#34「冤罪執事」B
雷男に仕事を教わっていた愛剥路。食事の材料の買い出しや未央理への報告等を教わっていた。一通り仕事を教えた雷男は由人に対しての愚痴をこぼした。
「それにしても由人も心配性な奴だな。俺がそんな簡単に怪我なんかしないっての。」
「確かに、由君や拳也君は何回も怪我をして一時期は戦えない時もありましたけど、雷君はまだ一回もありませんよね。」
「そういやそうだな!全く、俺の心配より自分の心配しろってんだよ。っていうかあいつ今も戦線離脱中じゃねぇか!」
「お、落ち着いて下さい。由君も心配してくれて言ったんだと思いますよ。防子ちゃんもいないから、これ以上誰も失いたくないんだと思います。」
「まぁ、そういう事にしておくか」
するとアリツフォンから警告音が鳴った。二人はすぐさまカテラスが出現した現場に向かった。
現場は能野町の海岸だった。もうすぐ冬になる海岸はより一層に寒さを感じる。しかし、二人が海岸で目撃したのはタコの形をしたカテラスが人々に自分を足を巻き付けて苦しめている姿だった。
二人は岩陰に身を隠したが、そこにはTシャツ姿の女性が倒れていた。見た感じは三、四十代だろうと思われる。
「しょうがない。愛剥路さん、これを」
雷男は愛剥路にシャーマのチップの一式を渡した。
「俺は人命救助をするので、愛剥路さんはカテラスをお願いします。」
「はい!任せて下さい!」
雷男は女性の人命救助を開始した。
愛剥路はアリツフォンにウェポンのアリツチップを挿し込んだ。
[Weapon In]
電子音声の後に待機音が鳴る。
「武着装!」
掛け声を言って、CERTIFICATIONの文字をタップした。
[CERTIFICATION. In Charge of Weapons.]
再び電子音声が聞こえた瞬間、愛剥路の周りに光が纏ってアリツウエッパーに武着装した。
愛剥路は岩陰を飛び出してカテラスの元に向かい、カテラスに言った。
「そこまでです!タコのカテラスさん!」
「あん?なんだ姉ちゃん?このオクトパスカテラス様の邪魔をするのか?」
「どうしてみなさんを巻き付けて苦しめてるんですか!」
「そんなの決まってるじゃねぇか!海を守るためだ!人間が海を汚すから、俺様が窮屈な思いをする!だから人間共を懲らしめてるんだよ!」
「でも、あなただって元は人間ですよね?」
「そうさ、豚箱にぶち込まれてて嫌だったな〜。この姿になって海で過ごしたら快適だったよ。だが、もう冬になるってのにまだ人間がいやがるんだ。だから俺様が皆殺しにしてやろうかと思ってな!」
「そんな事はさせません!」
愛剥路はアリツソードを出し、オクトパスカテラスに向かっていった。
「そうはさせるか!ゴリーク!」
「「「「ゴ〜」」」」
オクトパスカテラスの一声によりゴリークが大量に出現し、愛剥路はゴリークの対処をするのがだった。
雷男は気を失っている女性への人命救助を行っていた。心臓マッサージや人工呼吸を繰り返し行ったが、意識を取り戻す様子はない。
そこに一人の男性が通りかかる。
「すいません!人が倒れているので、AEDを持って来てもらいませんか!」
「わ、分かりました!」
その間に雷男は再び心臓マッサージ等を行った。しばらくしてAEDが到着し、女性のTシャツを脱がし始めた。
脱がしている途中に女性は意識を取り戻し、目を開け始めた。
「ん、う〜ん」
「良かった、意識が戻ったみたいだ」
「うん?きゃ!あなたなにしてるのよ!」
「俺はあなたが倒れているので、人命救助を」
そこに警察官が通りかかった。カテラスの事で通報が入ったのだろうか?海岸にはカテラスの姿がすでになかった。
「怪物がいると通報があったが、どこにもいないな...」
「おまわりさん!痴漢です!」
「ち、痴漢ですか!」
「いや、違いますよ!」
「この二人が、無理矢理私の服を脱がせていたんです!」
するとAEDを持って来た男性は、警察官に言った。
「そうなんですよ!この人がこの女性のTシャツを脱がせていた所を止めようとしたんです!なので僕は関係ありません!」
なんと男性は雷男に責任を擦りつけたのだ。
「はぁ!?何言ってんだあんた!」
すると雷男の手元には、ガチャン!と手錠をかけられた。
「そうでしたか。ご協力感謝致します。それでは責任を持って署に連行しますのでご安心ください。」
「おいおい!まじかよ!」
「あなたも詳しい話を聞きたいので、ご同行をお願いします。」
「ええ!分かりました!」
雷男は女性と共に警察署に連行されていったのだった。
ゴリークを対処して、近くの住宅地にまで移動した愛剥路とオクトパスカテラス。しかし一向に倒せないでいた。
そこにアリツフォンに通信が入る。
「愛剥路ちゃん大丈夫?」
「彩絵花さん!」
「武器に属性を追加したから使ってみて!」
「分かりました!」
愛剥路がアリツマグナムを出した。そこにはハンマーの部分につまみが追加されていた。そこにはNormalとFireの文字があった。
つまみを動かしてFireの項目にして、オクトパスカテラスに向けてトリガーを引くと、弾が火炎弾になっていた。そのままオクトパスカテラスに命中した。
「アッチ!焼きだこになっちまう!」
「それでは、焼きだこにしてしまいましょう!」
愛剥路はアリツマグナムにブレイクチップを挿し込んだ。
[Break Standby]
待機音が鳴り、トリガーを引く。
[Weapon Break]
トリガーを引くとビームが発射され、オクトパスカテラスの体が燃えて炎に包まれた。
オクトパスカテラスは人間の姿に戻り、その場に倒れた。愛剥路はいつも通りに110番と119番通報をして、その場を離れた。
愛剥路は雷男を探して屋敷に戻ろうとしたが、雷男の姿はどこにもなかった。まさか警察に連行されたとは思ってもいないだろう。
先に戻ったのかと思った愛剥路は一人で屋敷に戻ったのだった。
愛剥路は屋敷に戻り、由人の元に向かった。
「ただいま戻りました!」
「おかえり...あれ?雷男は?」
「あれ?戻って来てないですか?」
そこに拳也が駆け足でやって来た。
「愛剥路さん大変だ!雷男さん、警察に連行されたって!」
「えぇー!?」
「マジで!?」
愛剥路、そして由人は驚きの表情が隠せなかった。
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