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第3話 女神アスタルテとリーンの挑戦

 工房に置かれた家具や雑貨を、魔導書を取り出して小声で詠唱。すると、それらは宙に浮いて部屋の隅に整然と片付く。


 中心には魔方陣がうっすらと光を帯びて、リーンに呼応するように脈打っていた。


 「イメージ伝達……セット」


 意識を集中し、魔方陣とリンクする。リーンが最初に思い浮かんだのは、


 『テメー!何やってるんだよ、馬鹿が!』


 グリフのランクマッチ、味方に執拗なまでにピン刺しをして、対戦中、暴言を吐く悪質プレイヤーの姿。


 その時に感じた感情を利用する。


 怒りや悲しみなど、様々な思いを術式として変換、実現可能に必要な【領域パーセント】が上昇していく。


 領域パーセント、バビロンの住人ではない者にとっては、聞き慣れない言葉だが、プレイヤーの思考を数値化し、その数値が基準を満たすと魔法として生成されるという、サムスが開発した画期的なシステムだ。


 その条件は非常にシンプル。


 【術者のイメージの強弱】


 思考を擬似的に数値化し、ソロモンのクラフトを司る女神【アスタルテ】がジャッジ。彼女が祝福の微笑みを浮かべれば成功、俯いた表情を浮かべれば失敗となる。


 このシステム、実現しやすい魔法であっても、術者のイメージが浅ければ高確率で失敗するし、反対に実現不可能と思われる魔法であっても、術者のイメージが深く豊かであれば、アスタルテの力のブーストが発動し、成功することが出来る。


 高難易度とされる魔法にはランクが付与され、上位に【大魔法】最上位に【究極魔法】が存在し、究極魔法はソロモンの世界で、現在一つのみ。その魔法を作った術者には【グランド】の称号が与えられ、全ての術者の憧れであり、目標となっていた。


 リーンの中にある怒りの感情は、審判を司る天秤となり、目の前に出現する。


 イメージの物質化は段階で言えばファイナルフェーズ。更に集中、強固なモノにする為、深呼吸をして心を静める。


 一瞬の静寂が流れ、


 鈴のような涼やかな音がする。


 目の前にアスタルテが出現し、天秤を包み込むように抱き上げて、リーンに微笑む。


 光に包まれ、リーンが目を開けると、


 【congratulations(おめでとう)!】


 魔法成功の表示バーが出て、祝福のファンファーレが鳴り響く。


 「やったー♪」


 リーンがガッツポーズ、完成した魔法はアスタルテによって文章化され、素材としてリーンのアイテムストレージに保存された。


 「下ごしらえも出来たし、まずは……」


 装丁に関わる工程は、表紙やカバー、帯などの外観から、本の中身の材質、文章の書体を決めるなど多岐に渡る。


 「う~ん【ヒラギ明朝】は好きだけど、内容に合ってるのは【行楷書体】かなぁ」


 書体を選ぶだけでも、リーンにとって悩ましく、実に楽しい時間。


 小一時間ほど長考したうえで選んだのは、


 「よし!【游明朝(ゆうめいちょう)】に決定!」


 書体を設定し、保存した素材にインストールする。


 文章を確認して、


 「うん、いい感じ♪」


 納得の表情を浮かべ、パラパラとページを捲る。


 「次は表紙っと」


 表紙の表面に選ばれる素材は、現実世界に於いては、古くは羊、牛、豚の革が使われていたが、ソロモンでは、近代の素材の他に、ファンタジックなモノも存在する。

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