第33話覚悟
優乃さんが落ち着いたのを見計らい、俺は、ともねえと一緒に病室を出た。
思い出したら、まだどきどきする。
癒しに行ったのに、癒されてどうすんだ。
「ほんと、ピュア~な恋よね」
病院中に響き渡る、ともねえの声。
せめて、早く病院の外に出たい。
でも、この病院は、入り組んだ迷路だ。
駐車場まで、道のりは長いぞ。
「他人事だと思って……」
ようやく1つ目のエレベーターに乗る。
このエレベーター、遅い……!
尋問が始まるから、勘弁してくれ。
「何をそんなに躊躇うことがあるのよ」
「ともねえも知ってるだろ? 優乃さんの過去……」
初めて話してくれた日の、あの辛そうな表情。
……怖いよ。
次は、俺が、あの表情をさせる男になるかもって思ったら。
「もちろん。だから、ガードが堅すぎて、誰も壊せないのよ」
「俺なんかに壊せるわけがないだろ」
でも、そのガードを突破しないと、先へ進めないのも事実だ。
ず~っと、エレベーターの中にいるみたいになる。
「いいや。篝なら、できる」
ともねえが、そう言った途端、エレベーターが開く。
「なんだよ。その根拠は」
自信満々すぎるだろ。
廊下ですれ違う通行人が、女王様と従者がいる……みたいな目、してるぞ。
「……というか、壊してほしいという、私の願望かな」
「ともねえ……」
「幸せになってほしいのよ。優乃にも、篝にも」
ともねえ……そんな風に思ってくれてたのか。胸の奥が、じんわり熱を帯びる。
「わかった。落ち着いたら、ちゃんと、優乃さんと話をする」
俺も、覚悟を決めよう。
そもそも、この命は、幸せになるために使うと決めてるんだ。
優乃さんと……一緒に……。
「これでよし……と」
俺が、感動している横で、ともねえがスマホで作業してる。
ん? 何してんだ?
画面には、録音済……だと……?
「あっ……! ボイスレコーダー……!」
人の話を勝手に録音すんな!
すかさず、スマホを奪い取ろうとするけど、ともねえは素早い。
あっという間に、鞄の中へしまわれた。
「言質、取ったから」
「ちょっ……!」
俺の感動、返せ!
……って、どや顔のこの人に言っても、無駄か。
「じゃ、頑張ってね~」
気づけば、念願の自動ドアの前。
ともねえは、風のように、いなくなった。
ま、いいや。今の俺なら、できる。
今度こそ、腹をくくるぞ。マジで。




