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藤宮マサル

ベアコン視点です

過去にこんなことがあったよーという話


日常ではこういった非日常では裏設定でしかなかった話も書いてこうと思ってます

 俺、こと藤宮マサルと、羽切が出会ったのは中学生のころである。


 もっとも、出会ったというより、発見した、の方が正しいのかもしれない。


 中学生一年から二年生終了間際の約二年間、アイツはその頃の自分を全盛期と称する。

 そして、その言葉に偽りなどなくアイツの全盛期はまさにあの時期だった。


 今日は、その時期の真っ只中。

 藤宮マサル、中学一年生の時の話をしよう。





*****





(……うわぁ)


 中学に上がり、期待と緊張を胸に教室の扉を開けた途端、そう、思った。思わざるを得なかった。


 別に教室の内装に文句をつけたわけではなく、怖そうな不良生徒が居たわけではない。


 今でも鮮明に思い出せる。

 1ーC教室、一番廊下側の後ろから二番目の席。


 まっ金金に染めた髪をした、羽切神聖がそこに居た。


 頬杖をついて、不機嫌そうに眉間にシワをよせ、そこに存在していた。


 別に、別に怖くて(うわぁ……)と思ったわけではない。


 この場合の(うわぁ……)は、『どうしてこんな別次元にいるような奴が学校にいるんだ?』といったものだった。


 おそらく、そう感じたのは俺だけじゃないだろう。何せ、中学の頃の俺、すなわち引っ込み思案で黒髪で眼鏡、真性の意味での凡人だった 俺ですら、それは感じ取れた。


 RPGで例えるなら、二番目の村で村人の中に魔王が混ざってた気分だ。


 今となっては羽切も丸くなり、そう感じることも無くなったが。

 当時のアイツは、あらゆる意味で別次元だった。


 一人称が僕だった程の引っ込み思案な当時の俺に、そんな別次元の魔王に話しかける度胸などあるはずもなく、そこからしばらくは羽切と無関係な日々が続いた。


 羽切には色々な噂があった。


 暴走族百人を血祭りにあげたとか、すでにヤクザからオファーが殺到してるだとか、根も葉もないことから、真実味がありそうなものまで、色々。


 今思えば、全て羽切なら実現可能なものばかりだった。

 アイツは暴走族程度、二百人いてもぶちのめせるだろうし、ヤクザに限らずアイツを欲しがる所など万を越えるほどあるだろう。


 まあ、そんなこんなで8ヶ月後。

 12月2日のことだった。


 学校の帰り道、近所の公園。


 羽切がヤクザみたいな人に囲まれていた。


 心臓がやけに煩かったのを覚えてる。


 ヤクザは十数人、羽切は一人。

 ヤクザは拳銃持ちがいる、羽切は素手。


 警察を呼ぼうと思った。

 しかし、その考えはすぐに砕け散った。


 羽切が動いた。


 目にも止まらぬ速さで、次々とヤクザを倒していく。


 俺は、その華麗な美技に見とれていた。

 見とれて、しまった。


「こいつの命が惜しければ動くなぁ!」


 みたいな内容だったと思う。

 俺はヤクザの一人に捕まり、拳銃を突き付けられていた。


 制服が同じだからだろう。いや、誰でも良かったのかもしれないが、俺は人質にされた。


 死んだ、と思った。

 クラスメイトとはいえ、ほぼ無関係も同然な関係である。


 ヤクザの言うことを聞く道理など、無い。

 しかし、羽切は両手を挙げ、降伏のポーズを取った。


「よーし、動くなよ、動いたらこの小僧を殺すぞ……」


 羽切はピクリともしなかった。

 残った、俺を捕まえているヤクザ以外の二人が、頭に拳銃を突き付けても、


 羽切は動かなかった。


「殺れ!」


 銃声が二つ、響いた。




「痛てて……」


 銃弾を至近距離で受けた羽切の感想は、それだけだった。


 唖然として、銃を手から溢すヤクザたち。


 その瞬間を逃さずに、羽切は動き、あっという間にヤクザたちを制圧した。






*****






「で、どうしてヤクザなんかとやりあってたんですか?」


 自販機の前、助けてもらったお礼としては不十分すぎるが、ジュースを奢らさせてもらい、一服。


 羽切は敬語はやめろ、と先ず言った。


「俺から吹っ掛けた」

「ず、随分好戦的だね……」


 正直帰りたくなった。

 話しをしたのは初めてで、もうちょっと羽切のことが知りたいと思った気持ちが飛んでうせた。


「…………」

「…………」


 か、会話が思い付かねー!

 と、思ってた。ちなみに後から確認したことだが、羽切も同じことを思ってたらしい。


「……羽切は、羽切はどうしてそんなに強いの?」

「あん?」

「いや、その……同い年なのに、僕と羽切、何でこんなにも違うのかなって」


 羽切は、あー、と唸りつつ、ジュースを一口飲む。


「約束、だろうな」

「約束?」

「俺はな、母さんが大嫌いだ、弟が大嫌いだ、妹が大嫌いだ、けど……」


 シュッと、羽切は缶を投げた。


「父さんと約束したんだ、母さんを、弟を、妹を、俺が守るって、大黒柱になるって」


 カランコロン、と子気味の良い音を立てて空き缶はゴミ箱にボッシュートされた。


「だから俺は、強くなるんだ」


 そう言い残し、羽切は去っていった。


 一人自販機に残された俺は、とりあえず、帰ったら眼鏡をコンタクトレンズにして、一人称を俺にすることから始めようと思った。

 髪も、高校になったら染めようと思った。







*****





 翌日、羽切は学校に来なかった。

 急な転校らしい。


 さらに時間は飛んで、高校入学式、黒髪になっていた羽切に、「はじめまして」と言われ、俺は、こう返した。


「――ああ、はじめまして」


 そして、これからもよろしく。


良い話にしようとしたのに、そうでもなかった、不思議!


藤宮マサルが羽切神聖に向けてる感情は「憧れ」です。

他の友達視点も書いてこうと思ってます

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