第31話思いよ、届け
その後も、ともねえは、あらゆる種類の酒を飲み続けた。おかげで、帰る時には、超ご機嫌。
「じゃ、まったね~!」
くっそ……! 人のHP削って、回復してやがる……! 何なんだ、あの人……!
「ちゃんと、家まで送り届けて帰れよ」
その隣では、兄貴が、俺と優乃さんをにやけた顔で見る。
優乃さんは、ほろ酔いで顔が赤くなっている。眠いのか、目をこすっている。
「……わかってるよ」
「そんならいいや。じゃね」
兄貴が笑いをこらえながら、去る。
絶対、酔った勢いで、何かすると思われてる。俺、信頼されてないなあ。
「篝くん……?」
とろんとした瞳の優乃さんと目が合う。
これはこれで、色っぽくていい。
「大丈夫ですか?ともねえが、ガンガン飲ませてましたけど……」
「うん。とっても、楽しかったよ」
笑顔の優乃さんを見て、ほっとする。
それなら、よかった……と思ったのも、束の間。
「いいな。不知火家は、賑やかで」
優乃さんが、俯いて、小さく呟いた。
「え……?」
寂しくて、切ない横顔だ。胸がきゅっと締め付けられる。
「ごめん。来週から入院して、手術することになって……」
久しぶりの青天の霹靂!
入院……!? 手術……!?
えっ、そんな……! 俺は、どうしたら……!
「た、大変じゃないですか……!」
落ち着け。俺。
1番大変なのは、優乃さんなんだから。
でも、やっぱ、無理だ。
「全然大したことないんだよ。入院期間は1週間だし、良性の腫瘍を取るだけだし……」
優乃さんは、至って、冷静だ。
悟りでも、開いちゃったのかな……。
「いや……でも……」
一方、俗世の俺は、もごもご……。
う~ん……なんて、言うのが正解なのかな。
その間に、話はどんどん進む。
「ただ、婦人科系の疾患だったから……どんどん、家族を持つことから、離れていってる気がして、すごく寂しいんだ」
病気が何なのか、どういう手術をするのか、すごく気になる。でも、これ以上は、深く聞けない。かくなる上は……!
「俺にできることがあったら、やりますよ」
必殺! ありきたりワード!
120%心を込めてるのに、薄っぺらい……!
「大丈夫だよ……手術の日は、朋美もいるし……」
まあ、優乃さんは、そう思うんだろうけど……。
「俺、重いもの持ったりとか、ご飯作ったりとか……そういうのはできますから」
「篝くん……」
「俺は、俺で、優乃さんの力になりたいんです」
そう。俺は、もっと、優乃さんに頼ってほしいんだ。頼りないかもしれないけど。
「ありがとう……」
優乃さんの目がほんのり潤む。
……よかった。
ちゃんと、思いが届いたみたいで。




