第7話ギャップ萌え=最高
春川さんが帰っていくのが名残惜しくて、つい、その背中を追ってしまう。
「いや~。いくつになっても、かわいいわね~」
しみじみするともねえの声が聞こえてきて、はっと我に返る。
いくつになっても……ということは、ともねえは、春川さんとそれなりの長さの付き合いがあるのだろうか。
「ともねえ、春川さんと仲がいいのか?」
ともねえがどや顔をする。
相変わらず、腹立つな……!
「優乃とは大学時代からのマブダチよ」
「へえ~……ってことは……」
「今年で36歳。篝より6つ年上ね」
「え……!? 俺より年上……!?」
青天の霹靂……!
俺、新人の女の子だと思ってたんだけど!
「年下がよかった?」
兄貴がニヤニヤしながら、こっちを見る。
「いや……別に……」
「もしかして、ちょっと気になってる?」
「そ、そんなんじゃねえよ。俺は、ただ、リハビリ室につれてきてもらっただけだ」
むしろ、ギャップ萌えして、めちゃくちゃいいじゃないですか……とは言えない。
仕方ないので、平静を装おうことにした。
「それならいいけど」
「何が?」
兄貴がほっとしたように胸を撫で下ろす。
俺が首を傾げると、
「看護師といちゃつくのは、職業倫理上、アウトだからね~」
今度は、ともねえがケタケタと笑う。
「ぐっ……!」
いちゃついているつもりは、微塵もない。
でも、煩悩はある。
だから、ともねえの言葉で、地味にダメージをくらってしまった。
「ま、しっかりリハビリに励めよ」
「……わかった」
春川さんに、ここへ連れてきてもらったからには、怪我は治さないといけない。
俺は、思いを新たに、兄貴を見送った。




