とある日常0
とりあえず、プロローグ
「えー、こんな時期だが、転校生を紹介する」
某月某日、朝のHR、先生の一言で生徒たちは一斉にざわついた。
「今年だけで二人目か……どんな奴だろ、なあ、羽切」
隣の席のモブ山モブ雄(驚くことなれ、本名である)が話しかけてきた。
まあ、俺は誰が来るか知ってるんだけど、とりあえず「さあ?」と答えておく。
「静かにしろ! ……よし、入れ」
ガラリと、教室の扉が開いた。
入って来たのは、赤茶色の髪をした、一人の女の子。
中肉中背、髪型はボブカット、目付き優しげ。
我が婚約者、愛間千里だ。
転校生が美少女だったことにより、男子からは歓声があがって、女子からは残念そうな声が漏れた。
「はい、じゃあ愛間、自己紹介を」
「わかりました」
カカッと千里はチョークで黒板に名前を書いていく。
書き終わると、千里は一瞬だけこっちを見て、こう自己紹介した。
「はじめまして皆さん、神聖の嫁の愛間千里です。よろしくお願いします」
……さらっと言ってんじゃNEEEEEE!
クラスの奴らの反応は……。
「アルカディア?」
「誰それ? ゲームのキャラ?」
「なんかどっかで聞いたことあるような……」
「……なあ、アルカディアって羽切の名前じゃなかったっけ」
「あ」
「わ、わわわ羽切を名前呼びぃいいい!? 命が惜しくないのかあの女! ていうか恥ずかしくないのか!?」
うむ、過去に俺をアルカディアとふざけて連呼していたやつを社会的にぶっ殺した甲斐がある反応だ。
ていうかお前ら、婚約者には反応しないのな。
「だって羽切だし」
俺を何だと思ってんだてめーら。
とまあ、こんなことがあり、現在は七人目の変人戦隊に、千里は加わっている。ちなみに色は茶色だ――せめてブラウンにしろよというツッコミは無視された。
世界の危機は――救われて。
羽切朱音が居て、
羽切勇大が居て、
羽切那美が居て、
伊藤詩織が居て、
沢田リコが居て、
フルフルが居て、
藤宮マサルが居て、
青井秀が居て、
――愛間千里が、いる。
この世界、この日常。
これから紡ぐのは、誰も主人公ではなく、誰も脇役ではない、お話とも言えないような、他愛もない日常。
ごくありふれた、青春の1ページだ。