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逃走

 「はあ、はあ、はあ」


 夜の冷たい空気で、荒い呼吸が白い。今、僕は乙華おとはに追われている。乙華は、僕の彼女だ。いや、彼女『だった』が正確だろう。乙華は、いつの日か変わってしまった。なぜ変わってしまったのかはわからない。今はただ、逃げるだけ。




 12月の始めの頃だっただろう。同棲してる家に帰った。いるはずの君の姿が見えない。


 「乙華、ただいまー」


 大きな声で言ってみる。しかし、返事はない。リビングの扉を開ける。


 物が少なくなっている。ここはアパートだから、備品はそのままだが私物がほとんど残っていない。それも乙華のものだけ。手紙か何か、残ってないか急いで確認する。

 本棚の隅の方にノートがあった。自分の物ではなさそうだし、きっと乙華のものだろう。何かが残されているんじゃないかと、ノートを開く。

 2月28日、僕達が付き合った日付から始まっている。きっとこれは日記だ。


  「今日は來己らいきから告白された。ずっと片想いしてる人から告白されるなんて思わなかった。だからすぐ了承しちゃった。


 ガチャ


 リビングの扉が開く音が聞こえる。乙華だ。次の瞬間、ノートを奪われて殴られた。なんだか様子がおかしい。


 「どうした乙華。勝手に日記見たのは悪かったけど、何も殴らなくても」


 乙華は何も言わずにもう一回殴ろうとしてくる。僕は殴られたくないから、部屋の外へと逃げる。すると乙華は、ノートを部屋の床に落として、追いかけてくる。それは、狂気だった。まるで何かに取り憑かれているよう。日が沈む空を背後に、僕は走って逃げる。


 乙華に追いつかれないように。

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