第26話飴と雨
会場に着くと、浴衣のカップルが溢れていた。今日は、俺も、その1人だ。
優乃さんと手を繋いでる、それだけで顔がゆるむ。
「何、食べる? 綿菓子もいいし、りんご飴もいいよね」
優乃さんに言われて、はっと我に返る。
いつの間にか、両端に屋台が並ぶところまで来ていた。
……ってか、何なの。そのかわいい2択。
「りんご飴かな……」
まるっこい飴を持って、にこにこしてる優乃さんに1票!
「じゃ、りんご飴にしよ~!」
優乃さんがりんご飴の列に、俺ごと連れていき、無事購入。
大人っぽい優乃さんとまるっこい飴の、夢コラボ、爆誕。
「おいし~!」
優乃さんが、りんご飴を頬張る。
いつまでも、眺めてたい笑顔だな。
「ん……?」
顔に当たるこれは、雨粒……いや。もはや、滝!
「しまった! 傘がない……!」
相合傘のチャンスだったのに。
仕方ない。傘がないなら、雨宿りをしよう。
「屋根があるところ、人でいっぱいだね~……」
おお。コンビニも、駅も、みっちりと人が詰まってる。急な雨につき、電車も運休。
この近くで、屋根があるところといえば……あそこしかない。
「……うちに来ますか?」
「え?」
優乃さん、目をぱちくり。
一瞬、空気が止まる。やばい、地雷踏んだか?
「あ、雨宿り的な意味で……ですっ……!」
あんなことやこんなこともしたいけど、それは、封印する。俺、紳士だから。
「じゃ、じゃあ、お邪魔しますっ……!」
よし。優乃さんの許可、取れた。
「こっちです!」
優乃さんの手を引いて、家の方へ歩き出す。
こんなことなら、ちゃんと掃除しとけばよかったなあ……って、もう、遅いか。




