#36「御手洗令嬢奪還 後編」A
一人先についた愛剥路は、窓から中の様子を伺っていた。ちょうど防子がシールドカテラスに気を失われる場面を目撃してしまったのだ。
(どうしよう...防子ちゃんまで...)
愛剥路は足が誰かに掴まれたように動けなかった。今出ていってもどうしようもないと思ったからだ。そう思っていると誰かが愛剥路の肩をポンっと叩いた。愛剥路は体をビクッとさせて後ろを振り向くと、拳也が立っていた。
「拳也君!驚かさないで下さいよ〜!」
「すいません。中はどうですか?」
「はい。防子ちゃんも捕まってしまって...」
「そうですか...僕も中を見てみますね。」
拳也も窓から中の様子を覗いた。シールドカテラスが防子と麗綺を抱えていた。
その時、一人の御手洗邸のメイドが二人を目撃した。
「あ、あなた方は...」
一方その頃、雷男は能野警察署の近接の能野拘置所の牢屋に収監されてしまっていた。
「ったく...何で命の恩人である俺が豚箱にぶち込まれなきゃいけねぇんだよ...」
牢屋の中は鉄格子に薄汚いベッドにトイレと、ひと昔前のような牢屋だった。
「本当に漫画とかで見るような牢屋なんだな...物も全部取られてるし、早くここから出てぇな〜」
雷男はベッドに横たわり、大声で愚痴をこぼした。
「うるさいわよ!」
雷男の牢屋に注意したのは、二十代と思われる女性の刑務官だった。シュッとした細身の女性で、この場所にいる事が信じられないような美人だった。
「お、お姉さん、ここの刑務官?」
「ええ。そうですよ。この拘置所で刑務官をしている、和達です。大声を出したら迷惑ですので、お静かに。」
「ああ、すまん。」
雷男は彼女の美しさに見惚れて、素直に謝罪した。
「で、あなたは何の疑いでここに?」
「あぁ、痴漢に間違われてな」
「ふぅん...本当にやってないのかしらね?」
「なっ!?確かに俺は女の体を触った!だけどそれは倒れていた女の人命救助をしたからだぞ!命の恩人だって言うのに、その女は俺を痴漢で訴えやがったんだ!」
疑惑の眼差しを向けられた雷男は、向きになって和達刑務官に弁解した。
「触ったんでしょ?なら痴漢じゃない。」
「はぁ?触らなくちゃ助けられないだろ!?」
「でも、身体を触ったのは事実なのよね?だとしたら普通に痴漢で罪に問われるかもしれないわね。」
それを聞いた雷男は膝から崩れ落ちて、落胆した。
「む、無闇に身体を触るのは悪いが、これも駄目なのか?命を救ったのに、俺は前科が付いちまうのか?こんな事があっていいのかよ!?」
「まぁ、そう落ち込むのは早いわよ。もしかしたら罪にならないかもしれないし」
「って事は罪になる可能性の方が高いのかよ!いい事したのに犯罪者になるなんて納得いくかよ!」
「それは神様にでも祈るしかないわね」
和達刑務官はそう言い残してその場を去っていった。前科が付く可能性が高いと知った雷男は頭を抱えてる事しか出来なかった。
分部邸では見送ったがやはり心配に思っている由人が、そわそわした様子で椅子から立ったり座ったりしている様子を分部博士の部屋で見受けられた。その様子を見ていた路宇都は言った。
「由人君。いくら何でも人の部屋で、落ち着かないのはどうかと思うわ...」
「路宇都さんだって...さっきからずっと右往左往に浮いてて、落ち着いてないじゃないですか...」
「しょうがないでしょ!大切な妹の事を考えたらどうにもこうにもいられないのよ!」
すると分部博士が立ち上がった。
「修理終わったわよ!由人君!」
「お、終わったんですか...?」
「言ったでしょ?もうちょっとって。これで拳也達の所に行ってきて。私も拳也の事が心配だから...」
「じゃあ、アタシも行くわ!」
「いや、柔子はカテラスを連れ回す程の危険な奴ですので、路宇都さんはここにいて下さい。僕が愛剥路も拳也君も、そして防子を取り返してきます!」
「由人君、頼もしいわ!流石私の見込んだ男ね!」
(見込んでたっけ?)
「...そうね。ここはあなたに任せる。妹を無事に連れ帰ってくる事!いいわね!」
「分かりましたよ。まぁ一番の目的は、麗綺さんの家を取り返す事ですけどね。」
二人に決意を表明して、由人は部屋から出た。玄関から出ようとすると、未央理が由人に話しかけて来た。
「由人君。麗綺の事、頼んだよ。」
未央理は由人の両手を握った。由人は未央理の手を握り返して静かにうなづいて外に出た。
アリツバイクを出した由人はアリツウエッパーに武着装し、御手洗邸に向かったのだった。
(防子。お前は必ず僕が連れ戻す...どうか無事でいてくれ...!)
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