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第34話玉ねぎと煩悩

オートロックの新築アパート。

退院した優乃さんが廊下をゆっくり歩く。

その後ろを、両手に、荷物を抱えた俺が歩く。

気分は、新婚さん。顔がにやける。

……いや。落ち着け。俺。


「ごめんね。お休みの日に、荷物を運ばせて」


「いえ。お役に立てて、よかったです」


むしろ、休みでよかった。

今こそ、でかくて、頑丈な体の使いどころだ。


「この部屋なの」


「あ……はい……」


優乃さんが鍵を差して、回す。

扉が開いた。フローラルないい香りがする。


「……入って」


「お、お邪魔します……」


どきどきしながら、ついていく。

間取りは、1LDK。

カーテンも、ベッドも、絨毯も、白とピンクで、統一されてる。

こじんまりしてるけど、きれいでかわいい。


「何もないけど……とりあえず、座って」


「はい……」


荷物を置いて、絨毯に正座する。

人生で初めて入る、好きな女性の部屋。

目に焼き付けておこう。


「お茶、入れるよ……いたた」


優乃さんが、手術の傷があるお腹をさする。

おっと。今日は、客になってる場合じゃない。俺は、慌てて、立ち上がった。


「気を遣わなくていいです。休んでてください」


「だって、せっかく来てくれたのに……」


優乃さんがしゅんとする。

傷が痛いのに、俺を気遣ってくれるなんて、かわいすぎるだろ。


「そうだ。飯、作りますよ」


気づけば、もう昼だ。

どきどきしすぎて、忘れるところだった。


「えっ……でも……」


優乃さん、目をぱちくり。

ここまで来たら、申し訳ないとは言わせない。ガンガン、押して行こう。


「何が食べたいですか?」


「……ハンバーグ」


意外と、オーソドックスなやつが来た。

俺にとっては、朝飯前だ。


「……了解です」


「わあ。ありがとう」


冷蔵庫から、食材を出す。

包丁、まな板、ボールを揃える。

あとは、俺が、頑張るだけ。


「手際いいね~」


優乃さんが、隣で、俺の手元を見る。

かわいい。でも、めちゃくちゃ緊張する。


「や、休んでてもいいんですよ?」


「ううん。篝くんのそばにいたいの」


胸がどくんと鳴る。

何それ、反則……!

危うく、指を切るところだった!


「無理は……しないでくださいね……」


優乃さんが、真っ赤になって、無言で頷く。

自分で言って、照れるのが、またいいんだよな……じゃなくて!

とりあえず、玉ねぎを切ろう。

俺の煩悩とともに。

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