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第1話人生終了のお知らせ
俺――不知火篝は、深夜の国道を大型トラックで走っていた。
両側には、ファミレスの明かりがずらりと並んでいる。
それなのに、他の車は一台も通っていない。
「……こんなところ、走りたくねえよ」
兄・聖と比べられるのが嫌で、俺は高校を卒業してすぐ、地元を離れた。
兄貴は、六歳上で“神童”と呼ばれた人間だ。地元じゃちょっとした有名人。
一方の俺はといえば――。
30歳になった今も、バイト暮らし。
恋愛も仕事も長続きせず、ギリギリで生活している。
……我ながら、情けない話だ。
アクセルを少し踏み込む。
一刻も早く、この道を抜けたかった。
――その時だ。
ふわふわの毛並みをした大型犬が、目の前を横切った。
その後ろを、三匹の子犬がちょこちょことついていく。
「え……」
一瞬、現実感がなかった。
まるで、神様が遣わした絵本の親子犬みたいで。
「やべっ……!」
慌ててブレーキを踏み込む。
けれど、トラックは大きく進路を外れ、中央分離帯へと引き込まれていった。
――俺の人生はここで終わるらしい。
そう覚悟した。




