合成獣1
「ヒッヤホー♪燃えろ~獄炎連撃」
両腕に巻き付いた炎がヨーヨーのように、飛んでは戻りループする。
一度手を離れた炎は、直線上にいる虫を次々と焼き払っていく。
「派手ね…下品」
カスミは炎の余波から身を守る為に、俺の後ろをピタリと着いてくる。
「熱よけぐらい自分でしろよ」
「嫌、あんなのの為に魔術使うなんて、もったいない。いーじゃない、アンタがこの虫を払ってる訳じゃないんだから」
「まぁ、確かに楽はさせてもらってるな…」
先行している男の背中を見た後、瑞穂に同行している女性に声を掛けた。
「けど、アンタも大変だな。アレと組まされて」
「今回だけですから、そう考えば大した事ではありませんわ」
ニッコリ笑って、山辺里美は答える。
日本のお嬢様という感じの、これまた美人さんではあるが、黒の1プレート持ち、1年2位の実力者だ。
歩き方1つとってみても隙がなく、すぐ横を歩いている事を忘れそうになる。
能力無しのガチバトルしたら、瞬殺確定だなこりゃ…
俺や瑞穂は実家で、精霊使いの修練の他、体術の修練を行って来ている。
それは魔物と対峙した時、能力だけでは対応しきれないからだ。
それこそ、十把一絡げのヤンキー相手なら、二十人程度は軽く捻れる程度は強い。
だが、里美が持つ強さは別格に思える。
瑞穂もそれを感じているのか、口を開く事なく里美の事を監視している。
「何か?」
俺に、里美は話し掛けてくる。
「否、ちょっと見惚れてた」
『あぁ』
「ひっ!いっ否、無駄の無い歩き方だと思ってな」
感じた2つの殺気に身動ぎながらも、何とか言葉を繋げる。
何だったんだ今の…
「フフ、私の実家は忍の家系ですの。普段からなるべく、気配を消すようにしてましたので、その影響かもしれませんね」
何だよその設定…敵にしたくねぇ…
「焼けろや、コラー!」
前に居る男は対極だった。
ゴツい体に、オッサンかというようなフケ顔。能力を垂れ流す頭の弱さ…何よりウザい。
それでも、炎使いとしては、決して侮る事が出来ない。
青の1プレート、1年4位赤屋甲二。
コイツもある意味、敵にしたくない奴だった。
今は『失われた番号』の俺、1年2・4・5・7位の合計5人で動いている。
何故このメンバーで動いているかといえば、俺達が御社の屋敷に再度着いた時まで遡る。
御社は屋敷の前にいた。
「やあ、待ってたよ」
友達が来たかのように、手を振って俺達を呼ぶ。
「お招き預かりまして…と云った方がいいですか」
「フッ、下らないやり取りは不要なようだね。では、行こうか」
そう云うと、御社は歩き始める。歩くスピードこそ遅いがしっかりとした足取りは、やはり80歳を越えているようには思えなかった。
「何処に行こうと?」
「心配しなくても、そうは歩かないよ。私も年だ。そんなに遠くまでは行けない」
そう云われては、大人しく着いて行くしかない。屋敷の裏の道を御社に続いて歩いた。
「さて…」
5分程歩いただろうか、御社は立ち止まると前の山を指差す。
「目的地はそこだよ」
差された方向を見ると洞穴があり、その前に二人の生徒が待っていた。
「あの二人は?」
俺が御社に聞くと、代わりにカスミが答える。
「山辺里美と赤屋甲二。1年の2位と4位よ」
「うむ、そして今回のみ君達の同行者になる」
「監視役ですか?」
カスミを切り捨てたのだから、別の監視役をつける事は予想していたが、こんな明らさまにつけるとは考えていなかった。
「否、君達の協力者だよ。本当は速水君にお願いするつもりだったが、フラれてしまってね」
コイツは一体、何をさせようという気だ?
「これから君達には、あの洞穴に入ってもらう。中かちょっとした洞窟になっていてね。ま、ダンジョンRPGをして貰おうと云う訳だよ」
ダンジョンRPGだと、このじじい何考えてんだ。
「勿論、RPGである以上、ボスも用意している。君達はそれを倒せば、晴れてクリアになる」
「たちの悪い遊びですね」
ホント、うんざりする。
「そうかね。退屈はせんと思うが…あ、そうそう一応、ボスのパラメーターを伝えておこう。あくまでもデータ数値だが、魔物の20分の1程度だ。では楽しんできてくれ」
こうして、御社の遊びが始まった。




