回収
もう日付が変わる頃だろう。後ろを見ても乙華の姿はない。ここまで逃げればとりあえず追いつかれることはないだろう。帰ってきた時の持ち物のままだから、ちょうど手持ちはある。疲れを取るために僕は近くにあった、ネカフェでやり過ごすことにした。
個室のここなら安心だ。ゆっくり身体をリラックスさせる。ただ、頭の中は疑問でいっぱいだ。
あの日記は読まれてはいけないことが書いていたのか?
奪うだけでいいのになんで殴ってきたんだ?
そもそも乙華は殴ってくるような人じゃないのになんで?
なぜずっと追いかけてくる?
色んな疑問で頭の中が渋滞している。考えている間に疲れで眠りに落ちてしまった。
目覚めた。スマホを確認すると、もう昼間になっている。疲れもだいぶ取れたことだし、ここを出よう。お金を払って店を後にした。きっと乙華は今も探しているはず。だったら、部屋に戻ってノートを回収できるのでは? そう思い立って、アパートに向かうことにした。
案の定、君は居なかった。そして、ノートは残されている。見つけた、中を確認しよう。ノートを拾い上げる時、窓の外が目に入り込んだ。誰かがこのアパートに向かって歩いてきている。気になってよく窓の外を見ると、それは乙華だった。
なんだかおぼつかない足取りで歩いている。いるのがばれたらまずい。
どうしようか。