#21「蔵馬家訪問」A
季節は秋を迎えようとしていた。紅葉が風で舞い秋を感じさせる。
そんな季節移りに分部博士がアリツフォン所持者を全員、自分の部屋に集めていた。
アリツフォンのアップデートが完了したとの事なので、預かっていた雷男と愛剥路のアリツフォンが二人の手元に戻ってくる。ただし拳也のアリツフォンはまだ修理が完了していない。
アップデートの内容は強いカテラスも探知出来るようになった事だ。強いカテラスというのはルオマーの事だ。カテラスの長と名乗るだけあって、以前は探知出来なかったが、アップデートした事によって探知が可能になったのだ。
「拳也の言っていたそのルオマーとか言う奴もこれで見つけられるわ。今度会ったら、仇を討ってちょうだい!」
「仇って、母さん...」
「それにしても愛剥路ちゃん悪かったわね。今日はお休みなのにわざわざ来てもらっちゃって。」
「い、いえ!私も元々屋敷に来る予定だったので大丈夫です!」
愛剥路は今日は有給を取っていた。有給はあまり取らない方であるが、今日はある事をする為に取っていた。
「ところで母さん。僕のはいつ直るの?」
「まぁ、焦らない、焦らない。真っ二つに割れてるから結構時間がかかるのよ。まぁ、後もうちょっとかしらね。」
「わ、分かったよ。」
「それじゃあみんなは各自の仕事戻っていいわよ。」
拳也以外の四人は部屋を出て、とりあえず由人の部屋に入る事にした。
「なんか僕の部屋溜まり場みたいになってない?」
「いいんじゃねぇの?」
「まぁ、いいけどさ。」
「そういえば、前回のキモ可愛かった緑色のカテラスって結局何だったの?」
「えっ?…さあ?何だったんだろうね?」
「あの〜由君。ちょっといいですか?」
愛剥路が由人に尋ねる。
「実は私の両親が由君を家に招待したいと言ってまして、もし宜しければ今日私の家に来ませんか?」
由人は驚いた。防子の家意外には他人の家に行った事がない自分がまさか人様の家に招待されるなんて思ってもみなかったからだ。
本当にいいの?と聞くと嬉しそうに是非と愛剥路は言ってくれた。
由人は防子も誘ったが、今日は柔子と約束があるとの事で誘いを断った。
雷男は柔子の防子に対してのお熱に呆れながら、誘いに乗ろうとするが、由人が何かあった時の為に留守番しててくれと言い、何だよそれと言いながらもこれを承諾して留守番をする事に。
ガレージに行き、愛剥路は自分のバイクに由人を乗せて出発しようと思ったその時、誰かがこちらに向かってくる。
「私も拳也君と一緒にいいかしら?」
「路宇都さんから、家に招待されたので僕達も行きます!」
向かっていたのは拳也と路宇都だった。拳也はアリツバイクを出してバイクに跨り、路宇都を被って、自分の意思を路宇都に乗っ取らせた。
二台のバイクは蔵馬家に向かって出発した。バイクの疾走感が秋風を感じさせる。
由人は愛剥路のくびれた八頭身の体につかまり、拳也は体を乗ったられているが疾走感は感じられるだろう。
蔵馬家は御手洗邸と同じく万部町にあるのであった。しかし御手洗邸より町の入り口の方にあるため、一時間掛かる事はなく、ここから分部邸への距離はおおよそ四十分だ。
ちなみに愛剥路は今は屋敷に住んでいるので実家に帰るのは久方ぶりになる。
そして四十分後、蔵馬家に無事到着した。蔵馬家はバイクを販売しており、家の前にはバイクが並んでいる。
玄関前には竹刀と竹槍が立て掛けられている。どうも万部町はでは防犯として竹刀と竹槍を備えるルールがあるみたいだ。
バイクから降り、路宇都は自身を外し拳也に意思を返した。拳也は以前はよく訪れており懐かしさに浸っていた。
「よその家なんて、防子の家しか行った事ないからなんか緊張する...」
「そんな、恋人じゃないんだから緊張しなくていいわよ。」
「け、けっこ//変なこと言わないでよお姉ちゃん!」
「いやいや、愛剥路も結婚とか考えてもいいんじゃないかしら?」
「そ、それは今日は関係ないでしょ!」
「どうだか...」
愛剥路をを茶化した路宇都の茶番劇を終え、四人は早速玄関のインターホンを鳴らした。しかし反応がなく、しばらく経っても誰も出て来る気配がない。
「あれ?で、出てこない?」
「留守?愛剥路、日程間違えたりとかしてない?」
「そんな事は...」
すると一台のハーレーが家に停まる。乗っていた夫婦がハーレーから降りて家に向かって来る。
「おー!愛剥路!久しぶりだな!」
「お父さん!お母さん!どこ行ってたの!今日は家に由君を招待するって言ってたのに!」
「あまりにも帰ってこないからお父さんとツーリングに行ってたわ。ごめんなさいね。」
二人は蔵馬姉妹の両親だった。
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