Episode10.エリカ
「叔母さん…」
葵が驚いたような声を発する。
「叔母さんですの?」
藤華がきょとんと首をかしげる。正直わたしも同じ気持ちだった。
「はい…ここ、あたしの故郷なんです。叔母さん、大丈夫?」
そう答え、葵が叔母と呼ぶ女性に手を伸ばす。しかし彼女は手を取ることなくただ茫然と前を向いている。
「叔母さん…?」
「…ぁ、あぁ葵ちゃんありがとうね。」
少し誤差があったが女性は葵の手を取り立ち上がった。わたしはすぐさま女性に声をかける。
「あの、すみません。少しお話伺っても?」
「…?あ、あなたは…」
「申し遅れました、わたしは日向さんの同期の雨花 紫陽と申します。いつからこの場所で救助を待っていましたか?」
先程も思ったがこの女性は前回調査に来た時にはいなかった。女性は戸惑い、葵の手を強く握っている。
「えぇっと…確か五日ほど前だと思います。家に戻って状況を整理しようと思って…。」
三日前。それはわたしたちが調査に来た一日前だ。ただ彼女の姿は一度も見ていない。また彼女もわたしを知らない。ならば彼女は嘘をついていることになる。
「本当、ですか?」
彼女の答えを待つ前に彼女の首元に鎌の刃を突き付ける。
「雨花上官何を…!?」
藤華が驚きの声を上げる。葵も何も言えず固まっていた。
「あなた…本当に人間?」
二人の反応を横目にわたしは女性へと質問をする。
しかし女性は反応しない。ただ虚ろな目でまっすぐ正面を見つめている。
「叔母さん…?」
葵が彼女を呼んだその時、女性の頭の上に花が咲いた。きっとエリカの花である。
わたしがすぐさま距離を取り、鎌を構える。藤華も状況を理解したのか武器である傘を開いた。ただ葵だけは腰が抜けたのかその場に座り込んでいる。
そんな葵を花傀儡が狙わないわけがない。女性の背中から生えた蔦が葵目掛けて伸びていく。
-天宮・兜・衣草視点-
雨花さんたちより少し後に到着し、わたしたちも探索を始める。
「えっと…そ、その…」
「兜です、よろしくお願いします。」
「うちは衣草です~。よろしゅうお願いします~」
「は、はい…お願いします…。」
今回わたしたちが向かうのは雨花さんと反対方向の場所。前回の調査でわたしと雨花さんの二人と金出さんに分かれて調査した時で言う金出さんの方向だ。
「まず、は…土壌の調査をしましょう…土の状態を細かく検査します。その…土の湿り具合、苔等植物が生えているかを重点的にお願いします…」
土の湿り具合は海水が土にしみ込んでいないかを、苔等の植物に関しては土が花傀儡の細菌に感染すると苔などの植物が生える。そのため、そこまで調査することになっている。




