#31「落胆する考案者」B
「由人さん、入りますよ。」
拳也は由人の部屋をノックして、部屋の中に入る。そこには布団にくるまってベッドで寝転んでふて寝している由人の姿があった。
「...何か用?今、何もしたくなんだけど...」
「由人さん、確かに防子さんを連れていかれて落ち込むのは分かりますけど、何もそんなに引きこもる事は...」
「柔子ちゃん...いや柔子は防子にお熱だった。だから何かしらの行動を起こすとは思っていたけど、まさかすぐに起こされるとは思わなかったよ。」
「それは...まぁ...」
「本当は今すぐにでも取り返しに行きたい...しかし、ルオマーを倒してしまう程の実力を持っていて自分のアリツフォンが使えない現状、僕には何もする事が出来ない!そう考えると、何にもやる気が起きなくなっちゃって...手伝いもしたくないぐらいだよ...」
そう言うと、由人は布団を全身に包んで涙を流してしまった。
「拳也君だって、ルオマーを自分の手で倒したかっただろう?因縁の相手を横取りされて悔しくないの?」
「確かに自分で倒したかったのはあるんですけど...倒された物はもうしょうがないですから」
「そうかい...でもこっちは守るべき存在、そして大切な幼馴染を攫われたんだ...簡単に立ち直れる訳がない...」
「由人さん、ちょっとベッド上がっていいですか?眠くなってきちゃって...」
「えっ?まぁ別にいいけど...」
拳也は由人のベッドに上がると、秒で眠りに就いてしまった。由人は困惑したが由人も拳也に釣られて、そのまま眠りに就く事にしたのだった。
現場は能野町のゲームセンターであるNOUYA GAMEの駐車場。そこで大岩のカテラスが自身を転がして人々を襲っていた。大岩のカテラスは由人が初めて戦ったロックカテラスの二倍以上の大きさはあった。
二人はアリツバイクに乗って現場に到着して、その様子を目撃した。
「大岩が転がって人を襲っているぞ!」
「早く助け出さないと!」
二人はバイクに乗りながら、アリツフォンをアリツチップに挿し込む。
[Vehicle In]
[Mechanical In]
電子音声の後に待機音が鳴る。
「「武着装!」」
掛け声を言って、二人はCERTIFICATIONの文字をタップした。
[CERTIFICATION. In Charge of Vehicles.]
[CERTIFICATION. In Charge of Mechanical.]
再び電子音声が聞こえた瞬間、二人の周りに光が纏ってアリツビークラー、メカニッカーに武着装した。
二人はそのままバイクを発信させて、大岩のカテラスに突撃して原っぱまで吹っ飛ばした。
「誰だ!このガンセキカテラス様を吹っ飛ばした奴は!」
「俺達だ!」
二人はロックカテラスの前に堂々と姿を現す。
「何で転がって追いかけ回してたんですか!」
「決まってるだろ!俺様から必死に逃げようとしている姿を楽しむためだよ!ハーッハー!」
「やっぱカテラスは悪人揃いだな。倒しても倒しても出て来る...ゴミのようにな!」
「何だと!だったらお前らを踏み潰してゴミにしてやる!」
ガンセキカテラスは二人に向かって転がって突撃してきた。アリツソードを出そうとしたが、由人のアリツフォンが壊れて共有機能が失われている事を忘れていたため、二人はそのまま衝突してしまった。
「どうだ!次は本当に踏み潰してやるぞ!」
「よし!新機能を使ってみましょうか!愛剥路さん!」
「はい!」
雷男はマーシャルアーツのチップ、愛剥路はウェポンのチップをアリツフォンに挿し込む。
[Weapon In]
[Martial Arts In]
電子音声の後に待機音が鳴る。
「「「カテゴリーチェンジ!」」
掛け声を言って、二人はCERTIFICATIONの文字をタップした。
[CERTIFICATION. In Charge of Weapons.]
[CERTIFICATION. In Charge of Martial Arts.]
再び電子音声が聞こえた瞬間、雷男のマークはシャーマのマーク、愛剥路のマークはウエッパーのマークになり、それぞれアリツシャーマ、アリツウエッパーにチェンジした。
ガンセキカテラスは再び二人に転がって攻撃してくる。愛剥路はアリツボムを出現させてガンセキカテラス投げた。命中したガンセキカテラスに爆発して、ガンセキカテラスは体が欠けてしまった。
「お、俺様の体がボロボロになっちまった!」
雷男はアリツハンドを発動して、アリツフォンにアリツブレイクチップを挿し込む。
[Break Standby]
画面にブレイクの文字が表示され、タップする。
[Martial Arts Break]
アリツハンドのブレイクが発動して、雷男はガンセキカテラスの顔の真ん中に渾身の一撃をお見舞いした。
「オリャーー!」
「ワレーーー!?」
必殺を受けたガンセキカテラスはヒビが入って砕けて人間に戻り、その場に倒れ込んだ。
二人はいつも通りに対処して、屋敷に戻っていった。
屋敷に戻って、由人の部屋を覗くと由人と拳也の二人が寝ている姿を目撃した。それを見た二人はその場を後にしたのだった。
防子が目を覚ますと、両手両足が縄で縛れて身動きが取れなくされていた。
「やっとお目覚めかしら?防子」
「や、柔子ちゃん...何これは?それにここはどこ?」
「何って身動きを取れなくするためよ。それにここはあなたの物から出したアタシ達の愛の巣よ。」
柔子は防子に防子のアリツフォンを見せた。
「わ、私のアリツフォン!返して!」
「防子の物は私が預かるわ。抵抗されたら困るものね。」
「屋敷は?何で屋敷に戻らないの?」
「何でって、あそこには邪魔者が大勢いるからよ!」
柔子は感情を昂らせながら答える。
「いつもいつもアタシの邪魔をしてくる奴らいる!そんな奴らがいたら防子を好きに出来ないじゃない!だから屋敷にはもう、戻らない」
「そんな事言ったって、由ちゃんが連れ戻し来るから...」
「由人さん...いや、あんなお飾り主人はアタシがぶちのめした。」
「えっ!?」
「アリツフォンも破壊したから、しばらくアタシの元には来ないわ。もう一人なんか壊したような気がするけど」
「そ、そんな...」
「さぁ、防子...これであなたはアタシのモノよ」
柔子の狂気の執着に初めて気づいた防子は恐怖に怯えた表情を見せていた。
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