協力をするだろう。

しかし、コイツは違う。一人で暴走した挙げ句、ピンチになったら、迷わず命乞いするタイプだ。


そんな奴にカス扱いされて、ムカつかない奴がいようか…否、いない。

もともと俺は、直情型の多い炎使い(フレイムマスター)はあまり好きではないのだ。


「何故とはおかしな事を聞くのですね。今日の私達の役目は、神城さんの協力のはずですが…」

「けっ、だからって、コイツの指示に従う必要はねーだろうが」

あくまでも冷静に事を進める里美に、折れる気のない赤屋。ったく、妥協と云う言葉をしらんのかコイツは…


「真人、どうするの?」

瑞穂が俺に解決策を求めてくる。だが、俺にどうしろと云うのだ。相手が俺を完全に拒否している以上、何を云っても逆効果になる。


「ほんっ、とに馬鹿ね」

カスミに関してはもう匙を投げてるし…


まあ、確かにこのままという訳には行かないのも事実だ。ここにいる生物はおかしい、虫は攻撃的過ぎるし、ネズミにしては意思を持って先への道を塞いでいた。

こうなると、誰かの指揮下にいると考えるべきだろう。そして、そんな事をする奴は一人しかいない。


「なぁ、俺の指示じゃなきゃいいのか?」

「あぁ!!」

睨み合っている…里美は涼しい顔をしているのだが…二人の間に俺は割り込んだ。


「だから、お前は指揮者(リーダー)が俺なのが気に入らないんだろ?だったら他のヤツに指示を出してもらう」

ここで赤屋に発言させてはダメだ。コイツは俺の言葉は、どんな正論でも反発する。だから、俺以外のヤツに正論を云ってもらう。

これでも理解できないようなら、居るだけ邪魔だ。


「山辺、俺は左に行くべきだと考える。退散したネズミは一匹も右に逃げなかった。これが根拠だ。後の判断はお前に任せる」

「私に振りますか…」

一瞬、きょとんとしたが、すぐに思案に戻る。

この中で一番高い序列を持つ里美が正論を云えば、赤屋とはいえ考えるだろう。


俺が炎使い(フレイムマスター)を嫌いな理由は、考えられる能力を持ちながら、考える事を拒否している輩が多いからだ。

こんな風に誘導しなければ、いけないのは実に不合理でめんどくさい。


「…そうですね。神城さんの云う通りだと思いますわ。確実ではありませんが、ネズミがそちらに行くという事は、この先に安全地帯がある可能性が高いと云う事ですもの、となれば正解のルートである確率は右より高くなります」


里美の言葉に、赤屋を除く全員が頷く。

赤屋はチッと舌打つが、仕方がないというような素振りを見せる。


「では、先に進みましょう」

里美の先導で左に進もうとした時、赤屋は走り出し右の道へ、一人入って行く。

「これ以上、お前ら一緒にいられるか!!」

捨て台詞は小物のソレだ。


「チッ、あの馬鹿!!」

ほっとけばいいのに、この時の俺は何故か赤屋を追い掛けようとした。だが、

「お待ちなさい!」

「山辺?」

里美の一言で、俺の足が止まる。


「はぁ~、やはりこうなりましたか…けど神城さん。貴方、彼を追うつもりですか?」

里美の閉じているかのような目が開くと、心臓を鷲掴みされたような感覚を覚える…

美人だとは思っていたが、それほど印象強く残っていた訳ではない。

その理由が瞳にあったのだ。

開いているのか分からないような糸目で、絶えず微笑を浮かべている。これまでの里美の印象はそんな感じだった。

だが、瞳を開いた里美は兎に角美しい、そして冷たい。


「神城さん、ここで右に行く事の意味を分かってますか?貴方は、私に決定権を譲渡した。そして、舌の根も乾かぬ内に反古しようとしているのですよ」

「すまん」

里美の云う事はもっともだ。

赤屋を説き伏せようと画策して、里美を利用した。その結果がコレだ。

俺は赤屋を心配した訳ではなく、自分の思い通りにならなかった事に対して反応したのだ。

これでは利用された、里美が不快に思うのも当然だった。


「良かったです」

里美は開いていた瞳を閉じるとそう云った。

「さっきまでの神城さんは、理事長と何も変わりませんでしたよ。でも、すぐに自分の非を認める事が出来た。それは美徳です。あの人には出来ない事でしょう」

「山辺…」

「今回だけは特別に、赤屋さんは私が追います。間違っている可能性が高いのに、全員で行くのは不合理です。それに私の決定に背いた、あの愚か者に鉄槌を落とさねばなりません。うふふふ…」

何処から取り出したのか、小太刀を手に含み笑いをする。


ひぃ~マジ怖いんですけど…

瑞穂もカスミも青ざめた顔で、そっぽを向いている。


「取り敢えず行き先が詰まったら、お互いに戻るようにしましょう。進める限りは進んで下さい」

里美はそう云い、静静と歩き出す。


「山辺、もし行き先で勝てないと思う相手にであったら、手を出さないでくれ…これはお願いだ」

「畏まりましたわ。でも勝てると思ったら…」

またも、小太刀を取り出し刃を舐める。

「だぁ~、それもう無し!!怖いから」

「そうですか、少し残念ですわ」


里美は右の通路へ消えて行った。

「さて、ここからはいつものメンバーだな。行くか

「うん」

「ええ」


俺達は左の道へ向かい、歩き出した。





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