#36「御手洗令嬢奪還 後編」B
「お〜いメイド共。アタシは疲れてるから、マッサージしてー!」
柔子はソファーに踏ん反りながらメイド達を呼んで、マッサージをさせるために三人のメイドを集めた。その内、一人の高身長のメイドが言った。
「長旅でかなりお疲れだと思いますので、全身をマッサージします...わ。」
柔子は座っていたソファーに横たわり、三人のメイド達はマッサージを始めた。
そこに帽子を被った執事がシールドカテラスにアップルパイを持って目の前に差し出した。
「シールドカテラス様。このアップルパイをどうぞ。」
「おう、ちょうど腹減ってたんだ。いただくぜ〜」
シールドカテラスは麗綺と防子を床に下ろし、アップルパイを取ろうとする。そこで執事はそのアップルパイをシールドカテラスの顔面に思いっきりバァンと当てた。
「熱っちぃ!何しやがるんだ!」
シールドカテラスが手を押さえた内に、床に置かれた二人を抱えて、部屋から逃げ出した。
マッサージを受けている柔子も、二人が連れ去られた事に気づいた。
「ア、アタシの防子が連れ去られてる!」
三人のメイドは柔子の事を押さえた。しかし、高身長のメイドの腹を思い切り殴って体制を崩させ、二人を抱えた執事を追い始めた。
倒れた高身長メイドに二人のメイドが手を貸して立ち上がらせた。
「大丈夫ですか、愛剥路様!」
「は、はい。大丈夫です...協力してくれてありがとうございました。」
「変装がうまく行って良かったです。それにしても女性を平気で殴るなんて、女の敵ですね、あの人。」
「もう防子ちゃん以外はどうでもいいと思ってますよね...」
するとシールドカテラスが体制を直し、二人の人質を追いかけようとしていた。
「許さねぇ〜俺の顔にパイを投げやがって〜!」
追いかけようとするシールドカテラスの前に、愛剥路が立ちはだかった。
「ここは通しません!」
愛剥路はアリツフォンにアリツチップを挿し込む。
[Vehicle In]
電子音声の後に待機音が鳴る。
「武着装!」
掛け声を言って、愛剥路はCERTIFICATIONの文字をタップした。
[CERTIFICATION. In Charge of Vehicles.]
再び電子音声が聞こえた瞬間、愛剥路の周りに光が纏ってアリツビークラーに武着装した。
「「姿が変わった...」」
二人のメイドは驚きを見せた。
「お前、超戦士だったのか...ならお前をぶっ倒して、さっさと退いてもらうぜ!」
「絶対に行かせません!」
愛剥路はシールドカテラスを足止めする事を決意した。
二人を抱えた執事は御手洗邸の裏庭に出た。それを追いかけた柔子も執事に追いつき、執事に向かって怒鳴り声を挙げた。
「あんた!使用人のくせに舐めた真似してるのかしら...!」
「これで二人は取り返したもらったよ!」
執事は帽子を投げた。正体は拳也だった。拳也と愛剥路は使用人達と協力して、それぞれ変装し、二人の奪還を機会を待っていたのだった。
「ええっと...あんた誰だっけ?」
「お、覚えられてなかったんですね...まぁいいですよ別に。これで二人は返してもらったので」
「冗談じゃないわ!アタシの防子を返しなさい!」
「いつ防子さんがあなたのものになったんですか!無理矢理連れ去っておいて、よく自分の所有物みたいに言えますね!というか物みたいに言わないで下さいよ!」
「黙れ!ガキが!あんたに何が分かるの!」
柔子はアリツフォンにアリツチップを挿し込む。
[Taijutsu In]
「やっぱりそうなりますよね...」
拳也もアリツフォンにアリツチップを挿し込む。
[Martial Arts In]
電子音声の後に待機音が鳴る。
「「武着装!」」
両者は掛け声を言い、二人はCERTIFICATIONの文字をタップした。
[CERTIFICATION. In Charge of Martial Arts.]
