#20「小大自慢会」A
防子は毎日、柔子が電話をしてきて話に付き合わされている。柔子が一方的に話し、防子はもっぱら聞き役だ。内容も中身がない話ばかり。
いくら大切に思っているとはいえ、毎日電話をかけてこられて一方的に話しをされてはうんざりするだろう。それを聞いた由人は心配した様子を見せたが、防子は疲れているからお話をしたいんだよ。と言った。
本人が苦に感じていないならいいかと思い、由人はこれ以上の心配は無用だと悟った。
今日も屋敷の手伝いをするために部屋を出て二階から降りると、見覚えのある黒服達の姿があった。
由人は黒服達の方に行くと、ある部屋の前で待機していた。その部屋は分部博士の部屋だった。嫌な予感がよぎって部屋に入ると、御手洗麗綺が博士に交渉している様子が見受けられた。
「あら、由人君。この子未央理ちゃんのお友達らしいじゃない。」
「そ、そうですね…」
「それで麗綺ちゃんだったかしら?私に何か用かしら?」
「はい!協力して欲しい事があるので、私の屋敷に来て下さい!」
麗綺は相変わらずのテンションの高さで彩恵花に屋敷に来てほしいとだけ言った。
何の協力なのかは経験した由人には予想は出来るが、目的を言わないので何だか詐欺みたいに聞こえる。
「私、修理とか色々やる事があるから、協力出来ないわ。ごめんなさい。」
「母さん、この人達は一体…」
大勢の黒服が気になって、部屋に拳也が入ってくる。
「拳也。この子未央理ちゃんの友達みたいで手伝って欲しいって言ってるの。手を貸してやってちょうだい。」
「はぁ...まぁいいけど。」
「ありがとうございます!では早速私の屋敷に来てください。協力してくれたら私の宝物を見せます!」
母の頼みで麗綺の協力を引き受けた拳也。由人は拳也が心配な事と宝物がどんな物なのか気になるので、一緒についていく事にした。
屋敷を出ると、これまた見覚えのあるリムジンが停まっていた。僕達を乗せて出発しようとすると、一人の使用人が近づいてきた。
「由人さん...何してるんッスか?」
やって来たのは浮山或輝だった。
「あら、貴方も協力して下さいね!」
「えっ?うわ!?」
或輝は黒服達に車に乗せられてそのまま出発してしまった。
由人が二人に麗綺を御手洗商事の社長令嬢だと(変な所は除いて)説明すると驚愕した。日頃から馴染みのある物を作っている会社の関係者、しかも令嬢でそれもかなりの美人なのだから驚きを隠せないだろう。
御手洗邸は別当町とは反対側にある能野町の隣町である万部町にある。
前は無理矢理連れられて外を眺める余裕がなかったが、名前からBambooを連想させるからか町には竹が多く見られた。
「掃除道具の会社の社長令嬢さんが僕達に何をして欲しいんでしょう?」
「それにしてもすごく美人ッスね!すごくいい匂いしたし、すごく清楚な人と見たッス!」
「...今の内だよ。そう思ってられるのも...」
出発してから一時間後、分部邸に到着した。
分部邸と同じく大きい門から車が入って、玄関前に全員を車から降ろす。門の前には噴水があり、これなら清潔で清楚な印象は付けられるかもしれない。
玄関前の壁には、防犯用の大量の竹刀や竹槍が立て掛けてある。竹が多くあるのは、さっきの風景で確認出来たが、防犯としては物騒なのではないかと疑問が残る。
そして玄関の扉を開けて中に入ると、これも前と同じように何人かの使用人が左右に一列ずつ並んでおり、麗綺に向かって、おかえりなさいませお嬢様!と一斉に声を発した。
この人たちもこんな令嬢のために大変だな...と由人が思っていると、麗綺は二人に本題を切り出していた。
「では協力して欲しい事なんですけど...」
「はい...」
「貴方達のウンコとオシッコ採らせてください!」
麗綺の依頼を聞くと、二人は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。こんな美女がウンコとか言い出したら目を丸くするのは当然だろう。
拳也は小声で由人に話しかけて来る。
(由人さん、この人は何をいってるんですか?)
(...こうゆう人なんだよ。)
見た目に騙されてはいけないというのをよく体現している。
「美女がウンコと言っている...イイ!」
或輝は逆に何だか興奮気味になっていた。それを見た二人は、意外と変態な所があるんだな...と心の中で思った。
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