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合成獣2

「さて、これはどうすかねぇ~」

先行していた赤屋が、拓けた場所に出たところで立ち止まり、そう呟いた。


この洞窟に入っていきなり、やたら攻撃的な蛭や蜘蛛がうようよいる道を通ってきた今、多少の事では驚かない自信がある。

あの虫を見た瞬間、私の売りは『冷静(クール)』です。と、云わんばかりの里美ですら、引いてたからな…


幸いだったのが、赤屋が炎使い(フレイムマスター)だという事だ。

俺の風や瑞穂の水では洞窟という性質上、吹き飛ばしたり、洗い流したりする事は憚れる。

何故?と思う人がいたら想像してみてほしい。この先が行き止まりになっていて、何か、例えばボタンなどを押さないと進めない構造だとしたら…

風で吹き飛ばした虫が行き止まり地点にウヨウヨ…、水で流したら行き場を無くした水がリバースし、その中には…

考えただけで恐ろしい…

つまり、赤屋が居なければ、虫を小技でちまちま倒して行かないといけなかったのだ。


赤屋は馬鹿っぽいので「めんどくせぇ~」等と宣わって、いきなり大技を使うかもと、心配したが流石にそれはなかった。

さっきのように、効果範囲をコントロール出来る術で、虫を焼き払っていた。とはいえ、総合攻撃力が断トツに高い炎使い(フレイムマスター)である。余波だけでも、かなりの熱量がある。そこで俺が風の幕で四人を包み、瑞穂がその上に水の幕を重ねる事で熱を完全にシャットアウトした。


熱源である赤屋は、流石に熱には強い。

周辺の温度はかなり高温になっていると思われるが、汗一つかいていなかった。

その様を見て、ふと『河豚の毒で河豚が死ぬのか』という疑問あった事を思い出す。

否、ホントに他意はない。ただ思い出しただけだ。一応、結論を云えば『河豚は自分で作り出す程度の毒では死なないが、外から投与されれば死ぬ』らしい。


そんな下らない事を考えていると、赤屋の立ち位置まで歩きついた。

なるほど、赤屋がどうするか悩んでいた理由がこれか…


拓けた場所から先、道は二つに別れていた。

右に行くか、左に行くか、まずそれが一つ。そして、その道の行く手を阻む、大量のネズミ。

倒して行けば、道の手前でゆっくりとどちらに行くか選べる。

倒さないで進む場合、ここでどちらかを選択して一気に突き抜けるしかない。


どちらにしても、赤屋は俺達に相談する事はないだろう。自分で結論を出せば、そのまま行動に移す。


ほら見ろ…

そう考えた瞬間に、赤屋はネズミに突っ込んで行った。


「瑞穂、カスミ!」

俺の一声で二人が動く。


水流障壁(アクアウォール)!」

魔力障壁(マジックウォール)!」


俺達の目の前に、高さ5M程の水の壁が現れる。

また、水の壁の手前にもう一枚、魔力の壁が現れる。


爆砕重波(フレアブレイブ)

瑞穂の水の壁とカスミの魔力壁が出来るのと、同時に赤屋が炎術を発動させた。

赤屋はネズミの中心に立つと、右腕に纏った炎を地面に叩き付ける。

赤屋の炎によって弾け飛んだ礫は、熱を持って四方へ拡散し、大量のネズミを巻き込んだ。しかし、ネズミに当たらない礫は、凶器となって俺達にも向かってくる。


だが、瑞穂の壁が礫の熱と威力を奪い、カスミの壁が第一障壁を突破した物を完全に止める。


ネズミの様な小動物を沢山相手にするなら、地を這うような攻撃が有効だ。赤屋がそれに準じた術を選ぶのは明らかだったが、俺達に被害が及ぶかどうかまで考えるか、といえば絶対に有り得ない。


俺達は悪い意味で赤屋を信用したのだ。

だから、瑞穂が炎に有効な水を使い。物理攻撃を重ねてきた時の為に、カスミがもう一枚の壁を創った。


お前は役に立たんのか、と云うクレームが入りそうだが、俺の出番はこれからだ。

「赤屋!お互い様だ。ダメージを喰らいたくなかったら、てめーで何とかしろ!!風散弾(ウインドバレット)


赤屋の攻撃が落ち着くと同時に、カスミは魔力障壁を解除していたが、瑞穂はそのまま水の壁を残している。

俺はその壁に手を当てて、風散弾ウインドバレットを放つ、風の弾丸は水を巻き込み、残ったネズミに向かって飛ぶ。

この術の特長は、着弾すると同時に弾ける事だ。そして、それは地面に着弾しても当然同じ事。

水を纏った弾丸は着弾すると、水を弾けさせ、直撃しなかったネズミを次々倒して行く。


通常の風散弾(ウインドバレット)でも、直撃すればネズミを倒せるだろうが、拡散したもので倒せるかは微妙だった。だが、瑞穂の水は物理攻撃力を上げるのに一役を買ったと云う訳だ。

また当然だが、近くに居る赤屋にも攻撃は向かう。だから、めんどくさくはあったが、わざわざ注意を促したのだ。


赤屋は火炎障壁(フレイムウォール)を使い。水の礫を全て蒸発させていた。


「おいコラ。失われた番号(ロストナンバー)、俺を巻き込むなんていい度胸じゃねーか」

俺を睨み付けながら、赤屋は云う。

たまにいるのだ、自分はいいが人にやられるのは許さないという、自己中心(じこちゅー)野郎が…

赤屋はその典型だ。だから、ある意味敵にしたくない。


ったく、めんどくせぇ~な。

俺は赤屋の攻撃で、焦げた天井を見ながら、大きな溜め息をした。




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