[CERTIFICATION. In Charge of Taijutsu.]
再び電子音声が聞こえた瞬間、両者の周りに光が纏い、それぞれアリツシャーマ、アリツジュッタに武着装した。
「アタシから防子を奪う奴は全員死ね!」
「やっぱり、あなたは防子さんを物のようにしか見ていない。二人は僕が守る!」
防子を血眼になったような勢いで奪おうとする柔子を、拳也は迎え討つのであった。
一方愛剥路は外に押し出されてシールドカテラスに攻撃をが通じず、苦戦していた。
「さて、そろそろ止めを刺すか」
「うぅ...」
愛剥路が涙ぐむんだ時、自分の呼ぶ声が聞こえてくる。やがてその声は段々と近く聞こえてくる。
「愛剥路!」
声の主は由人だった。
「愛剥路大丈夫か!」
「よ、由君...」
「なんだてめぇは!」
シールドカテラスが怒鳴り声を上げる。
「愛剥路、武器のチップを!」
「はい!」
由人は愛剥路から武器のチップを受け取り、アリツフォンにアリツチップを挿し込む。
[Weapon In]
「武着装!」
掛け声を言って、由人はCERTIFICATIONの文字をタップした。
[CERTIFICATION. In Charge of Weapons.]
再び電子音声が聞こえた瞬間、由人の周りに光が纏ってアリツウエッパーに武着装した。
由人はアリツシールドを出現させて、アリツフォンにアリツブレイクチップを挿し込む。
[Break Standby]
画面にブレイクの文字が表示され、タップする。
[Weapon Break]
アリツシールドのブレイクが発動して巨大化してシールドカテラスと同じくらいの大きさになって、シールドカテラスの方に倒れてのしかかった。
「ぐぁ!なんだ!重い!」
アリツシールドを掴んで、倒れる事を必死に耐えようとするシールドカテラス。その間に由人は後ろに回り込む。由人はアリツソードを出した。
「ブレイクはもう一つあるんだよね。」
アリツソードにアリツブレイクチップを挿し込んで、高く掲げた。
「愛剥路、もうひとつアリツシールドを出して重ねるんだ!」
「分かりました!」
愛剥路もアリツシールドのブレイクを発動して、由人が出したシールドに重ねた。
「ぎゃあああ!膝がー!もう無理だー!」
「よし愛剥路もソードを掲げろ!」
「はい!」
愛剥路も由人同様にシールドカテラスの後ろに回り込み、アリツソードを出してブレイクを発動して掲げた。シールドカテラスは二枚のシールドの重さに耐えきれず、後ろに倒れ、二人の掲げたアリツソードに突き刺さり、貫通した。
「うぎゃああああ!」
二人はそれぞれの出現した物を引っ込めた。シールドカテラスも人間に戻り、由人はその人間を抱き抱えて、床に下ろした。
「あっ、由君!裏庭に拳也君が!」
由人はすぐに裏庭に向かった。そこには倒れている麗綺と拳也がいた。拳也は血だらけになって虫の息になっていた。
「拳也君!防子は...」
「由人さん...防子さんは取り戻せませんでした...本当に...すいません...」
「いや、それどころじゃないよ!今すぐ救急車呼ぶから!」
由人はすぐに通報して、救急車を呼んだ。拳也君とカテラスにされた人間は運ばれていった。御手洗邸の使用人達は由人達にお礼を言った。
「お嬢様を取り戻していただきありがとうございました!」
「いえ、そもそも人質を取られたのはこっちの責任でもあるので、感謝される事ではないというか、むしろこちろこそ本当にすいませんでした...」
「でもあの女は無理矢理あなた方から色々と奪ったのでしょう?そんなに気を落とさないで下さい。」
由人達は分部邸に戻った。由人はより一層、防子を自分の手で取り戻す事を決意したのだった。
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