表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

第6話 推し活

 ホウの頭を優しく撫でて目を見る。ホウはジッとリーンを見つめ返し、


 「ホウ」


 翼を大きく開いて応える。仲直りの儀式が終わり、


 「ホウくん、着替えるよー」


 ホウは肩から丸いテーブルに移動する。


 先程までの作業着をメニューディスプレイを出してオフにする。


 キャミソールとショーツだけになると、リーンは正面にある姿見に向かってお尻を向ける。


 ショーツにプリントされた、グリフのキャラクターのイラストを見て、


 「くぅ~、いい表情してるなぁ♪」


 この下着、通常販売ではなく、抽選で限定十枚の激レア商品。


 グリフの一番人気のキャラクターであること、そして、リーンがグリフで愛用する相棒でもあり、この商品をゲットする為、あらゆる手を使った。


 精霊の湖に住む貴婦人に供物を捧げたり、()の国のフィールドにある五十鈴川(いすずかわ)御手洗場(みたらしば)で身を清め、極めつけには、マナが宿るとされる火山島に赴くなど、現実世界でいう、パワースポットを片っ端から回った。


 一つ違うとすれば、バビロンでは、訪れることで、自身のステータス、今回に於いてはLuck(幸運)の数値が確実に上昇するので、現実世界より効果はあったようだ。


 ふとショーツが()れが気になったのか、人差し指でクイッと直して、リーンが、


 「ヨシっと!」


 満面の笑みを浮かべ、外行きの衣服をチョイスする。


 今日はお昼にランと市街地でランチ、その後、クラフトに必要なアイテム調達、終わったらクランと一緒にフィールドに赴くというスケジュール。


 クラン、MMORPGをプレイしたことがないユーザーにとっては、聞き馴染みのないワードだが、簡単に言えば【仲間】のこと。


 大規模なクランには、所属する為に試験なども存在するが、リーンは最低人数の五人で活動している。


 衣服の種類は、用途によってカテゴライズされており、フィールドに出るまでは、防御力など考慮しない軽装を選んだ。


 ホウを肩に乗せて、


 「行ってきまーす」


 誰もいない家に挨拶するのは、少し変かもしれないが、リーンの視線の先は、玄関の棚に置かれた写真立てに向けられていた。


 リーンとよく似た顔の女性が、屈託のない笑顔で微笑んでいる。


 家を出ると、お隣さんの玄関のドアを開ける音が聞こえた。


 「あっ、ランちゃん♪」


 黒く腰まである髪、長身の女性と目が合う。


 「やぁ、リーン、タイミングがいいね」


 落ち着いた口調で応えるランは、リーンを見て、


 「何か良いことでもあったかな?」


 リーンの僅かな表情を読み取り、ランがそう言うと、


 「えっ、何でわかるの?」


 不思議そうにランの顔を見る。


 「わかるさ、キミのことは」


 男性が言えばキザな台詞を、ナチュラルに発してしまうランに、


 「さっすが、ランちゃん、すごい!」


 単純に喜ぶリーン、その関係は友達というより、親と子のようだ。


 「はは」


 ランは口説き文句で言ったはずが、華麗にスルーされて笑うしかなかった。


 ゴソゴソとランの胸の中から、リスのような小動物が顔を出す。


 「ラタトスク、どうしたんだい?」


 キョロキョロと辺りを見回し、リーンの目をジッと見る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