童話 お喋り好きな言葉の魔女
その女の子はとってもおしゃべり。
いつも何かしらを喋っている。
だから周りの人たちは、おしゃべりが大好きだと思っていた。
けれど、そうじゃなかった。
できる事がそれしかなかったから、喋っていただけだっだ。
どこかの家の中、女の子が一人で遊んでいました。
女の子は家から出られません。
そして大きな音を立てることができません。
遊ぶものもありません。
だから一人で歌ったり、喋ったりしていました。
できるだけ小さな声でしたが、それでも、それは良くないことでした。
女の子は、女の子をお世話する人たちに怒られてしまいます。
けれど、何もせずにいるのは、あまりにも退屈なので、女の子は考えました。
お喋りをしていても、歌っていても怒られない方法を。
それはテレパシーでお喋りする方法です。
女の子はその日から、超能力という特別な力を使って、たくさんお喋りしました。
女の子のお世話をする人たちは、随分あとになって女の子がテレパシーを使うことに気が付きます。
同じテレパシーを使うお世話係がやってきたからです。
お世話係たちは、部屋の中にいる蜘蛛やアリをみて、納得しました。
女の子はテレパシーを使って、部屋の中の昆虫とお喋りするのが好きなのだと。
いつも超能力を使って、使っているので、それが好きなのだと。
けれど、実際は違いました。
女の子は、それしかやることがなかったから、やっていただけです。
退屈するよりはましだからやっていただけです。
女の子を憐れんだ誰かが、怒られるのを承知で遊びの道具を差し入れようと考えたことがありますが、女の子がいつも楽しくお喋りをしているので、やらなくても良いかと思うようになりました。
「あの子、王様が不倫して作った子どもですって? 外に出せないなんて可哀想に」
「このままずっと一人ぼっちで、誰の目にも見られないところで、生きていかなくならないのかしらね」
「でも、私達が思っているほど、不幸じゃないみたいよ。今も虫と向き合って楽しそうにお話してるみたいじゃない」
それから何年もたって、王様や王妃様が剣で倒れ、王族の他の子供達や親類縁者全てが亡くなりました。
その王家に恨みをもったものの犯行です。
王様たちを亡きものにしたその人物は、一人ぼっちだった女の子だけは哀れに思い、生き残らせてあげましたが、後に後悔することになりました。
なぜならその女の子は、言葉の魔女になって、人々から言葉を奪ってしまったからです。
だから、テレパシーを持つ人間以外は、コミュニケーションがとれなくて大混乱。
多くの人達は、その後数十年かけて、独自のコミュニケーションの方法を構築していきますが、その途中でたくさんの誤解が起きて、多くの人達が死んでしまいました。